2018.10.09

デザインが水辺の公園を変える 岐阜県美濃加茂市 「RIVER PORT PARK MINOKAMO」に行ってきた。(前編)

人と人・川と街をつなぐ

県の南部に位置する美濃加茂市、市街中心部の南側には木曽川が東から西に流れている。市はこの木曽川を中心とした地域の自然環境のポテンシャルを活かしたかわまちづくり計画を2009年度より協議会からスタート(2010年度に国土交通省の「かわまちづくり支援制度」に登録)。
約10年かけて今年4月に中之島公園をリニューアルしラフティングやBBQ、カフェなど様々な楽しみ方ができる「RIVER PORT PARK MINOKAMO」が誕生した(以下「RIVER PORT PARK」)。オープンして3ヶ月で来場者は3万人を突破。今回は実際に現場を訪れて、前編後編に分けて公園の魅力や整備背景、事業スキームまで掘り下げていく。

公園全体の写真

公園全体の風景。横には木曽川、太田橋が架かる。

歴史・文化的な背景を継承そして再興

名称は一見横文字で若者向けの印象だが、名称には歴史的な背景がある。かつて木曽川の上流部には材木やいろいろな物資を集めて下流に運ぶための「川湊」と呼ばれる集積地があり、中之島公園は「太田の渡し」と呼ばれる川の渡し場があった交通の要所でもあった。また近年は、木曽川を下る「日本ライン下り」が行われていたが、業績不振で運行休止となっていた。
これまでの歴史・文化的な背景を継承する形で公園の名称のPORTは「川の湊(みなと)」から表現された。人と自然が世代や国境を超えて交流できる「湊」を目指している。

グラフィックは同じ岐阜県のデザイナーが担当。公共施設ぽくないデザインを意識している。

五感を刺激する遊びと学びを体験できる公園

RIVER PORT PARKには様々な空間とアクティビティが行うことができる。
これから公園内の魅力を6つに分けて紹介していく。

1.ビジターハウス

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公園中央に位置するビジターハウス。園内の総合受付となる。

ビジターハウス1階にはCAFÉ&PIZZA DELTAが併設されており、夜はお酒も提供。
先日もジャズイベントが開催されたそうだ。

NYスタイルの食材にこだわったピザや様々な種類のドリンクを提供。

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カフェをテイクアウト形式にすることで、気軽に外に持ち出し川を見ながら飲食できる。

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2階は30人利用可能なイベントスペース。

ヨガ教室として人気で、1時間500円と格安でレンタル可能。副業の場として教室を開く主婦の方も現われているそうだ。他にも授乳室やコインロッカーなど完備。
「カフェの利用からBBQ、川のアクティビティ、フィットネスなど様々な楽しみ方ができるので、客層も地元の人から名古屋方面からと様々な人が集う。」と話すのは長年に渡ってここの整備を担当してきた美濃加茂市の建設水道部土木課の大塚氏。
「内装は地元の木材として有名なアベマキを活かしている。川への見晴らしや景観を大事した建築にしている。結果、最初に予定していた建築とはだいぶ変わりましたね。」とかわまちづくり事業担当になってから一度も異動なく、一貫して担当してきた分、人一倍想いが強い大塚氏。インタビューしていてもすぐに伝わってくる。

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右奥:美濃加茂市の建設水道部土木課の大塚氏。左手前:RIVER PORT PARK マネージャーの飯田氏。
2.リバーエリア

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アウトドアをもっと身近に

リバーエリアでは、ラフティングやSUPなど初心者でも気軽に遊ぶことができる。ラフティングは激流なイメージだが、木曽川は川幅が大きいのに対して、流れがゆるやかなので小さい子でも楽しめるそうだ。一般的なガイドがつくコースから、前後にスタッフがつき家族や友達同士で力を合わせていくコースもあり他とは違う楽しみ方も用意されている。SUPも初心者でも参加したその日にダウンリバーまでできるコースがある。全体的にコース料金も相場では安い設定となっている。夏休み期間はほぼ毎日実施されたそうだ。

「川もBBQもすべて手ぶら。『アウトドアをもっと身近に』をコンセプトでやっている。今現在、利用者の多くは県外の若者や大学生が多い。名古屋や豊田から一時間ほどの距離で、ぱっとアウトドアが楽しめるのが理由ではないか。」と説明するのはRIVER PORT PARK MINOKAMOマネージャーの飯田氏
飯田氏は郡上を拠点に20年以上アウトドア体験やキャンプ運営を行う、有限会社EAT&LIVEに所属。「郡上ではアクティビティに18歳以上の年齢制限をしていて、若い女性がターゲット。自分たちもこどもができて、ファミリー層向けの事業を展開したいと思っていた矢先に今回の管理者があがった。」
もともと大塚氏は有限会社EAT&LIVEの代表とは交流があり、中之島公園での社会実験や事業性の相談を一緒にやってきたそうだ。

