2021.10.06

広瀬川河畔でストリートファニチャーエキシビションが行われたので行ってみた

群馬県前橋市。中心市街地を活性化させようと、アーバンデザインガイドラインが策定されて、行政だけではなく民間の投資がガイドラインによって調和しながら活発におこなわれています。令和2年度の先進的まちづくり大賞を受賞していて、注目を集めているまちでもあります。
そんな前橋の中心市街地を流れる広瀬川でストリートファニチャーの展覧会が行われるということで行ってみました。

最近前橋では、とある前橋出身起業家のご尽力もあってあらたな物件開業が目白押し。当日もランチは行列ができていました。

前橋に最近できたブルーボトルコーヒーは、藤本壮介氏が設計した話題の白井屋ホテルのリノベーション物件に入居。

前橋のアーケードでは当日ドローンレースが行われていました。

どんな場所か?

前橋市。群馬県の県庁所在地。利根川が流れ、生糸の生産と流通で栄華を誇ったこのまちの中心市街地は、いまは多くの地方都市と同じように空洞化からの復活を試み、そして例外的に成果を上げつつあります。

広瀬川は、そんな前橋の中心市街地を流れる川で利根川から取水され、その豊かな水で産業や農業を支えてきたのみならず、中心市街地に癒しとうるおいをもたらしてきました。前橋の人々にとっての心の川でもあります。

広瀬川

そんな広瀬川のさまざまな空地にさまざまなストリートファニチャーが置かれたのです。

 

集成材の木端を磨き上げた作品。

屋外でのイベント利用を考えた屋台。制作費を仲間でカンパし、レンタルすることを目的として制作されたそうです。前橋の中心市街地の賑わいを支える重要な使命を担う屋台。

これもストリートファニチャーの作品。公道ではなく、駐車場内に設置されているのだが、インパクトは大きい。

廃材のリサイクル、アップサイクルをテーマにした作品も

広瀬川の手すりに最適化されたファニチャー

桐ダンスは現在リノベーション中の古い本屋さんの中で見つかったそうです。

パレットをリサイクルした作品。バーカウンターかと思いきや、下にのれんが設置されている。

裏から覗くと、ひとが落ち着けるスペースが。中に入ると、広瀬川を独り占めできる特別な空間。学生作品。手をかけるとぐらついていて構造的には不完全。

地面に刺すだけでちょうど缶ひとつぶんのカウンターになる作品

パレットと緩衝材を利用した作品。寝ているモデルは主催者代表の田中隆太さん。

主催はミズベリング前橋

この取り組みは、ミズベリング前橋が主催し開催しました。ミズベリング前橋はこれまでも広瀬川の欄干にバーカウンターを設置したり、「水辺で乾杯」で500名もの参加者を集めたり成果を出してきた団体です。実はこの団体のキーパーソンのひとりは前橋市役所の職員でもありますが、今回のストリートファニチャー展は私的な時間を費やして実現されたものなのです。

「実は、以前から前橋のクリエイティブな仲間たちがそれぞれまちの賑わいを創出するための家具作りをしていたのです。どうせなら、それらを一同にあつめて展覧会にしたい、それも広瀬川のパブリックスペースで」

前橋の中心市街地の活性化には、こういったクリエイティブな仲間たちが大きな役割を果たしています。前橋では考えるよりも先に体が動き、次々とあらたな魅力を作り出そうとする創造的な人々たちの活躍が、ミズベリング前橋の活動やアーバンデザインの活動によって顕在化しています。彼らの活動をつなぎ、束にすることでまちにインパクトを残そうとしているように見えました。

広瀬川の魅力アップは前出の前橋市アーバンデザインガイドラインでも謳われています。

アーバンデザインの取り組みの主体は、市役所ではなく民間活力の導入が想定されています。前橋市の職員自らいち市民として、市民による思いつきが実現しやすい環境をつくるために、今回のようなイベントのようなテストケースを実現させ、構想されている未来に近づけようとしている、というふうにも見えました。

このような取り組みが継続され、まちに活力が継続されていくことが期待されます。今後はストリートファニチャーをつくられているメーカーさんにもご参加いただけるようなストリートファニチャーの聖地になっていく未来を、主催者のかたと夢をかたった訪問でした。もしそのようなメーカーさんがいらっしゃったらミズベリング事務局までお問い合わせください。

 

 

 

今回のストリートファニチャーで私が印象的だと思ったものは、no.8建築学生の作品、「広瀬en川」でした。のれんをくぐるだけでまったく異なる空間にいることを感じます。なかから見る広瀬川の魅力と、極めてパーソナルな空間がバーカウンターの下に出現したことに驚きと空間的な面白さを感じました。惜しむべきは、構造的にぐらついていて、頼りなかったこと。ぜひ今後も精進されて、水辺空間での人の行動変容を促す魅力的な作品をつくっていただければと思います。
ミズベリング前橋の方を通じて、ミズベリングビジョンブック(2018)とステッカーをお送りいたします。
すべての作品はこちらのリンクから公式インスタグラムをご覧ください。

この記事を書いた人

ミズベリングプロジェクトディレクター/(株)水辺総研代表取締役/舟運活性化コンソーシアムTOKYO2021事務局長/水辺荘共同発起人/建築設計事務所RaasDESIGN主宰

岩本 唯史

建築家。一級建築士。ミズベリングプロジェクトのディレクターを務めるほか、全国の水辺の魅力を創出する活動を行い、和歌山市、墨田区、鉄道事業者の開発案件の水辺、エリアマネジメント組織などの水辺利活用のコンサルテーションなどを行う。横浜の水辺を使いこなすための会員組織、「水辺荘」の共同設立者。東京建築士会これからの建築士賞受賞(2017)、まちなか広場賞奨励賞(2017)グッドデザイン賞金賞(ミズベリング、2018)

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