2021.03.05
公共越境力養成塾 KAWAREL MIZBERING CAMPUS キーワードBEST22
大好評のうちに終了した、公共越境力養成塾 KAWAREL MIZBERING CAMPUS。
こちらの養成塾は、ミズベリングが公共を変える学校を開講!と題し、今までミズベリングが培った「公共越境力」を未来のミズベリストと分かち合う養成塾として、2020年11月に開講しました。プレオープニングと全6回の講義・グループワークからなり、そのうち、講義のパートでは、「水辺のまちづくり」「水辺のつながり」「水辺とあんしん」の3つの視点で水辺を捉え、領域を超えた価値創造の手法を学びました。
ちなみに、各回の講義の様子は、MizberingのYouTubeチャンネルからご覧になれます。
・・・・が、あまりにも全て神回!だったので、今回は、ダイジェスト版として、キーワードと共に各回の講義を振り返っていきます。
各回の最後に講義動画のリンクをつけていますので、興味のある回はぜひご覧になってみてください。
DAY0 越えていけ!立場の壁!公共越境力とはなにか?
立場を超えて価値を創造することに向き合うとはどういうことなのか。さまざまな立場からそれぞれの経験に基づいてお話いただいた回。その心構え、社会へのインパクト、水辺の強みなどが話されました。
1.公共越境力は知識ではない。(岩本唯史)
岩本塾長は公共越境力という言葉に込めた思いについて、「知識をつけるだけなら、勉強すればよい。しかし、その勉強の仕方、学ぶ姿勢を身につけることについて、公共越境力養成塾では、チャレンジしていきたい。」と、オープンニングで語った。
2.勇気をもって飛び込んでいくことが新しい境地を切り開いていく。(波多野真樹)
「愛と勇気の」公共越境力養成塾、という名前がすごくいい、と語った波多野さん。「水辺に関わるプロジェクトを進めていく際、河川管理者・自治体などと連携して、進めることになるかと思う。そこで起こる新しい出会いに、勇気を持って飛び込むことで、新しい境地を切り開いていくのではないか、そしてこの講座を終えた際に受講生のみなさんは勇気を持って新しいプロジェクトを立ち上げて欲しい」と受講生へメッセージを送った。
3.まちのすべての人たちの背中を押し 、まちの補助線をつくること。(田中元子)
田中さんは、まちづくりにおいて、まちの全ての人に対して、ちょっとずつ背中を押せたり、ゆったりできる空間を作っていきたい、といいます。「真っ白なキャンバスはちょっと描きにくいけど、うっすら線があったら、描き始めやすい。そんな、人々の背中を押すような、動き出すキッカケを作る補助線のようなデザインを作っていきたい」と語った。
4. 肝心なのは、順調に行っていなくても、同じことを言い続けること。(太刀川英輔)
生存に役立つ情報を被災者に届けるwiki「OLIVE」のプロジェクトを進める中で、防災産業を東北に作りたいと思うようになった太刀川さん。しかし、なかなか順調にいかず、災害キット、という形になるまで2年近くかかった経験が。「順調にいかなくても、同じことを言い続けることで、形になり、だんだん「防災デザインってアリかも」という機運が高まっていった」と語った。
開催日:2020/10/22
<講師>
太刀川英輔(NOSIGNER代表/デザインストラテジスト/進化思考家 /慶應義塾大学特別招聘准教授)
田中元子(株式会社グランドレベル代表取締役/「喫茶ランドリー」企画運営)
波多野真樹(国土交通省水管理国土保全局河川環境課河川環境保全調整官)
岩本唯史(KAWAREL 塾長、ミズベリングディレクター)
DAY1 世界を変える小さな成功体験
小さな成功体験を積み重ねることの意義について盛り上がった回。公務員登壇者のみなさんは、ご自身の立場に向き合いつつ、個として地道に共感の輪をひろげる地道な活動から大きな成果をあげていました。
