2019.06.11

今年の「水辺で乾杯」はどんな感じ?!

今年も実施します!

毎年実施されている「水辺で乾杯」。今年で実施5年目になるこのイベントについて、今年の実施が発表された。

あらためて「水辺で乾杯」を説明すると、毎年7月7日、川の日(七夕の天の川にちなんでいる)にあわせて、7時7分に全国で一斉に乾杯しようよ、というきわめてゆるいイベントである。各地で自由に「ここで乾杯します!」という「乾杯宣言」することができ、当日実際に乾杯をしたあとは、「実施写真」を「水辺で乾杯」のウェブサイトに投稿できるようになっている。「水辺で乾杯」を思いついたミズベリング事務局の山名プロデューサーによると、既存の制度を変えるというハードルを乗り越える必要がなく、いわゆる「河川の自由使用」の範囲で、わっとみんなで集まって乾杯をし、そのあとさっと迷惑をかけずに綺麗にして帰るということで、水辺を親しむ機会をたくさんの人たちでつくれるという気楽さを前面に、その気楽さの結果、官民の垣根を超える機会になるのではないか、とか、水辺の未来への思いを共有するいい機会になるのではないかと考えているそうだ。

実際、毎年参加者数は変動しつつも、これまで述べ3万人弱が参加してきたことになる。

去年はミズベリングがグッドデザイン賞金賞を受賞したが、受賞の応募パネルには多くの乾杯ミズベリストの乾杯写真が使われた。

水辺で乾杯画像がたくさん使われたグッドデザイン賞BEST100の展示パネル

今年も変わらず、各地で自由に「水辺で乾杯」をしていただけるように、ミズベリング事務局は準備をしているという。
そんななか、「水辺で乾杯」が今年変わる点があるという。今年のポイントについてミズベリング事務局に聞いてみた。

今年の「水辺で乾杯」の4つのポイント!

・開催日が4日間に
・乾杯のウェブサイトが変わる
・安全への意識の変化を称え合う機会に
・「水辺で乾杯」が世の中に問いかけるものとは

開催日が4日間に

今年は7月7日が日曜日。ミズベリング公務員たちにとっては、休養日なので、オプションとして、金曜日の5日から月曜日の8日まで幅広く各地域の事情にあわせて、乾杯日を設定できるようになりました。なかには4日間連チャンでやる地域もあるかも?!

乾杯のウェブサイトが変わる

乾杯の特設ウェブサイトは毎年ローンチされてきた。「水辺で乾杯」を企画した方が、”ここでやります宣言”をしていただくのと、実際に水辺で乾杯をしていただいた風景を写真で投稿してもらえるサイト構成で成り立っていた。

企画をしている事務局のウェブディレクター、有澤さんに聞いた。

有澤卓也氏

「改良点は、乾杯告知のフレキシブル化」

「今年、乾杯の特設ウェブサイトが目指したものは、「宣言」や「乾杯の写真投稿」だけでなく、雨天や台風のことも考え、日程を変更したり、「中止」も告知できるよう配慮しました。宣言をしていただく際にIDとパスワードを登録していただくと、管理ページから「宣言」の日程変更をしたり、雨天や台風の場合は「中止」に切り替えたりすることもできます。つまり、それぞれの地域の主催者にとっての、乾杯告知のフレキシブル化です。それぞれの乾杯場所の設定から日程変更、実施後の写真投稿までを同じページで確認できるように仕上げました。また、乾杯の告知や実施状況は地図にマッピングしていきますので、全国での開催状況がひと目でわかり、あんなとこでも、こんなとこでもやっている一体感を瞬間で掴んでいただけたら嬉しいですね」

それぞれの地域のオフィシャル告知ページとしても使えるとのこと。

さて、こういう機能を盛り込んだ理由はなんなのだろうか。

「ひとつは、企画をしたのに実施したのか、していないのかが把握しづらいという事務局側の理由があります。全国一斉にやっているソーシャルアクションですので、参加者のたしかな人数や状況を知りたいんですね。もうひとつはやはり、当日雨になったりして、実施をするのか中止するのかを直前までみなさん悩まれていることがあります。そして、ここ二年続けて各地で降雨災害で被災されている方々がいることも大きな契機です。幸いなことに「水辺で乾杯」をしたことで事故にあったという報告がないのはいいことですが、事前の情報収集とそれに基づいた適切な情報発信があってこそ成り立っていることもあり、このような機能を実装することが必要だと考えました。また、防災アプリも連動させて、乾杯を心配なく実施したり、延期したりできる意識付けもしています」。

