2023.05.29

公園のように水辺を楽しもう。妄想ワークショップから生まれた民間主導の公共利活用実証実験「星川に行こうよプロジェクト」

駅徒歩5分にある熊谷の水辺

埼玉県熊谷の中心市街地に流れる星川。かつて戦後は市民の生活の一部として使われていた星川だが、時代の流れと共に近隣のお店が減少し日常的に使われる水辺ではなくなってきている。
そんな中、「熊谷・街・妄想ワークショップ実行委員会」という民間主導のチームによって、星川の環境向上を目的として、人と車に優しく快適に歩くことができる方法を検討するために行う実証実験が始まっている。今回は実行委員の八木さんたちにまちを案内していただいた。

熊谷駅から歩いて5分程で星川に出会う。市内の中心ということもあり、川沿いには飲食店や商店なども多くあり、繁華街の雰囲気が伺える。
近年は、後継者不足や高齢化が進み店舗が減りまちの空洞化が進んでいるようだ。

日常的に水辺を楽しむ「星川行こうよプロジェクト」

星川通り(通称:星川シンボルロード)上流の方に進むと「熊谷・街・妄想ワークショップ実行委員会」による実験会場に着く。親水広場を中心に地域住民と一緒に整備した植栽やこどもが遊べる仕掛け、手作りの井戸、ゆっくり休憩できる家具が設置されている。
ワークショップでは終わらせず、星川を日常的に楽しもうと始まった「星川行こうよプロジェクト」は今年度で3回目の実施となっている。

手づくりの水汲み取り場

昨年11月からはじまったこの社会実験は年度末でいったん一区切りの予定だ。

生活の一部だった星川

もともと星川はまちの特徴的な場所として生活のインフラや水遊び、将棋を行うなど人々に親しまれてきた。戦後は都市公園として整備する案もあったが、現在は沿道をレンガ敷の美しい街路へと景観が整備されている。
しかし、綺麗に整備はされているものの人の滞留や水辺の活用が少ないのが課題だ。

昭和56年の星川での鯉放流。 参照:https://note.com/kumagaya_ws1/n/n22ef553b8078

妄想を形へ、自分のまちは自分の手で

そんな中で、もっと市民にまちを自分ごとにしてもらう、日常的に使われる場所になったらいいなという想いで、2020年に地元の建築家有志による「熊谷・街・妄想ワークショップ」が開催された。
定員15人に対して30名以上の応募があり、反響が大きかったことが伺える。まちが良くなっていくことへの期待が高まっていた。
「まちをつくるのだ、まちを変えるんだみたいな感じの人ってあんまりいなくて、まちと関わりたい。みんなで楽しくワイワイ集まって話をしたいという方が多かった感じがします。全4回のほかに、その回と回の間にも集まってアイディアを練っていきました。」

まち歩きから始まり、妄想を膨らませ、妄想を実現へとどうしたらまちが良くなるか濃いワークショップが展開されていった。
結果、2020年の初年度では空き家・水路・ストリートチームが生まれて古民家をリノベーションしたブックアパートメントや商店街の置き傘を七夕短冊に見立てるイベントへとつながっている。

2021年度にも継続して「熊谷・街・妄想ワークショップ」が開催され、星川を中心にワークショップが展開された。星川の親水広場や隣接する民地をエリアとして、滞留を促すためにこども向けの遊具空間や日常的に滞留しやすい仕掛けを行った。
最終的にこの実証実験は「星川行こうよプロジェクト」として開催され、
とても反響が大きく今年の開催へと結びついている。

2021年のワークショップの様子

八木さんが星川と関わるようになったのは、4年ほど前にそれまで住んでいた川崎から、建築設計事務所を営む夫の地元熊谷に移住し、まちに開いたお店を始めたのがきっかけだ。
「もともとまちづくりというか地域の活性化のことはしたいと思っていて、理解ある大家さんと出会いお店を始めることができて、同じようにシェアカフェを運営する建築家ユニットのエイエイオーとつながっていった。」
まちの建築家が連携していったことで、アイディアがワークショップで終わらず社会実験へと着実に進んでいたのだろう。

実行委員の八木さん

まちの愛着を育むために、妄想は続く

ワークショップで取り組んできた実証実験を、今後社会実装していくために市の都市計画との連携や継続するための資金面などが課題だ。

「プロジェクトを通してまちへの愛着が育まれ、熊谷がいいなと思う人が増えていってほしいですね。」

今後は片側の車道を止めて歩行者天国などを実践する構想が膨らんでいるようで、これからも星川の活動が楽しみだ。

星川夜市の様子

この記事を書いた人

水辺コミュニケーター

細田侑

1991年東京都墨田区出身、傘職人の孫。幼少期の経験から自分の居場所と役割を模索、途上国支援の道を目指すが高校での島留学や東北での復興支援をきっかけに地域活性やまちづくりに興味を持ち、大学ではコミュニティマネジメントを専攻。現在は、地元でヤッチャバ(都市型マルシェ)の運営や離島の活性化、水辺のまちづくりなど場づくりを繰り返している。水辺は江東区のNPOの活動に参加したのをきっかけに、その魅力に惹かれ水辺が好きになりそこに関わる人と一緒に活動することが楽しい。

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