2014.05.28
水辺を楽しむためのGEARガイド
アクアスタジオ(現:日本シティサップ協会)の挑戦(前)
道具(GEAR) 編
遊びにマジメ?!
道具にこだわる遊び上手なオトナの水辺への挑戦
こんにちは。水主の糸井です。
さて、5月下旬。現在、気温23℃・湿度35%。
新緑の中にバラが映えるカラッとした初夏がやってきてますね。
カメラを持って少し外をお散歩するには最高の季節です。
こんな「カメラを持ってお散歩」という、今となっては何気ない日常のライフスタイルを都会の水辺に求めた方が大阪にいらっしゃいます。
今回はその方が始めた大阪を代表する水辺の団体「日本シティサップ協会」のご紹介です。
僕は2011年に開催されたミズベのイベント「水都大阪2011」にて日本シティサップ協会の前身である「アクアスタジオ」さんとお会いしてから、
この2014年春までに合計10回訪問しています。
きっと僕にとってだけでなく、街中に住むみなさんにとって魅力的なミズベの世界であるということです。
今回シリーズ「アクアスタジオ(現:日本シティサップ協会)の挑戦」と題し、日本シティサップ協会のご紹介を2回に分けてお送りしていきます。
本稿では、「日本シティサップ協会が使用する道具」。その前身であるアクアスタジオ時代からの変化に焦点を当てご紹介いたします。
※現在は団体の名称が2013年11月より「日本シティサップ協会」となっておりますが、
今回は日本シティサップ協会に至るまでの変化の過程を見ていきますので、その前身の「アクアスタジオ」としてご紹介していきますのでご了承ください。
アクアスタジオのこだわり
水辺で楽しく遊ぶみなさん。もっともこだわるところってなんでしょうか。
日本シティサップ協会の前身である「アクアスタジオ」でもっともこだわるのは、「楽しく遊ぶための道具」であると僕は実感しています。
水辺の「道具」というのはなぜ選ぶ必要があるのでしょうか。
それは、「水」というものに対してアクセスするためのギア(GEAR)であるからです。
このギアがないと、水辺で我々は快適かつ安全に楽しめません。
そのギアとなる道具を常に追究していくことが、我々水辺の案内人の課題であるわけなのですが、
ここアクアスタジオでも、常に道具を選び試行錯誤しながら今日まで活動を継続してきています。
アクアスタジオの始まりも、ある道具を水辺で使おうと思いついたことがきっかけです。
その代表である奥谷崇さんが、防水カメラを発揮する場所として、大阪の水辺に注目したところから始まります。
もともとダイバーである奥谷さんは、水中カメラ専門店「海の写真屋さん」を経営している中で、
「防水カメラをスキューバダービング以外で使えへんのか??」
この疑問から動き始めました。
つまり、海の中という非日常空間でしか使用しない防水カメラを、日常の生活の中で使用するということ。ここに着眼します。
この「スキューバダイビング向けの防水カメラ」というニッチ市場だけでなく、ライフスタイルの中で何気なく防水カメラを使えるものにできるのではないか。そうすれば防水カメラが埃かぶったインテリアとならず、きちんと日常の中で使われていくのでは。
ここから奥谷さんの挑戦が始まります。
日常の水辺ってどこなのかな~という疑問は、奥谷さんの地元大阪に宛てられます。
地図をよぅ見ると、戦後埋め立てられたとしても未だ水路は健在で、しかも大阪の主要部に張り巡らされ、かつ水路を辿ると一周できるコースにもなる。
太閤さんを始め、江戸時代の水運文化のおかげでおもろいコースを発見していったのでしょう。
ここでぷらっとカメラを持って散歩できないのかと、まずは2008年より大阪の岩崎港を基点としたEボートツアー(アクアスタジオではエコボートという)を皮切りにアクアスタジオとして各水辺へと漕ぎ出て行きました。
パドルボード(SUP)を知ったのは、ちょうどこの頃(2008年~2009年)とのこと。
もともとパドルボードの発祥は波乗り(サーフィン)のためですが、
砕波帯(サーフゾーン)を越えさらに沖を航行するツーリング(クルージング)、
そこから派生し都会の水域で簡単な散歩という形でより人々に身近になりつつありました。
以前カヤックもやっていた奥谷さんは、
「このギアならばカヤックと異なり視点がいろいろ変えられて撮影にはぴったり♪」
と実感。早速撮影に向いた安定感のあるボードを探したそうです。
