2014.03.26
おうち感覚のラブリー小舟で
水辺をトリップしませんか?
「御舟かもめ」オーナー兼船長・中野弘巳さんインタビュー
御舟かもめ オーナー・船長 中野弘巳さん 1977年生まれ。三重県出身。大阪大学大学院工学研究科(都市環境デザイン)修了後、03年NHK入局。退職し、09年8月、「御舟かもめ」を開業。
御舟かもめWebサイト

御舟かもめはどんな船でしょう?

- 気持ちがいいですね。

- はい。上流には大阪造幣局の桜の通り抜けがあります。奥が大阪城です。あちらにゆりかもめがいますね。かもめはこの時期一番多くて、渡り鳥の彼らにとっては日本は南の国でバカンス気分でいるのでないかと、そういう気分で御舟「かもめ」と名付けました。

photo: Yuji Ogura

- どのようなコースがあるのでしょうか?

- 中之島と大阪城を回るカフェクルーズ、橋、水門を見るドボククルーズ、夜に道頓堀へ向かうバークルーズなど、4種類ほどのコースがあります。不定期に淀川をクルーズすることもあります。

- 料理は出るのですか?

- 朝は「朝ごはんクルーズ」があり、出るのですけど、ほかは持ち込みです。発電機あるんで、ご飯も炊けます。海鮮炊き込みご飯を炊いた人もいましたね。あと、利酒されたり、オーブントースターでピザを焼いたり、みなさんいろいろやられてますね。船上茶会もあります。

- お客さんが自由に楽しまれているようですね。

- 川の景色はどの船でも同じなので、どう違うように感じてもらうか、楽しんでもらうかですね。なので、名前の道頓堀クルーズとかにせず、バークルーズとかにして、お客さんにアイディアも出してもらって楽しんでもらえるようにしています。

- 客さんはどのような方が多いですか?

- 大阪、京阪神の方が7割ぐらいですね。一番多い層は30代、40代の女性です。昨日も女性同士で朝ごはん食べにきてくれたり。あとは50代以上の年配の方が3割ぐらい。

- 小舟だから、すごくプライベート感を楽しめますね。

- お客さんはグループもいれば、二人でしっぽりという方もおられます、中には、御舟でプロポーズしたいというお客さんも来られました。適切なお客さんとの距離感は毎回考えます。操船室から顔を出したら、お客さんから、どのあたりから見えるとか、意識はしてますね。

小舟というチャンネルで演出させて頂いています。

- 船はどうやって手に入れたのでしょうか?

- 天草の海で使われていた真珠船です。ヤマハの和船。この長さでこの幅の広さはなかなかないので、コンバージョンしました。

- プレミアムの船というわけですね。

- いろいろ漁協まわって廃業予定されてる漁師さんの船とか狙ったりしたけど、なかなかラチがあかなくて、ネットで出会いました。

- どういうきっかけで御舟かもめを始められたのですか?

- 妻が水上タクシーをやっていて、彼女が船長の船に乗って、川の水辺の気持ちよさを初めて実感しました。結婚して彼女が産休で辞めるので、もったいないなあと思い、 船をやることにしました。メディアでまちづくりの応援をしたいなあと思ってNHKでディレクターの仕事をしていたんですが、やはり現場に関わりたいなあという気持ちが強くなってきたこともありました。 当初は、元の職場の仲間に、中野は漁師になったらしいよと語られるというなかなか悩ましい時期もありました。


- どうして小舟でやられているんですか?

- 好きだからですね。大船だったらすでに走ってるのでやる必要ないので。僕がやらないと誰も始めないことがやりたかった。

- 小舟は距離感近いし、コミュニケーション好きでないとできないですか?

- もともとは社交的でなくてそんな得意でないけど、自分のすきなモノ紹介している。ええ天気ですねとか、コレ気持ちいやろとか、これええやろ、とやるのは楽しい。

- ある意味、ディレクター的ですね。

- そうですね。素材は一緒なんで、あとは、どう並べるか、演出するかだけなんで、わりと近いですね。船というチャンネルをいただいたと。

- 演出としては、茶室的な空間というイメージはあったのですか?

- 漠然と船やろうかなと思っていた時期にスケッチブック出していろいろ落書きしてました。昼寝とかしたいなとか。足を投げ出してというスタイルを描いていた。そういう過ごし方でいてほしいなというイメージがありました。

- それが、「おうち」ってことですか?

