2019.11.12

共感を得る、水辺での公共空間広告とは?2019年は日本のリバーメディア元年。

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渋谷駅至近の渋谷川にカバが出現!

2019年8月24日、25日、東京・渋谷の渋谷川、稲荷橋付近、渋谷ストリーム前に体長約4mものカバの親子3体が現れた! もちろん、本物そっくりのオブジェだが、道行く人の関心を集めた。実はこれ、FOXネットワークスが運営するドキュメンタリー専門チャンネル、ナショナル ジオグラフィックの新番組「ホスタイル・プラネット 非情の惑星」のプロモーションなのだ。カバの親子が水場を求めて、タンザニア・カタビ国立公園から渋谷に逃げてくる、というストーリーである。

当プロモーションを担当した、電通のクリエーティブ・プランナー/コピーライター、小田健児氏はこう話す。
「ますます厳しくなる地球環境の中でも強く生き抜く動物たちのドラマをテーマにした番組を、驚きをもって世の中に伝えることが目的でした。そこで、タンザニアの厳しい地球環境から、遠く日本の渋谷川まで、水場を求めて親子のカバがやってきたという設定(シーン)にしました」

通常はテレビ画面を通して見るような光景を、都会の日常で目にすることにより驚きを与える。その驚きを機に、1人でも多くの人々に、地球の厳しい環境変化と強く生き抜く動物たちの生き様に想いを馳せてもらい、救いの手を差しのべ、さらには敬意の念を抱くようになることも狙った。

数ある河川の中から、なぜ渋谷川を選んだのだろうか。それは、先ほど新番組のテーマを視聴者に関係ない遠い世界の出来事としてではなく、身近な出来事として捉えてもらうため、都会を舞台にすることを考えたのだという。動物たちにとって最も深刻な地球の環境問題のひとつは干ばつだ。「その干ばつの問題を伝えるために、比較的水量が少なく、自然の川でもある渋谷川に絞りました。一方で、都会での自然の川の存在や尊さも知っていただけたと思います」(小田氏)

特に今回は、現場周辺に昔から暮らしている多くの人々や働く人々にもこの取り組みを目にしたようで、「なじみのある川が人々から注目され、みんなが自然や環境について考えるきっかけになったことがうれしい」という声も多く聞かれたという。仕事の休憩中や、朝・昼・晩と複数回見に来る人もいた。親子のカバに向けて手を振る人、「カバちゃんたちありがとう!」と声を掛ける人も見られたそうだ。「夏休みの土日、たった2日の取り組みでしたが、親の手を引っ張ってやって来た子供たちの目の輝きを見るにつけ、地球の将来や未来に希望を託すという意味でも成功だったのではないでしょうか」(小田氏)

(写真/FOXネットワークス)

大阪中心部の大川に巨大ラグビーボール

2019年9月~10月初旬には、大阪市中心部を流れる大川に、直径約10mものラグビーボールバルーンが浮かんだ。場所は、川野駅はちけんや付近。これは、9月20日に開幕したラグビーワールドカップ2019のプロモーションの一環だ。

ラグビーワールドカップ2019大阪・花園開催推進委員会は、これまでも御堂筋や主要駅など多くの人々が行き交う場所を装飾するなど大会開催の機運を高めてきたが、開催間近の時期を狙いさらにインパクトあるプロモーションを行ったもの。国内外から大阪を訪れる人々に、ラグビーワールドカップ開催の雰囲気を体感してもらう目的だとする。

大川でプロモーションを行うことになった経緯について、同委員会の担当者はこのように説明する。
「大阪の名所をラグビーボールが飛び交い、最終的に巨大なラグビーボールが水面に着水するというPR動画に連動して、実際に水面にラグビーボールバルーンを設置できる場所を検討することに。集客や船舶航行の安全面、過去に水面にオブジェが設置された実績などを参考にしながら河川管理者などに相談。その結果、天満橋駅近くで集客効果が期待できる川の駅『はちけんや』前の水面が選ばれました」


(写真/ラグビーワールドカップ2019大阪・花園開催推進委員会)

「青の洞窟」をイメージし川を青い光で包む

2019 年9月16日 ~10月6日、福岡市の中洲懸橋ではイルミネーションイベント 『青の洞窟 FUKUOKA』が行われた。当イベントは、『青の洞窟 FUKUOKA 』実行委員会が地域活性化プロジェクトの一環として博多の魅力を世界に発信すると同時に、環境に優しいまちづくりの活性化を目指し主催したもの。同委員会は中州観光協会・中州町連合会など地元の3団体からなり、パスタやソースを主とした「青の洞窟」ブランドをもつ日清フーズが特別協賛だ。

当イベントは、博多・中洲に位置する中洲懸橋 に「青の洞窟」が青い滝となって出現するという設定。クルーズ船も用意された。青い滝が流れる橋をくぐり、博多湾までの名所を巡る航路で、約30 分間のクルージングが味わえる。船内では青の洞窟ブランドのパスタも食せるようにした。

イルミネーションイベント「青の洞窟」シリーズは、2014 年に東京・中目黒で 始まり、渋谷、札幌、大阪と場所を変えて継続的に開催されてきた。2018年に渋谷で開催した際には、約280万人が足を運んだという。


(写真/『⻘の洞窟 FUKUOKA』実行委員会)

川のさまざまな特性を生かしたプロモーションは、幅広いジャンルに可能性がありそうだ。柔軟かつユニークな発想を生かした、それぞれの地域の人たちを楽しませ、また集客に一役買うようなイベントがますます増えることだろう。

地域の人たちが自ら水辺を使いこなすのみならず、水辺を使いたい企業などとコラボレーションすることによって、地域の水辺をより魅力的にする可能性が一気に広がるのではないのだろうか。

この記事を書いた人

介川亜紀

住宅、建築、都市、まちづくりがフィールドのフリーランス編集者。特に建築や都市・まちの「再生」に興味津々で日本全国を飛び回っている。 仕事と並行し、明治大学大学院で再生マネジメントと都市計画を学び2016年修了。

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