このように臨機応変に対応できるウェブサイトによって、「水辺で乾杯」がどのように変化するのか、今年の成果は、ログとして残ることになり、事務局として参加者意識も把握しやすくなったそうだ。

安全への意識の変化を称え合う機会に

「水辺で乾杯」を毎年実施してきた7月7日の前後は、ここ2年毎年豪雨災害が起きている。
2017年は「九州北部豪雨」で、2018年は「平成30年7月豪雨」が発生し、多くの犠牲者と家屋等に損失が発生しているのは記憶に新しいところである。
そんななか「水辺で乾杯」をやる意味があるのかどうか、事務局内でも多くの議論もあったそうだ。でも、この国土に住む私たちはすべからくこの災害も起きうる自然とともにいきていく宿命をもち、多少の違いはあるにせよ、そのような災害とも向き合う意味でも、いままさに身近な河川環境と向き合うためにも、「水辺で乾杯」をすることの意義を問いかける意味で実施してきた。

ミズベリング事務局で把握している「水辺で乾杯」参加者数と実施箇所数の推移。豪雨災害で参加が少なくなった印象が・・

「365日のうち、河川で生じる洪水は数日程度ですが、河川管理者はその対策に集中的に対策を講じています。しかし、河川を利用する人や動植物にとっては通常の毎日も重要です。河川は、時に人々に「災い」をもたらす存在である一方、我々に多くの「恵み」を与えてくれます。「水辺で乾杯」が、大雨や洪水により中止となってしまうことは残念ですが、「恵み」と「災い」の両面を知る良い機会になるのでは。」というのは、国交省の河川環境課の吉村さん。

国土交通省水管理国土保全局河川環境課 吉村謙一氏

各地で乾杯宣言されたみなさんの反応はどうだったのか

実際水害にあわれた各地のみなさんは、乾杯どころではない。その他の地域でも、自粛をする方々もいれば、あえて実施するところもあったというのが、去年と一昨年の水辺で乾杯の実態である。
各地では水害が起きつつあるなか行う「水辺で乾杯」でどのような意識の変化があったのか、事務局ではアンケートをとったそうだ。

昨年度の「水辺で乾杯」後に事務局で主催者にアンケート(回答31箇所)をとると、水辺で乾杯を実施する過程で、いままで向き合ってこなかったさまざまな情報と触れ、各自で判断を下す機会になっていたことが見えてきたという。

実施した関係者へのアンケート。予定通り実施できたかどうかのアンケートで注目するところは、公式にはできなかった、公開できなかったが実は実施した、という方が結構いたことである。いろんな立場がいるなかで、予定通り実施することの困難さが伺いしれる一方、そんななかでも、批判をうけるかもしれないとしても、あえて実施することの意義を見出していると、とらえることができる。


昨年度の豪雨災害のニュースが駆け巡る中での公式ウェブサイトへの掲載はセンシティブだったということがわかる。半数以上が躊躇した、あるいは掲載できなかったということになる。


実際、実施しなかったとアンケートで答えた方で、32%が実際に危険が迫っていた。他の68%は、危険はなかったが、社会的な理由で実施しなかったことがわかる。

アンケートで「今年のような大変な状況を経て、それでも水辺で乾杯をやることの意味について、いまのお考えをお教えください」との質問に関しては、以下の意見が寄せられた。

・河川が楽しいだけの場所ではないことを知ってもらうことも大切だと考えます。
・どんな状況であれ、我々が水辺にアプローチして、楽しみながら利活用していく中で、治水に関しても研究検討して行政とともに安心安全な新しい水辺のイメージを作っていく過程の中では、誰もが気軽に参加できるイベントを行っていくことは大事なことだと思います。(時と場合によっての節度は必要ではあるが)
・家や職場の近くの川がどんな歴史を持ち、どんなリスクをはらんでいるのか、どの水門に守られているのか、身近にありすぎて見えなくなっている事を少しずつ明らかにして行くきっかけが水辺で乾杯というイベントの意味なのかな、と思っている。時に厳しい顔を見せる川や海だが、そこからもらっている恵みも計り知れないので、こちらから近づいて、知ろうとすることは大事。
・水辺や川が恐怖の対象のみになってしまうことは悲しいことです。他の地域が大変な災害の中、不謹慎と言われるかもしれませんが、水辺が恐怖だけにならないよう、楽しみ方を提案するという意味も含め続けていくべきだなと思っております。
・「水辺で乾杯」を通じて、親水できる身近なものであるが、洪水も起こる川である両面を知るためのきっかけにまず水辺に出向くことも重要であると考えます。
・川は、洪水等が起これば危険ではあるが、一方で生活に恵みや安らぎをもたらしてくれるもだと感じることが出来る。