5.出会いたかったら主催する。 (今佐和子)
よく、まちのプレイヤーがいない・出会えない、という問題について言われるが、それは自然に出会えるわけではない。「主催&発信を続けて、定期的に継続される中で、ネットワーク化されだんだん大きな動きになる中で、たま~に同じ志向の人が現れてくる」と今さんは語った。
6.同じ方向を向いてるって気づいた時にドライブがかかる。 (浅見知秀)
ご自身で水辺でイベントをする際、水辺の各ステークホルダーと対話した経験から。一見反対のことを言っているように見えるが、話してみると、「川が好き・良さを知ってもらいたい」と、それぞれ思っていることは一緒ということがわかった、と語る浅見さん。「同じ方向を向いてるって気づいた時にドライブがかかる。」と感じたそう。
7.失敗は必ずある。失敗はひとつの成果。 (田中里佳)
田中さんが河川事務所長時代に意識していた、事務所職員の小さな成功体験を作るために重要なことについて。「スピード感(まずは、やる)」、「はみ出る勇気」、そして「小さな失敗と改善」をあげ、「失敗は、成功につながるものと前向きに捉える」と語った。
8.皆んなが楽しいと思いながらやったことが、上手くいった。 (松山芳士)
重信川スラックラインパークが、なぜうまくいっているのか、について考えた時、「言葉にするとなかなか上手くはまらない」と松山さん。しかし「いろんな人との出会いの中で、上手く繋がったのだと思う。関わる皆んなが楽しいと思いながらやったことが、上手くいった理由」と語った。
開催日:2020/11/12
<講師>
田中里佳(国土交通省/中部地方整備局 前浜松河川国道事務所長)
松山芳士(国土交通省河川計画課河川計画調整室 課長補佐)
浅見知秀(小山市/都市整備部長 水辺好き公務員夫婦)
今佐和子(国土交通省都市局(育休中/開催日時点)水辺好き公務員夫婦)
DAY2 「最強のチームのつくり方」公共越境力と立場を超えたチーム編成とは?
山口県の長門湯本から中継してお届けした本回では、「地域の変革のチャンス」に官民の垣根をこえて向き合い、社会実験の成果を確認しつつ、動機を醸成し、チャンスを掴んだ様子を現場で伺うことができました。
9.一番本気が試されるのが、住民と対峙する場面 。(木村隼斗)
地域との信頼関係をつくる時に大事にしていることは、という受講生の問いに対して、木村さんは「住民と対峙するとき」と回答。「僕らは役割分担しても、住民から見たら関係ない。住民の皆さんからは様々な意見が出るが、専門じゃないから、部署が違うから分からないではなく、一緒に考えていきましょう、という姿勢を大事にしている」と語った。
10.やりたい人の背中を バーンと押してあげる、強めに。(松岡裕史)
地域で小さくスタート、がなかなか上手く進まない、その場合にどうしたらいいか、という受講生からの問いに対して、「背中を押してあげる」と松岡さん。「始め方、進め方の答えが必要な場合は、その解決方法を持っている人につないであげる。その上で思いっきりやりなさい、と応援する」と語った。
11.すれ違う人みんな、 街全体がチームのように感じた。(熊木雄一/国土交通省 水管理・国土保全局 河川環境課 課長補佐)
長門湯本のまちを講師の松岡さんと一緒に歩き案内してもらった、熊木さん。その際に、皆が松岡さんの知り合いで、色々な方からたくさん声をかけられるその様子から、「街全体がチームのように感じた」と語った。
開催日:2020/11/17
<講師>
木村 隼斗(長門湯本温泉まち株式会社 エリアマネージャー)
松岡 裕史 (長門市役所 観光課兼やきとり課)
DAY3 「俺がやらなきゃ誰がやる」公共越境力と実践していく 意志が宿るところ- 岡崎の事例から