しかし、当時日本では「安定感のあるボード」というものはなかなか手に入りません。
パドルボードは、2000年代では一枚板のサーフィン向けパドルボードが市場のほとんどでした。サーフィン向けのボードは手軽な安定感とは程遠く、ようやく探し出したボード。それは、アウトドアメーカーの日本での代理店を通じてなんとか手に入れた「インフレータブルのボード」(sevylor社)。
「インフレータブルのボード」。
水辺好き、マリンアクティビティ好きには、もう現在ではおなじみとなっていますが、当時として斬新で画期的でした。
なぜなら、空気を注入するとボードと化しますが、空気を抜き収納すると70~90リットルほどのバッグへとなるからです。
一枚板タイプのリジットボードと比較すると、空気を抜き折りたたむことで収納場所にも困らず運搬も楽に行えます。
ただ、普段は陽気な奥谷さんは、一方で常にリスクを考えて行動しているため、ここである疑問を抱きます。
空気で膨らませるインフレータブルのボードというのは、都市河川で有効であるのか。
なにぶん日本の、特に都市部の水域では前例がないため、
パドルスポーツに対して着目していなかった都市河川を管理する行政もきっと同じ考えを持つはずです。特に行政はそのリスクに固執する傾向が強いです。
都市においてあまり見向きもされない水辺という現状で、奇抜なSUPというものを認知させていくには、
まずは「安全に定期的に運営しアピール」する必要がある。
例えば、大阪という地域特有の発信体である「芸人」のみなさんを乗せアピールさせるには、よりどんなアクションにも耐えられるボードが必要であろうと。
※アクアスタジオでは落水率は100人に1人としていますが、その1人がほとんど芸人さんとのこと。芸人さんは毎回落ちるようです。それが仕事。。。
それならばと、次に手にしたギア。それは「liquidlogic社」の一枚板タイプ。
この「liquidlogic社」ボードは、前述したサーフィン向けではなく、安定感のあるシットオントップカヤックをベースにパドルボード向けに改良されたような斬新なデザインです。
簡単に表現すると、立つことが楽にできるカヤック(舟)、でしょうか。
これならば、いろんなアクションに耐え、不安定さという不安要素は払拭されます。
こうして2009年より、2種類のボードを使用し、Eボート(エコボート)と上手く使い分けながら大阪の各水辺にてツアーを開催してきました。
※現在アクアスタジオが購入したEボートは、兵庫運河での水上活動にて使用されている。
Red Paddleとの出会い
さて、時代が進むにつれあるパドルボードという市場の中である変化が生まれてきます。
それは、インフレータブルのパドルボードの種類が2010年代に入り急激に増えてきたことです。
前述したように、「sevylor社」が出している1種類であった2000年代終わりから少し経ち、多くの「インフレータブルのボード」を各社が競うように市場に出してきます。
種類が多いということは、顧客のニーズに合わせて選ぶことが可能となってきました。
その中でアクアスタジオが選び抜いたボード。それが「Red Paddle Co」製のインフレータブルボード。
このボードの突出しているものが、「強度で頑丈」ということです。
これにより、多くの空気を入れることが出来ます。
ほとんどのボードの最高気圧が10~15psiのところ、推奨値20psi(最大値25psi)を入れることが可能です。
多くの空気が入ると言うことは沈まないということです。
ちなみに「sevylor社」は最大12psiまで。
※1気圧は14.7psi。数値がより高いほうが圧力が高くよりボードに硬度が生まれる。
これにより、2つの突出した能力を持ったボードとなります。
1つは、「強度で頑丈」のため、一枚板のように歪むことなく、かつ水の抵抗の影響を比較的受けずストレスなく漕ぐことができます。
もう1つは、「インフレータブルのボード」であるため、折りたたんで持ち運ぶことが可能であります。
ちょうど2009年にインフレータブルのボード(sevylor社)を導入し、
次に一枚板タイプのカヤック(liquidlogic社)を取り入れ、
その長所のみを組み合わせたようなボード。
それがRed Paddle社のボードなのです。
まさに天は二物を与え給うた!
