2019.12.27

新町川の水辺で開催されている「藍LOVE新町川」

—徳島の水辺から阿波藍の魅力の再発見、再発信が始まっています—

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新町川の水辺で開催されている「藍LOVE新町川」

水辺のまちづくりの聖地、原点のひとつとして多くのミズベリストから慕われている場所が徳島市、新町川の水辺です。
この水辺、川を愛して長く活動を続けている「NPO法人新町川を守る会」では街の中心を囲うように流れる水路を周遊する「ひょうたん島クルーズ」をはじめとして色々な活動やイベントを実施していますが、このクルーズの発着場所である遊覧船乗り場で定期的に開かれる「藍LOVE新町川」が12月6日に行われると言うことで案内をいただき、久しぶりに新町川を訪れました。
※イベント概要はこちら(https://www.city.tokushima.tokushima.jp/smph/shisei/machi_keikaku/kawanoeki_kai/shinmachi.html)

お話しを伺った「NPO新町川を守る会」の新居さん

「阿波藍」は徳島県産の藍染め、または藍染めのもととなる染料「すくも」を指すそうです。
吉野川流域の土地が藍の生育地として適していたこと、そして毎年吉野川が氾濫するごとに客土されることで土が新しくなることで連作ができ、安定した藍の育成が可能になったそうです。そして収穫された藍や育成のための肥料を輸送するために舟運が活用できたこと(肥料は北前船で北海道から運ばれてきたそう)で、藍産業が徳島に定着することに影響したとのことです。
藍の栽培は室町時代ごろから始まったとされ、江戸時代の中頃には市場規模は全国に広がり、藍の買い付けに各地から商人が集まることで街中も賑わい、藍が徳島経済の基盤として発展してきたそうです。
また、阿波踊りも藍との関わりがあるそうで、もともと地元の盆踊りが起源言われており、そこに全国の藍商人が芸妓を連れて買い付けに訪れた際に、各地の踊りや舞、歌などの要素が取り入れられていき、今のかたちになっていったそうです。

市場の約9割を占めたとも言われた阿波藍は、明治時代に入るとドイツで作られた合成染料が確立され日本国内にその技術が普及するに伴い、藍の耕作面積が減少し、染め物工場や職人の数もへりはじめたそうです。

しかし近年、改めて徳島の伝統産業である阿波藍に注目していこうとする中、2016年4月に発表された2020年東京オリンピック・パラリンピックのエンブレムに使われた「ジャパンブルー」が藍色ということで注目され、その魅力の再発見し、国内外に広くPRしていこうという機運がさらに高まったそうです。
そして当時の徳島経済同友会会長、田村 耕一さんをはじめとした人たちが発起人となり、阿波藍の魅力に触れたり、新しい価値観を発見したりできるきっかけをつくっていきたい、という想いをNPOの代表中村 秀雄さんに持ちかけ、その想いに賛同したことから2017年の秋にスタートしたイベントが「藍LOVE新町川」です。

阿波藍を身につけて水辺に集う。

イベントは年3,4回程度で実施されるそうで、1500円の参加費で、軽食とドリンク(お酒)が飲み放題。飲み物食べ物の持ち込みはOKなのですが、藍染めのものを身につけて来ることが条件になっていて、受付でしっかりチェックされます。
多くの人はハンカチやストールなどの小物を身につけてこられるそうですが、中にはシャツやジャケット、作務衣などこだわりの一品をつけてこられる方もいらっしゃるとのことです。
(私もイベント参加のため、駅前のショッピングモール内にある地元の民芸品などを扱う和雑貨のお店に寄り道し、手頃な藍染製品を購入しました。)

駅前のショッピングモールにある和雑貨のお店で阿波藍のストールを購入

イベント会場は両国橋のたもと、新町川阿波製紙水際公園にあるひょうたん島クルーズの船着場として慣れ親しまれている浮き桟橋です。ここではバーベキューも楽しめて、普段から単なる船の乗り降りの場所としてだけではないみんなの居場所になっています。今は冬の寒さをしのげるようにテントで囲われ、お客さんを迎える準備が整っていました。

新町川にかかる両国橋のたもとにあるひょうたん島クルーズの船着場

テントで覆われた船着場には椅子テーブルが並べられ準備が整っていました

18時スタートということでしたが、30分ほど前から続々と参加者がやってきていて、気がつくと用意された席の半分近くが埋まり、乾杯の音頭があちこちから聞こえてくるほどの盛況ぶり。
イベントが始まるとまず水際公園のステージで四国大学の学生によるパフォーマンスが披露されました。最初は藍でつくった墨をつかった書道パフォーマンスが披露され、お客さんのリクエストに答えて文字や言葉を書くサービスも行われていました。その後に藍染めを使って制作した衣装をまとったチアダンサーたちによる創作ダンスパフォーマンスが披露され、参加客からたくさんの声援を受けていました。
後半はミュージシャンのライブ演奏が披露され、楽しげな雰囲気に心地よい音楽を添えてくれました。