岡崎市の乙川を活かしたまちづくりのキーマンふたりを、喫茶ランドリーにお呼びしてお届けした回。ひとの「水辺やわがまちを我が事のように思う潜在的な力」を引き出すことを大切にしてきた活動のお話を伺いました。
12.プレイヤーが一人じゃないんだって思えるような環境をつくりたかった 。 (岩ヶ谷充)
岩ヶ谷さんが、乙川でイベントをやる際に心がけたことは「プレイヤーと一人ぼっちにしない」。「プレイヤーと一緒に、失敗も成功も寄り添いたい」と思い、とにかくプレイヤーと話をし、一緒に何ができるか考えたそう。
13.初年度の苦労は、必要な背伸びだったと気づいた。(天野裕)
私のまちでは、持続可能な力の入れ具合に悩んでいる、という受講生の問いに対して「最初はとにかく川で何ができるのか分からなかった。しかし、初年度に色々やってみて、出来ることと出来ないことの境界線が、見えてきた」と天野さんは回答した。
14.人間臭さが人の心を掴んでいった (田中元子)
講師の二人が、乙川の2年目の悩みに愚直に向き合ったことに対しての田中さんのコメント。「一年目に調度良く、だなんで初めてのことで誰もできない」「2年目に悩んだ人間臭さみたいなものが人の心を掴んだんだと思う」と語った。
開催日:2020/12/3
<講師>
天野裕(岡崎まち育てセンター・りた事業企画マネージャー )
岩ヶ谷充(NPO岡崎市まち育てセンター・りた /おとがワ!活用実行委員会 事務局 )
<コメンテーター>
田中元子(株式会社グランドレベル代表取締役/「喫茶ランドリー」企画運営 )
DAY4 「知られざるSDGsと水辺の関係」自分ごとにしていただく必要があるSDGsの目標とミズベリング
ミズベリングとSDGsにどんな関係があるのか? SDGsを日本に導入するにあたり尽力されたキーマンのご自宅に直撃し、連携協働による社会課題の解決がいかに時代に要請された手法なのかを伺いました。
15.SDGsはビジネスから、ではなく、地域や自分の実感から。 (川廷昌弘)
「SDGsについて、ビジネスツールから入っていく人が多いが、それは違う」と語る川廷さん。「地域だ、自分だ、というところから入っていかないと、SDGsは使えない、貼り付けていくだけになってしまう」と説明。
16.強い人の呼びかけよりも、弱い人の変容が世の中を変える 。(山名清隆)
問題を解決するために自分事にする、という話題に対して、「強い人が呼びかけるよりも、弱い人が自ら変わろう、と思って変わった時に全部が動き出す。世の中と自分は、関係ない、と思っている人が、自分のこととして受け止める。そういうコミュニケーションについて常に興味がある」と山名さんは語った。
開催日:2020/12/17
<講師>
川廷 昌弘(博報堂DYホールディングス グループ広報・IR室CSRグループ推進担当部長)
山名 清隆(ミズベリングプロジェクト プロデューサー)
DAY5 防災を変えた男の仕事術
「東京防災」で防災の概念を変えた仕事の秘訣。生物の進化のプロセスを発想のためのメソッドに応用して、人の創造性を高め、社会が変わるような新しい価値を生み出す「進化思考」でミズベリングのありかたに迫りました。
17.エラーを起こすくせをつけると、新しいやり方に出会う確率が上がる。(太刀川英輔)
固定概念を破り発想する方法について、エラーを起こすことが必要、と太刀川さん。そして、「エラーを起こそうとすると今までになかった新しいやり方に出会う」と語った。
18.WHYを問う、という姿勢の当たり前さを醸成していく。(岩本唯史)
ミズベリングパーソンとは何なのか、その活動の目的は何なのか、という課題を受講生に出していた、岩本塾長。「今は現状として社会にないことかもしれないが、ミズベリングは能動的な人々のムーブメント。WHYを問う姿勢の当たり前さを醸成してくことことこそが、活動そのものの目的になるのではないか」と語った。
