2022.09.14
ミズベリングの夏、クラウドファンティングの夏
ミズベリングを各地域で進めるミズべリストのみなさん、いかがお過ごしでしょうか?
コロナ禍もあり、オリンピックフィーバーも終わり、あてにしていた外国人は来なかったけど、でも水辺にはたくさん人がきていて、いろいろとお感じになることもあろうかとおもいます。
それでも、思い返せば、2013年にミズベリングが始まるまえ、水辺を利用しようなんておもっても予算がない、行政の後押しもない、民間からの意思表明もないで苦労していたあのころ、それでも意欲だけはあって、水辺をどうにかしようと思っていたあの頃の社会情勢から比べれば、いまの状況比べ物にならないぐらいやりやすくなり、隔世の感があります。
いま、まさに「リスタート」を切り、来るべき未来に投資をしよう!なんて思っていらっしゃる皆さんにとって、耳の痛い話。資金調達の状況はいかがでしょうか?
水辺のクラウドファンディング
ミズベリングの特徴といえば、特段それらしい補助金がないこと。行政施策にありがちな、補助金ありきの地域活性化の施策ではないのです。
補助金があるからミズベリングをする、ということではなく各地域や各当事者が必要だからミズベリングをするという、当事者の「やる気」こそが力の源です。
各地域で、やる気をみせている当事者たちの出現をわたしたちはこれまでもたくさん見てまいりました。
とはいえ、「やる気」だけではことを起こすことは難しい。
やる気があるひとが、お金もすべて出すのか?と問われれば、それはいくらなんでも、と思うところもあります。
やる気は応援者を生み出すこともあります。応援にはさまざまな形があります。労務としての応援などは、ボランティアというかたちで提供されてきました。
寄付、というかたちもありますし、トラストというかたちもありました。
しかし、いま俄然注目なのは、マイクロファンディング、なかでも「クラウドファンディング」です。
矢野経済研究所によると、クラウドファンディングの国内市場は、新規プロジェクト支援額ベースで2,000億円が目のまえまできており、社会に定着した感もあります。
水辺においても存在感は大きく、さまざまなクラウドファンディングが過去にありました。社会実験として桟橋を仮設置する費用を集めるクラウドファンディングや、水辺のクラフトビールをつくるためのクラウドファンディングなどがありました。
クラウドファンディングは寄付型、購入型、貸付型、事業投資型、不動産型などがあります。なかでも水辺でよくみるのは、寄付型、購入型です。
それぞれの資金調達目的に合わせてさまざまなクラウドファンディングが使えるのが今日における資金調達の特徴で、さまざまな悩みもあろうかとおもいます。
どれを選べばいいのか、どのように発信すればいいのか。
2022年9月12日現在、水辺にまつわる注目のクラウドファンディング案件が3つあるのでご紹介いたします。
二子玉川の水辺の未来をつくろう!Mizube Fun Base Week2022
二子玉川エリアマネジメントによる水辺利活用はこれまでも「未来に向かってボールを投げ続けろ!~二子玉川の現場から~」や、「サード・プレイスのつくり方 ”TOKYO ART FLOW 00″二子玉川 ミズベリング・スペシャルインタビュー」 などいくつかの取材記事がありますが、水辺空間活用において、切実なる課題がありました。
水辺利用において非常によくわかる悩みです。それを彼ら彼女たちはこのような解決方法を模索することになったそうです。
「動かせる拠点」として「トレーラーボックス」を設置する実験イベントを企画