書道文化学科の学生による書道パフォーマンス


藍染めの衣装を身につけて披露されたダンスパフォーマンス

ライブ演奏

船着場の上は開始早々からほぼ満席状態になっていて、あちこちから賑やかな様子が溢れ出ていたのにはビックリしました。お客さん一人ひとりが、この場所で飲み食いをする、宴会をすることに慣れた様子をみせており、集まって楽しむことが日常の一部というか、当たり前のことのように感じさせる雰囲気を出していることに改めて感心してしまいました。
2年前にはじめて新町川を訪問した時にも感じましたが、本当に水辺がみんなの拠り所として定着していて素晴らしいと思います。

用意された軽食はアジフライ、おでん、焼きそば




イベントの様子

気がつけば、テント内の座席から溢れたお客さんが当たり前のように係留しているボートの上にあがりお酒や食べ物をひろげ居場所をつくっていました。


寒空の中ボートの上で気持ちよく飲みを楽しむお客さん、お話に花が咲くお客さんたち

その中のひと組にお話しを伺ってみると、普段から桟橋には足を運ぶそうで、県外からこられる友人知人をつれてクルーズを楽しんでもらったり、本人もSUP経験もあって、川や水辺をして楽しんでいるそうで、寒さも気にせずくつろいでいる様子を見て本当に水辺がみんなの拠り所として定着していることが伝わってきました。
「こういう雰囲気が当たり前になっていて羨ましいですね」とお話しすると、もっと若い世代の人たちがこういう過ごし方を体験してほしい、と話してくれました。
まず自分たちが日ごろから居場所として利用したりするなど、もっと川や水辺に関わっていきます!と話してくれました。

「『水辺』という公共空間の情報的価値」

若い世代の方たちのこの川への親しみや思いを聞くことができましたが、これはやはり30年近く続く中村さんやNPOのこれまでの活動の成果なのだなと思います。その中村さんはこの日も準備に奔走し、イベント中もお客さんたちの席をまわり、一緒にお酒を楽しんでおられました。
中村さんの変わらない元気な様子とそこに集まってくる人たちの様子を見ていると、徳島の水辺の未来にワクワクさせてくれる希望を感じました。

お客さんたちと一緒に楽しい様子を見せてくれた中村さん(写真中央)

イベントは2時間ほどで終了しましたが、話し声が途切れることのない、最後にはライブ演奏に合わせてお客さんたちが踊り出すほどの一体感に包まれる楽しいひとときでした。
こういう気軽な空気感を大切にして、少しずつ阿波藍を身につける、意識することが定着して、この集まりをきっかけに、披露されるパフォーマンスや参加した人たちの賑やかなコミュニケーションの中から新しい魅力や解釈、使い方のアイデアや思いを出し合うことにつながれば、やがて大きな成果、インパクトを生み出すことができるだろうなと感じました。

阿波藍は今年の5月に日本遺産「藍のふるさと 阿波~日本中を染め上げた至高の青を訪ねて」として認定され、さらに機運が高まってくると思います。
(参照:https://www.pref.tokushima.lg.jp/kenseijoho/koho/kohoshi/5008062/5029482/
かつて徳島をめぐる水路、舟運により発展してきた阿波藍が、新しい時代を迎えた中で、再び徳島の水辺から阿波藍の新しい姿かたちが発信される日も遠くないのではないかと期待が膨らみます。

<参考>
徳島県観光情報サイト 阿波ナビ|ここが見どころ!徳島「阿波藍」
https://www.awanavi.jp/site/midokoro/aizome.html

徳島経済Vol.99 2016 Autumn|Report「徳島からジャパンブルーを世界へ〜藍産業の発展に向けて〜」
https://www.teri.or.jp/chousa_kenkyu_pdf/2016-98aisangyou.pdf

徳島経済Vol.99 2017 Autumn|対談「川を楽しむ徳島のライフスタイルを全国が注目!」
https://www.teri.or.jp/chousa_kenkyu_pdf/2017-99taidan.pdf
阿波踊り会館HP|阿波踊りの歴史
https://awaodori-kaikan.jp/history/

OUR徳島 令和元年7月 発行 No.391|特集1:「藍のふるさと阿波」日本遺産認定「至高の青」阿波藍の新たな歴史がはじまる。
https://www.pref.tokushima.lg.jp/kenseijoho/koho/kohoshi/5008062/5029482/

NPO新町川を守る会
http://www2.tcn.ne.jp/~nposhinmachigawa/index.html

令和元年度「かわまち大賞」が決定!
~四国管内で吉野川水系新町川のかわまちづくりの取組が『審査員特別賞』に選ばれました~

https://www.mlit.go.jp/report/press/mizukokudo04_hh_000111.html

この記事を書いた人

水辺の建築家

松本拓

住まいや店舗の設計、リノベーションに携わる中、大阪で水辺のまちづくりに出会って以降、水辺の魅力にソーシャルインパクトをもたらす可能性を見ている。水辺のまちづくり・居場所づくりとして、北浜テラスの立ち上げに関わり、川床のプロトタイプ設計や許認可協議、デザインディレクションに携ってきた。最近では和歌山や千歳、東京深川で川床などの工作物デザインや許認可協議の面から取り組みをサポートしてきている。

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