19.私もカワレルで学んだことを活かして、バカになりたい。 (熊木雄一)
人の脳の中では、バカ(変異)の思考と秀才(適応)の思考がぐるぐると葛藤して答えを出している、という太刀川さんの話を受けて、熊木さんは「カワレルで学んだことを活かして、バカになりたい」と語った。
開催日:2021/1/14
<講師>
太刀川英輔(NOSIGNER代表/デザインストラテジスト/進化思考家 /慶應義塾大学特別招聘准教授)
DAY6 どうなの?流域治水「やらされるを超えて自ら、楽しく、やりたくなることへ」
水がどう流れ、溢れるのか水の気持ちになってみる。「行政だけでなく」市民が生活の中で水の恵みと災いに向かい合うためのインスピレーションとは?そこから立ち上がる流域治をデザインするということについて考察しました。
20.自分の専門を越えて、 他の領域を勉強して、頭の中で統合していく。 (中村圭吾)
グリーンインフラは進めていく上で、異なる領域を巻き込んでいく必要があると、中村さん。その上で、「河川だけでなくいろいろな問題が、越境力を必要。自分は河川のことしか分からない、ではなく、自分の専門を越えて、他の領域を勉強して、自分の中で統合していくの必要がある」と語った。
21.貯めることと溢れることは裏表。貯まったところは溢れている。(瀧健太郎)
溢れることと溢れさせないことは裏表、と瀧さん。「川の中に水が入らないように、田んぼに溜める。それは、田んぼの横の水路から溢れさせて溜めている、ということ。支川にとっては溢れているが、本川にとっては溜めていると受け取れる。だから、溢れると溜めるが一緒なんだ、そしてそれが見えてくると、流域治水全体が見えてくる」と語った。
22.僕らは河川管理者だけに、 水のことを押し付けてきてしまった。(滝澤恭平)
2020年7月に国土交通省からあった、治水事業を流域治水へ転換する、という発表に対しての滝沢さんのコメント。今後は河川管理者だけに押し付けた治水でなく、流域に関わる関係者が、主体的に治水に取り組んでいく社会になることが求められている。
開催日:2021/1/28
<講師>
瀧健太郎(滋賀県立大学准教授)
中村圭吾(国立研究開発法人土木研究所 水環境研究グループ河川生態チーム 上席研究員 兼 自然共生研究センター長)
滝澤恭平(ミズベリング・ディレクター/水辺総研取締役)
学びは続く
ミズベリングでは、これまで、水辺の公共空間を活かす取り組みや人々との輪を拡げてきた中で、プロジェクトが生まれるには、官民の境界を越えて主体的に関わる行動力、つまり「公共越境力」が不可欠である、と言ってきました。
そして、ミズベリングが培った「公共越境力」を未来のミズベリストと共有し、そして、この時代に越境力を身につけることの意義に迫っていったのが、この公共越境力養成塾 KAWAREL MIZBERING CAMPUSでした。
受講生の皆さんは、この養成塾を通じて、多くのことを得られたかと思います。
最後に、最終講義の、岩本塾長の言葉を借りて締めます。
「受講生の皆さんにこの講座の修了証はお渡ししません。
なぜなら、今後も学びは続くからです。
この講座を通して、公共越境力は、新しい時代を切り開くのに必要な能力と気づいていただけたかと思います。
修了証の代わりに、お渡しするのは生徒手帳です。
これからも一緒に学び続ける水辺のキーパーソンでありましょう。」
この記事を書いた人
ミズベリングとは、「水辺+リング」の造語で、 水辺好きの輪を広げていこう!という意味。 四季。界隈。下町。祭り。クリエイティブ…。 あらためて日本のコミュニティの誇りを水辺から見直すことで、 モチベーション、イノベーション、リノベーションの 機運を高めていく運動体になれば、と思います。
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