イベント期間は2022年10月3日(月)〜10月9日(日)。そのあいだ、このトレーラーハウスの仮設の拠点で案内所やギャラリー・ミニショップ・掲示板など、楽しい交流が生まれます。また、昨年も好評だった「アウトドアオフィス体験」「アウトドアリラックスミーティング」「国道246号橋脚をめぐるスタディツアー」などのお楽しみ企画などが開催されるようです。
・資⾦調達⽅法:クラウドファンディング CAMPFIRE
・⽬標設定⾦額:100万円
・資⾦の使い道: トレーラーボックスレンタル費⽤、⾃動⾞保険、リターン品調達費⽤、MFBWイベント実施費⽤(広報、アルバイト⼈件費、カフェ等運営費など)
・募集期間 :2022年9⽉7⽇(水) 〜9⽉30⽇(⾦)
・リターンプラン(ご支援のお礼):
シンプル応援:お礼メール
Mizube Fun Baseフレンズ!:ホームページにお名前掲載
Mizube Fun Base掲示板(法人・団体用):現地掲示板PRスペース 利用
Mizube Fun Baseでくつろぎの1杯:現地を体感、ドリンクチケット1枚+オリジナルステッカー1枚
国道246号橋脚をめぐるスタディツアー:水辺まちづくりのガイドと、チェアでくつろぎドリンク1杯
Mizube Fun Base Week オリジナルレジャークッション
Mizube Fun Base Week オリジナルTシャツ:新二子橋のアート壁画をモチーフにしたイベント限定Tシャツ
焚火ラウンジでまったり体験:現地を体感、焚火台利用(4名分/2h)とドリンクチケット4枚付き
二子玉川ご当地珈琲:NIKOTAMA BLENDドリップバッグ2袋+オリジナルステッカー1枚
など、実際にイベント期間中の二子玉川の水辺を体感いただけるプランのほか、ご来場が難しい方向けの二子玉川オリジナルグッズのご提供など、1,500円~20,000円の価格帯でご用意しました!ぜひ「リターンプラン」ページをご覧ください。ページはこちら
このクラウドファンディングが実現されれば、彼ら、彼女らが実現したいと思う水辺の「拠点」への第一歩となることでしょう。
https://camp-fire.jp/projects/view/617827
舞台は隅田川全長23.5km!誰も見た事のない景色を一緒に作りたい
主催は、NPO法人トッピングイースト。隅田川を舞台に見立てた参加型の音楽とアートのフェスティバルを2021年に開催した団体です。
隅田川にふれるなか、このように思うように至ったということです。
さまざまな活動を進めるなかで、隅田川流域に暮らす人々の多様な文化に触れ、いつしか隅田川という存在そのものにも惹かれていきました。その隅田川流域を一つの文化圏と捉え、様々なプロジェクトを通じて賑わいづくりをおこなっています。
おことわりしておきますが、彼らは音楽家やアーティストなどで形成された団体です。河川の専門家でも愛護会でもありません。表現する場としての隅田川に向き合った結果、流域がひとつの文化圏、という考えに至るようになったのは彼らにとっては自然なことだったのかもしれませんが、なんとも魅力的なはなしです。
コロナ禍の開催だったフェスティバルではやり切れなかった企画にチャレンジしたいということで開催されることになった、今回のイベントは、やはり大都市・東京の東側を南北にゆったりと流れ、長きに渡って豊かな歴史を育んできた隅田川が舞台です。
隅田川流域のそこかしこで、音楽やアートを介して老若男女も国籍も問わず、さまざまな人々が混ざり合う姿が見たい!そんな水辺の景色を作りたい!
