2022.03.28

ミズベリング的流域治水ソーシャルデザイン宣言

“水辺に親しみ使いこなしたいユーザたちの心に火を付け、日本各地の水辺に変化をもたらすきっかけをつくった”

これは、ミズベリングプロジェクトが 2018 年グッドデザイン金賞を受賞したときの審査員評に記されていた言葉です。

ミズベリングでは、楽しさ、そしてその根源にある、人の能動性を大事にしてきました。そのような手法で、ミズベリングが河川環境や街の未来を盛り上げてきたことは、多様な主体の参画が求められる流域治水においても役に立つはず、と考えます。

ミズベリング事務局は、「ミズベリング的流域治水ソーシャルデザイン研究会」を第一回(2021年6月30日)、第二回(2022年3月10日)と開催し,呼びかけに応じていただいた多様な肩書の研究会委員のみなさんとオンラインで集まって対話を進めてきました。

一見深刻に思えるテーマでも自由で創造的な対話そのものの楽しさから研究会は盛り上がりました。ひとりではおもいもつかないような気づきがたくさん得られる機会となり、対話の場の有効性を実証できました。対話から得られたアイデアを実行し、活動を積み重ねが、最終的なアウトプット=社会的インパクトである「レジリエントな国土形成」の達成がイメージできました。絵に書いた餅にしないようにマネジメントして実践していくことが期待されます。

 

企画委員のみなさん
研究会委員のみなさん

参加者が多様だったので、分野を跨ぐ流域治水のあり方を議論することができました。さらに多様な分野の参画があれば、今回は触れることが少なかったテーマ、例えば土や森、資源のようなテーマをロジックモデルに加えることもできるはずです。

また,日本全国各地域ですでに行われている流域治水の取り組みが十分には共有されていないこともわかりました。今後は各地域の現場で起こる小さな変化に目を向け、そこから得られる知見を共有、評価することが必要となることでしょう。

さらに,ミズベリング事務局でも実践事例として,ディレクターの滝澤が地域で流域治水に関する小さな取り組みを始めました.「まずやってみる」のミズベリング的実践の精神から得られた学びは非常に大きいものでした。地域内でどのような人々を巻き込んで、どのような楽しみを見出し、活動を起こし続けていくかは、ミズベリングだけではなく流域治水にとっても大事なポイントであることがわかりました。

そして,研究会での対話の中から、流域治水を多様な主体で進め、かつ成果が得られるものとするために必要な考え方を宣言としてまとめました。

それがこちら!!

ミズベリング的流域治水ソーシャルデザイン宣言

1
流域治水は多様な主体が参加することが求められる取り組みであり、これまでの行政施策の延長ではなく、あらたな主体間連携の取り組みとして捉えなおされなければならない。
2
流域治水は深刻で難しい顔をして取り組むものではなく、多様な主体が連携して未来をつくる取り組みとして「共感」を生み続けなければならない。 流域を歩き、現場を通して地形や流域から得られる気づきや、現実を拡張させる AR などによる DX、古地図や語り部などの、多様な体験情報を使い、視点を変えることで得られる「気づき」を共有し、広く深く知る機会を作り続けることで、流域治水は段階的に達成されるものである。流域治水は、一方通行な知識の提供ではなく、インタラクティブな知である。
3
流域治水においては、さまざまな手法を生かして、人の想像力の限界を超えていくことが必要である。 豊かな想像力を通して、他者に対する理解や思いやりが進み、利他の価値観を持つことで流域治水 は推進される。 流域治水の取り組みに参画する者が、身心の喜びや思いやり、共感などを得られることにより、参画する者のより良い状態「ウェルビーイング (well being)」を実現することができることも大切である。
4
流域治水に取り組むことで単に水防災上の安全性が高まるだけではなく、地域のありかたを見直す機会になり、地域がよくなるきっかけになる。そのような機会に参画することで個人の社会参加や自己実現への欲求も満たされる。
5
流域治水において、各主体が利他だけでなく、功利的に動くことを前提とし、インセンティブをどのようにつくり、どのようにステークホルダーの動機付けをすることや、定量的な評価手法を持つことは、社会的生産性を高めていく上で重要である。
6
流域治水は、達成されるべき将来のアウトカムを多様な主体と共有しながら進める「社会的インパクト」の取り組みである。ビジョンや計画をつくって終わりではなく、進捗の共有と軌道修正でマネジメントすることが必要である。
7
流域治水は、各地域や流域ごと、あるいはテーマごとに個別解がある。最終的な「社会的インパクト」を共有しつつ、環境の条件や、関わる人の条件などの地域特性で流域治水の取り組みはまったく変わるものである。よって各地域や流域ごとに最適解を見つける作業が重要である。
8
上下流など流域の多様なステークホルダー間の恵みと資源、リスクなどの「わかちあい」により、自律分散しながらも全体最適を図ることを目指すことが大切である。
9
流域治水の取り組みは分かりやすく伝わりやすいものでなければならない。子供にも伝わるような分かりやすいキーワードがうまれることが期待される。流域治水という課題をテクノロジーだけでなくアートや創造性を通して文化やライフスタイルへの発展させることが大事である。
10
流域治水を推進するためには、自由で創造的なコミュニケーションを図ることができる「場」を形成する必要がある。現場の感覚を共有しながら「レジリエントな国土」とはどういうものなのかをみんなで考えることができる。

パンフレットを作成しました

2回の研究会開催を経て、事務局では、” 流域治水ミズベリング的「流域治水」ソーシャルデザイン” パンフレットを作成をしました。
前述の「ミズベリング的流域治水ソーシャルデザイン宣言」の詳細についてもこちらに掲載があります。

流域治水ミズベリング的「流域治水」ソーシャルデザインパンフレット
※リンク先からパンフレットのダウンロードが可能です。

このような考え方を実行し、活動を積み重ねることが、最終的なアウトプット=社会的インパクトである「レジリエントな国土形成」の達成につながると考えます。
絵に書いた餅にしないようにマネジメントして実践していくことが期待されます。

流域治水においてもこのようなソーシャルデザインのマネジメントが必要であると感じる方が少しでも増えれば幸いです。

この記事を書いた人

ミズベリング

ミズベリングとは、「水辺+リング」の造語で、 水辺好きの輪を広げていこう!という意味。 四季。界隈。下町。祭り。クリエイティブ…。 あらためて日本のコミュニティの誇りを水辺から見直すことで、 モチベーション、イノベーション、リノベーションの 機運を高めていく運動体になれば、と思います。

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