アンケートの「これから「水辺で乾杯」を続けるにあたって、なにに配慮をするべきか。」という質問には、以下のような回答があった。

・全国それぞれの地域で状況は異なるので、天気が荒れそうな時は、「水辺で乾杯」のウェブサイトやSNSで、気象や河川情報を提供(リンクを提供)し、警告したうえで、実施可否判断は各主催者に任せるということでよいと思う。
・「水辺で乾杯」ウェブサイトには、やり方は書いてあるが、趣旨や経緯の記述はないので、何故やるのか?誰の為のものなのか?を入れておいた方がよいのでは?回を重ねるごとに、本来の趣旨が薄れて行く場合もあるので。

主催者の多くは、河川の恵みと恐れの両面を一般の方に感じていただく機会としても「水辺で乾杯」を捉えていることがわかってきた。

「実施するまでに各地のみなさんが気象庁の情報、河川情報、YAHOO防災などさまざまな情報と向き合い、あるいは気象庁とは異なるスタンスで予測する諸外国の気象情報も駆使する強者までうまれたり。おのおのの「水辺で乾杯」の実施企画会場ごとにそのような向き合い方をするミズベリストが生まれ続けていることは、これまでの河川への関心の寄せ方を一歩先へすすめるものではないかとすら、感じます」というのはミズベリングディレクター滝澤氏の談。。

今年は、より本質的に河川と向き合う状況がうまれるのではないかと語る ディレクター滝澤恭平氏。

「水辺で乾杯」が世の中に問いかけるものとは

「今年の「水辺で乾杯」は、パーソナルな気象変動への対策をテーマに」というのは、事務局プロデューサーの山名さん。
このような水辺との向き合い方こそ、これまで日本人がときに厳しい自然と向き合ってきた態度で、それは災害がさまざまなインフラの整備がされて少なくなったとはいえ、これからも「起こりうること」として向き合い続けていかなければならないことと言えるかもしれない。

水辺で乾杯が楽しく、そして公共空間の使い方を広げるものであることに疑いの余地はない、というのはこれまでも実証してきたところである。その輪は全国に広がり、多くの人々の水辺への思いを見える化してきた。そして、その楽しんで使うという水辺との向き合い方、考え方の先に、自然災害との向き合い方も気づかせてくれるなにかがあるかもしれない、というのが今年のメッセージなのである。恐れてなにもしない、のではなく、あえて向き合う。そんな水辺との向き合い方を模索する場になればいいなと感じた。

今年のチラシの裏面では、事前に防災アプリをダウンロードしたり、状況確認を事前に行うことを推奨している。これは、自ら災害情報をタイムラインで把握し、行動につなげることの大切さと楽しく主体的に参加するミズベリングのいいところの掛け算である。

水辺で乾杯公式サイト
https://mizbedekanpai.mizbering.jp

*一昨年の「九州北部豪雨」、昨年の「平成30年7月豪雨」にて被災された皆様にお見舞い申し上げるとともに、お亡くなりになられた方々の安らかならんことをお祈りし、ご家族ご関係者の皆様には心よりお悔やみ申し上げます。

この記事を書いた人

水辺コミュニケーター

細田侑

1991年東京都墨田区出身、傘職人の孫。幼少期の経験から自分の居場所と役割を模索、途上国支援の道を目指すが高校での島留学や東北での復興支援をきっかけに地域活性やまちづくりに興味を持ち、大学ではコミュニティマネジメントを専攻。現在は、地元でヤッチャバ(都市型マルシェ)の運営や離島の活性化、水辺のまちづくりなど場づくりを繰り返している。水辺は江東区のNPOの活動に参加したのをきっかけに、その魅力に惹かれ水辺が好きになりそこに関わる人と一緒に活動することが楽しい。

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