その表現が、こちらのアーティストによる練り歩きです。
「日本を江戸にせよ!」を合言葉に、野良着を身にまとい、和太鼓、尺八、三味線、鉦鼓などの和楽器を演奏する切腹ピストルズが、隅田川全長23.5kmを2日間かけて練り歩きます。
なぜ、クラウドファンディングなのか
トッピングイーストさんは、一昨年の隅田川怒涛ではオリンピックパラリンピックの文化プログラムの位置付けで行政の支援があって実現したそうです。しかし、今回は自主企画です。
なかなか物事を進めにくいコロナ禍にあって、ここ数年、我々が耕すように広げてきた地域の仲間とのネットワークも、地域行政との関係性も、動きを一旦止めてしまうといつ再始動できるかわかりません。祭りは状況が整ってからやるものではなく、願いがあるから始まるものです。
徐々に地域行事が再開してきたとはいえ、特にお祭りごとはご年配の方の運営で行われるものも多く、引き続き厳しい状況にあると聞きます。そんな中で、我々はこのダイナミックな新たな形の祭りを行うことで、誰もがふと芸術体験に出くわしてしまう機会を、久しく静まり返ってしまっていたこの地に再び作りたいと考えています。
困難な状況を乗り越えるために、多くの人々の支援が必要だということで、クラウドファンディングに取り組まれたようです。
音楽を通じて、東京の水辺に真新しい景色をつくるという彼らの新しい景色を見てみたい気がします。
|「隅田川道中」開催概要
開催日時:2022年10月29日(土)、10月30日(日)
会場:隅田川全長23.5km
主催:NPO法人トッピングイースト
後援(予定):関東地方整備局荒川下流河川事務所、東京都建設局河川部、中央区、台東区、墨田区、江東区、北区、足立区、公益財団法人東京都公園協会、一般社団法人東京北区観光協会
認定:すみゆめネットワーク企画
助成:すみだ文化芸術活動助成
NPO法人トッピングイーストは、この度、自主企画として隅田川全域23.5kmを舞台にした祭典「隅田川道中」(2022年10月29日、30日)を開催します。ご支援いただいた資金は、隅田川流域の文化・芸術活動の推進を目指したこの取り組みを成功させるために、主に、地域周知や当日を盛り上げるためのプログラム制作資金として使わせていただきます。具体的には、アーティスト出演料、遊覧船の賃貸料、地域周知のためのポスターやチラシ制作費、リターン制作費に充当します。
リスク&チャレンジ
プロジェクトに必要な金額と目標金額の差額について
必要金額と目標金額の差額には自己資金と助成金、協賛金で対応いたします。
新潟市で最高のリバービューに酔いしれる。水上カフェ&バーをOPEN
2023年8月、“水の都” 新潟市を象徴する信濃川と萬代橋近くに、台船を浮かべ、屋内外60席前後を備えた水上のカフェ&バーを開業します。
台船は約200㎡のスペースを確保、1日1組限定のユニークな水上宿泊設備も設けます。
このような水の上に浮かぶカフェ&バーは、ニューヨーク、ブルックリンの The River Cafe が有名であり、欧米諸国ではよく見かけますが、日本ではほとんど例を見ません。
このプロジェクトが実現すれば、新潟市を代表する絶景スポットが誕生することになり、同時に新潟市の水辺空間を飛躍的に魅力アップさせていくことができます。
しかし、この構想を実現するためには総額6,000万円の資金が必要です。そこでこの度、クラウドファンディングを通じて、実現に向けた資金を調達することを計画いたしました。皆さまのご支援・応援をお願いいたします。
新潟市の中心部を流れる信濃川。信濃川とともに歩んできた都市の歴史に、あたらしい一ページが刻まれます。
そのスタートは厳しい経営環境に置かれた水上バス事業の事業再構築がきっかけになっています。
2004年10月の中越地震、2007年7月の中越沖地震、2011年3月の東日本大震災、同年7月の新潟福島豪雨と繰り返される大規模な自然災害のたびに大量の予約キャンセル
2020年2月から始まったCOVID-19の影響は、それらとは比較にならないほど凄まじいもので、売上が蒸発する事態となりました。2年半経った今も定期航路の利用者は以前の1/3程度にとどまっており、会社売上はコロナ以前の半分にも満たない状況
この状況を打開するべく、水上の事業の環境構築に一日の長がある水上バスの事業者がはじめたのがこちらのクラウドファンディングです。
新潟市の水辺空間の魅力アップへ