ラフティングをする家族。小さい子がラフティングをしている風景が日常。

遊ぶこと・リスクマネジメントの両立

若い世代はこれまで川で遊んでなかった分、事故などの危険性もある。「今の時代、地元のおじいちゃんが『あそこの川は流れが急だよ。』と教えてくれることはあまりない。なので、ライフジャケットをつけることを常識にしていきたい。」(飯田氏)
「市内の小学校と連携して、川のリスクマネジメント講習を実施し今年で3年目となる。実施する小学校も年々増えていて、ここで初めて飛び込んだという子もいるほどだ。」(大塚氏)

実際の救命講習の様子。
「今では川で遊ぶ人が減った。整備される前は、こどもがここで何かすることは想像しにくく、年配の方がたまに釣りするぐらいだった。こどもの頃から川で遊ぶことで川への愛着をつくっていきたい。それが川を守ることへつながる。」と大塚氏は今の風景を見ながら嬉しそうに話す。

3.BBQエリア

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左写真:地元の野菜がおかわり自由。右写真:女性でも運搬は楽ちん。

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夜のBBQ風景。昼とは違った雰囲気が楽しめる。

食材・食器・器具はすべて運営側が用意。追加の食材・飲み物も持ち込み可能。お盆期間はすべて満席の盛況ぶりだ。
整備する上で、ウッドデッキは市が負担。それ以外のテントや机、椅子などは運営会社が負担している。「デザインにこだわりながらも、どこまで行政側が負担できるか運営会社さんと密に話し合いながら整備していった。」(大塚氏)

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「小さい人口川」整備するときにでた石を活用。幼児でも遊べるようにしている。
4.芝生広場&リバーデッキ

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地域の憩いの場となっている。

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イベント時にはビジターセンターをステージに、芝生広場は多くの人でにぎわう。

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もともとライン下りで使われていて現在使われていないリバーデッキ。

デッキをステージに見立てて程よい間隔で段差を整備したことで、腰掛けるのにいいスペースができている。

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昨年の7月7日水辺で乾杯時の様子(出典:https://plaza.rakuten.co.jp/machi21minokamo/diary/201709260000/)

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ヨガやピクニックにも活用されている。あえて壊さなかったことで利活用している。
5.フォレストエリア

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浮きテントやハンモックなどもレンタル可能

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この夏は虫取りにくるこどもが多かったそうだ。

指定管理外の森を1人のボランティアが整備

隣接したフォレストエリアもこのRIVER PORT PARKでは大きな魅力となっている。指定管理外である森は大塚氏が持ち主と交渉、もともと藪だらけだった森を協議会メンバーであった藤井氏がほとんとど一人でボランティアで整備したものらしい。
「もともと上流の方の自分の家の周りを整備していたけど、それがここまで延長しただけ。」と藤井氏は揚々と話す。アイディアマンの藤井氏は花の植樹や、カブトムシのベッドまでを公園がより楽しくなる仕掛けをつくっている。

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藤井氏の拠点はSUPやラフティングの艇庫の中にある。

艇庫の半分が藤井氏の倉庫となっていて、協議会メンバーの拠り所となっている。

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藤井氏が自作のピザ窯を説明している様子。(よく使っているそうだ。)

「藤井さんがいなければRIVER PORT PARKはできなかった」と大塚氏は話す。森の整備に対して、市からは実費負担で済んでいるそうだ。

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整備後の現在の森。藤井氏が整備するまで藪だらけだった。

切り株や斜めの木は藤井氏が取り除いた。(そして薪を近所に配ったそうだ。)

6.細部までこだわったデザイン

SNS映えする仕掛け。

左写真:入り口の看板はわざと錆らせるほどのこだわり。右写真:椅子は地元の大工がカルガモをイメージして制作。

→後編ではRIVER PORT PARK MINOKAMOの誕生の裏、事業スキームについて紹介していく。

RIVER PORT PARK MINOKAMO

住所
岐阜県美濃加茂市御門町2-2-6
TEL
0574-49-6717
休館日
火曜日
開館時間
9:00~17:00
HP
https://rppm.jp/
Facebook
https://www.facebook.com/RIVERPORTPARK/
Instagram
https://www.instagram.com/riverportpark/

この記事を書いた人

水辺コミュニケーター

細田侑

1991年東京都墨田区出身、傘職人の孫。幼少期の経験から自分の居場所と役割を模索、途上国支援の道を目指すが高校での島留学や東北での復興支援をきっかけに地域活性やまちづくりに興味を持ち、大学ではコミュニティマネジメントを専攻。現在は、地元でヤッチャバ(都市型マルシェ)の運営や離島の活性化、水辺のまちづくりなど場づくりを繰り返している。水辺は江東区のNPOの活動に参加したのをきっかけに、その魅力に惹かれ水辺が好きになりそこに関わる人と一緒に活動することが楽しい。

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