なぜここまで道具(GEAR)にこだわるか。
それは、まず水辺という自然の中で楽しむということは、最低ラインとして「安全面」を考えるからです。
安全面の上に誠実ある運営や魅せる技量、効率アップなどが積まれて行くのです。
特に、多くの人が行き交う大都市であるならばそれを見る目も多く、パドルボードという活動を徐々に認知していただくには、まず「定期的に安全に活動していくこと」。これが重要ポイントであります。
そのためには、まず安全に楽しめるということを活動を通じて発信していくことで、水辺への親しみを増やしていくこと。これが水辺のおもてなしの考え方。
こうして、写真撮影の場(スタジオ)として水辺(アクア)へアクセスする道具探しから、きちんと事業にあった道具を選択し進化したアクアスタジオは、
パドルボードでの水辺活動の普及を特化していくため、2013年11月より「日本シティサップ協会」と名前も変わっていきました。
試行錯誤の末に道具の「選択と集中」をしていった結果、新たな水辺を開くという、まさに幼虫から蝶へと変化していく姿。
この進化も道具というこだわりを持ったからできることなのです。
「Red Paddle」のボードに乗ってみよう♪
そんなアクアスタジオが選び抜き、日本シティサップ協会として引き継いただ優秀なボード「Red paddle」の試乗会を最後にご紹介して、本稿の終わりとさせていただきます。
まずは手軽な「体験会」なんていかがでしょう?
毎週土曜日(第3土曜日以外)には「川の駅はちけんや」(最寄り駅:天満橋駅)にて、
第3土曜日には、「大阪ふれあいの水辺」(最寄り駅:桜ノ宮駅)にてボードに乗ることができます。
時間帯は、10時から15時の間で開催し、
料金は1回30分で1500円です。
体験会アクセス大阪で新たなチャレンジをしてみたい方。
大阪旅行のスパイスとして何か求めてらっしゃる方。
ぜひ水上体験してみてはいかがですか?
関連リンク
日本シティサップ協会ホームページ(今回は前身の「アクアスタジオ」として紹介)
日本シティサップ協会Facebookページ
この記事を書いた人
水主(櫓や櫂による舟の漕ぎ手・「かこ」と呼びます)
NPO法人 横浜シーフレンズ理事(日本レクリエーショナルカヌー協会公認校)
帆船日本丸記念財団シーカヤックインストラクター
水辺荘アドバイザー
横浜市カヌー協会理事
東京海洋大学大学院(海洋科学)在学中に、東京や横浜で海や港のフィールドワークをシーカヤックを通して学ぶ間に街中の水辺の魅力に引き込まれ現在に至ります。 大都市の水辺は、多くの旅人が行き交い賑わう場所で、また自然と対峙するアウトドアでもあります。 水辺をよく知ることが、町や歴史や国を知り旅の深みを増す契機となり、 また水辺の経験により自己を顧みる機会となります。 日本各地において水辺の最前線で活動しているプレーヤーの紹介を通して、水辺からの観光、地元の新たな魅力、 水辺のアウトドアスポットに触れる機会を作っていきたいです。 シーカヤックインストラクター(日本レクリエーショナルカヌー協会シーシニア)、一級小型船舶操縦士、自然体験活動指導者(NEALリーダー)。趣味は、シーカヤック・SUP(スタンドアップパドルボード)スキンダイビング・シュノーケリング・水中ホッケー・カヌーポロ・ドラゴンボート、そして島巡り旅。
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