新潟市ではこれまでもさまざまな水辺の魅力創造の取り組みが行われてきました。「オープンスペースビジネス最前線「ミズベリング信濃川やすらぎ堤」の3年間の実績」 や「信濃川を愛しすぎてしまって、新潟を水辺のまちに変えちゃった激愛さん!」などでもご紹介しましたが、萬代橋周辺の信濃川沿川は新潟の魅力を発信し続ける顔になっています。
そんな場所にも課題がありました。
通年で営業する飲食店がなく、活発に経済活動が行われているとは言えず、魅力的な空間を有効活用できていないのが現状です。
冬の気候が厳しい新潟ならではの悩みかもしれません。
ただ、この水上施設ができれば、
萬代橋周辺で通年営業をする唯一の存在として、1年間を通じて周辺エリアの賑わいの創出に貢献できると考えています。
これまでの新潟市における水辺の取り組みが、新しいステージに立つことが想像されます。
クラウドファンディングの理由
資金調達の半分は、経済産業省が示した「事業再構築指針」に基づく、令和2年度第三次補正 事業再構築補助金 第5回 (公募期間令和4年1月20日~3月24日) を活用するそうです。残り半分をクラウドファンディングで調達したいそうです。
少子高齢化、人口減少、経済衰退と新潟市を取り巻く現実の事業環境は厳しいものがありますが、閉塞感に囚われてばかりいては、何も生まれません。
「みんなでこの素敵な場所を作り上げたい」
「この世界でも稀な水上カフェ&バーや水上ホテルは自分たちが創った!」
という気持ちを持っていただきながら、皆様とともに、場を盛り上げる大きなムーブメントを作り上げたい
郷土をおもうさまざまなひとたちに届き、共に水辺のあたらしい文化をつくった、といえるような関係性を多くの人たちと構築する手段として、クラウドファインディングは利用さるようです。
プロジェクト概要と集めた資金の使途
長さ20m、幅9.2mの台船を新規建造し、台船上に客席、厨房を備えた建屋を築造し、信濃川右岸の岸壁に係留する。台船上に60席内外のカフェと一日一組の宿泊設備を設ける。
リスク&チャレンジ
- プロジェクトを実施する上で必要になる資格や許認可について
- プロジェクト実施のためには、新潟市から飲食店営業許可証の取得が必要となりますが、設備が完成次第申請の上、2023年8月8日のグランドオープンまでには取得致します。宿泊業に就きましても同様です。
- リターンを実施する上で必要になる資格や許認可について
- 飲食店営業許可証、簡易宿泊業許可証
- プロジェクトに必要な金額と目標金額の差額について
- 3000万円の事業再構築補助金と融資等による補填
クラウドファンディングと当事者のマインド
クラウドファンディングは、お金を出す側にお願いしている面もあります。
しかしながら、プロジェクトを遂行する当事者が、クラウドファンディングを始めるには、強い気持ちが必要な気がします。
クラウドファンディングをするからには、多くの人の期待を背負って、必ず成功しなければなならないという責任感。
プロジェクトの良し悪しだけではなく、それを遂行する当事者の覚悟が晒されるという不安。
そのような心理的ハードルを超えてもなお、「水辺をよくしたい」「自分がそれをやるんだ」という気持ちの現れがそれぞれのプロジェクトにはある気がします。
水辺とクラウドファンディング
一方で、ミズベリングがスタートして8年超、水辺がクラウドファンディングを引き受けられるだけの状況になった、ということも言えます。
もし水辺の規制緩和が達成困難であれば、クラウドファンディングがそもそも成立しません。
民間活用の道筋が確実のものになったからこそ、クラウドファンディングがうまれ、応援する人たちに訴えかけることができるのです。
もしみなさんにその心の叫び声が届いたなら、クラウドファンディングの支援者になってみるのはいかがでしょうか?
この記事を書いた人
ミズベリングプロジェクトディレクター/(株)水辺総研代表取締役/舟運活性化コンソーシアムTOKYO2021事務局長/水辺荘共同発起人/建築設計事務所RaasDESIGN主宰
建築家。一級建築士。ミズベリングプロジェクトのディレクターを務めるほか、全国の水辺の魅力を創出する活動を行い、和歌山市、墨田区、鉄道事業者の開発案件の水辺、エリアマネジメント組織などの水辺利活用のコンサルテーションなどを行う。横浜の水辺を使いこなすための会員組織、「水辺荘」の共同設立者。東京建築士会これからの建築士賞受賞(2017)、まちなか広場賞奨励賞(2017)グッドデザイン賞金賞(ミズベリング、2018)