- 最初は、なんていえばいいだろうと。屋形船でもないし、遊覧船でもないし。小さな家かなって。Webサイトを作ってくれたデザイナーが「おうち」って読み替えてくれた。御舟かもめも「御宿」みたいな感じのニュアンスで表現しています。

水辺のまちづくりは、顔づくりから

- こういうスタイルの小舟は他にもあるのですか?

- 各種船舶で乗っているみなさんは、船会社の方をはじめ、ご親類が船舶関係だとか趣味でもともと長いキャリアがある方がほとんどなので、僕が最初に入った時は君はなんにも知らんのやなぁと言われました。何も知らない若者が出て行っても楽しくできるんだよ、となればいいなと。小さい船で仕事している仲間が増えていけばいいなあと。

- 東京にも「みずは」さんなど、小さい船をやられえる方が出てきましたね。

- 東京で「小型船での遊覧」が認知されれば、ひとつのジャンルができるんでやってほしいです。こういうのは世界的にも少ないと思うし。小舟は、ベニスのゴンドラとか水郷巡りとかしかないんですよ。ありがたいし、背筋が伸びますね。

- 新規参入はなかなか難しいのですか?

- 小舟を始める方はいるのですが、本業としてやろうとする方がいないので、ルール面などで、事業者としてずっと安全面をリードしてきた業者さんたちとの温度差はあります。そのあたりで新規参入の壁が高いというのもあるし、僕らが頑張ればもっと扉が開いてくるんでないかというのもありますね。


- 航行上、危険性な場所もあるのですか?

- 道頓堀や中之島には見通しが悪いところがあります。特殊船や砂利船は重くて大きいので簡単には止まれないですし、知っていないと取り返しのつかないことになる場所もある。そういう場所は全国各地の水路にあると思います。

- ルールはあるのでしょうか?

- 大阪だっだら水上安全協会とわたしたちと行政で話し合った「河川航行ルール」というのはあるにはあるけど、実際には水上に出て体験してみないと分からないことも多いです。ここはどうなってるとかは、口伝えと経験の世界ですね。

- 中之島周辺では、川と水辺のつながりが感じられます。

- 中之島公園は5年前に改修されたのですが、使ってる人の感覚がかなり磨かれてきて、公園を使う方法はセンスがいいです。10年前はブルーシートがたくさんの、不安な場所で、水辺に人びとに出てきてもらうのすら難しかった。いまは川のそばまで人びとに来てもらったので、こっからが問題やなあと。水際の柵が象徴しているように、水上と水際の太い壁というのがあるので。これは一朝一夕にはいかないだろうと思います。

photo: Yuji Ogura

- まちづくりとの関係はどうでしょう。

- 水辺に関わる人たちが、ボランティアではなくて、ちゃんと対価を得て食べていける状況ができて、初めて大阪の顔になっていくんだと思います。私の船の現状だと、まちづくりはその先の問題です。専業の人がまずいて、まちにオモロイことが出来ていくんだと。

- 顔が見えるところが、大阪らしいですね。

- みんな仲間であるし、ちょっとライバルみたいな感じで繋がってます。やっぱりみんな「おもろいやん」って仲間に言われたいとか、お金じゃないもので回っていくことにも意識的かもしれませんね。大阪のひとにとっては当たり前なんですけどね。

- 大阪の水辺のシーンは、今後どうなっていくんでしょうか。

- 今までは、みんなに水辺に来てもらうということで目的があったんですが、これから数年はみんなが川を共有しながら仕事にしていくという段階だと思います。変わり者のひとだけが水辺を楽しんでいるか、本当に市民に定着するかどうかというチャレンジングな状況ですね。 アートを町に入れていくのに近くて、いまの経済論理と違う仕組みが必要な気もします。イギリスでは宝くじで川の組織を運営したりしています。水辺をまちの観光資源にしていくことを目指すなら、陸の上で商売するのとはちょっと違う前提でやらないといけないところはあるのではないでしょうか。

photo: 御舟かもめ
ランドスケープ・プランナー、博士(工学)。 「ミズベリング・プロジェクト」ディレクター、株式会社ハビタ代表、日本各地の風土の履歴を綴った『ハビタ・ランドスケープ』著者。大阪大学卒業後編集者として勤務。2007年工学院大学建築学科卒業、愛植物設計事務所にランドスケープデザイナーとして勤務後独立。2022年九州大学大学院工学府都市環境システム専攻博士課程修了。都市の水辺再生、グリーンインフラ、協働デザインが専門。地元の葉山でグリーンインフラの活動を行う。
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