2026.05.07
水都のポテンシャルを全力活用!貸切船でゆく大阪・関西万博の旅
史上はじめての「海上万博」となった大阪・関西万博の閉幕から半年以上が経ちました。
会場となった人工島・夢洲へのアクセス手段として、海上万博ならではの舟運(定期船)が話題になりました。そんな中、あえて有志で貸切船を仕立てて万博会場へ向かった人々の挑戦と水辺活用への想いを、特別同乗レポートとして振り返ります。
大阪・関西万博を支えた舟運と水辺活用
今回の万博では、会場へのアクセス航路が開設されました。4月の開幕当初こそあまり知られていなかったものの、徐々にその利便性・快適性に注目が集まります。6月末には、一部航路の運賃値下げや旅客船利用者優先入場レーンが設定されたことが大きな後押しとなり、会期後半にかけてはプレミアチケット化する航路も。
アクセス航路には、ユニバーサルシティポートや旧堺港といった近距離便のほか、大阪湾を挟んだ先にある淡路島への長距離便なども開設されました。まさしく「海上万博」にふさわしい会場アクセス手段へと発展したのでした。そうした中で、会期終盤を迎えた9月の祝日、有志による「貸切船」で万博会場に上陸しようという空前絶後の企画が船出します。

万博開幕初日の舟運(ユニバーサルシティポート~夢洲航路)。当時は航路の存在自体があまり知られておらず、まばらな乗船客を乗せての就航となった

会場アクセス航路屈指の長距離定期航路(淡路島~夢洲航路)。淡路島・四国方面からの旅客輸送やパビリオンスタッフの通勤輸送としても活躍した
はじまりは、「水都」と「移動」を愛する心意気から
このユニークな企画は、ある個人の着想から始まりました。発起人は、大阪商工会議所職員の古川佳和さん。万博ガチ勢として、あらゆる会場アクセスを調べ上げた古川さんの「史上初の海上万博なら、船で行くのが一番おもろいやん」という気づきがきっかけでした。
そんな古川さんの背中を押してくれたのは、かつての上司であり、現在は水都大阪コンソーシアムの事務局長として、水辺活用の最前線に立つ松井伊代子さん。松井さんからの「ぜひ船を利用してね」の一言を糸口に、古川さんは博覧会協会が認定する「万博認定航路」の存在、そして定期船だけでなく「貸切船」でも会場アクセスが可能であることを知ります。「それなら、自分たちで船を出せばええやん」と、有志による貸切船企画が始動します。
早速、古川さんはSNSや友人知人を通じて有志参加者の募集に走ります。船の借り上げや運航費用は、すべて参加者の自己負担。それでも、あっという間に定員30名弱が集まりました。地元大阪のみならず、東京や九州からの参加者も。
朝の光の中、中之島から夢洲へ
出航当日の9月23日。まだ少し涼しさの残る午前8時、参加者たちは中之島GATEサウスピアに集まりました。乗り込んだのは、普段は水都クルーズ用として運航されている小型船。しかし、今日だけは万博アクセス貸切船に変身です。
出航の合図とともに、船は堂島川から安治川へと軽やかに進みます。水面には、見慣れた大阪のビル群がいつもより高く、誇らしげに並んでいます。参加者からは、「こうして水の上を走ると、大阪が八百八橋の街だってことが肌でよくわかるわ」「陸路で移動すれば遠く感じるエリアも、水辺を介せば案外近いのも発見や」といったコメントが。そんな会話が自然と交わされるのも、船という空間ならではです。

貸切船の出航場所となった中之島GATEサウスピア。万博閉幕後は、アクティビティスポットとしての活用が進みつつある

船内にて、大阪の水辺活用や舟運の可能性を語る松井さん。多くの参加者が耳を傾けた

万博会期にあわせて、水都大阪コンソーシアム主催の水都大阪かるたデジタルスタンプラリーも実施された(現在は終了)。船上からチェックインを試みる強者の姿も

古川さんらの計らいで、船内では自己紹介&交流タイムも。海上万博ならではのグッズ抽選会も企画され、船内は大いに盛り上がった
変化していく水辺風景、高まる期待感
船が大阪湾へ向かうにつれ、船上からの景色はダイナミックに変化していきます。歴史ある橋や水門をくぐり抜け、いつしかガントリークレーンや巨大倉庫群が並ぶ港湾エリアへ。大阪が持つ多様な水辺の顔を見せてくれます。普段はなかなか立ち入ることのできない「水の道」を通って万博会場へと近づくプロセスは、まさに冒険そのものです。
やがて航路前方には、海に浮かぶ夢洲のパビリオン群と大屋根リングが姿を現してきました。陸路では味わえない、正面から「海上万博」に飛び込むようなアプローチ。船内のボルテージも最高潮に達します。誰もが未来都市の姿を想像しながら、目を輝かせて景色を眺めていました。

いよいよ貸切船は大阪湾へ。ガントリークレーンが力強く並ぶ先に、うっすら大屋根リングが見えてきた

夢洲に近づくと、海上保安庁の警備舟艇の姿も。多くの関係者の努力によって、海上万博の安全・安心が支えられた
水辺が教えてくれた、万博と水都の楽しみ方の可能性
約1時間の船旅を終え、夢洲の浮桟橋に上陸。そこからシャトルバスで西ゲートへ向かい、参加者たちは優先入場枠を活かしてスムーズに会場内へと消えていきました。
今回の万博では、未来の水辺や都市に関する展示・社会実験も多数実施されました。参加者たちは、きっと水辺と水都の未来にも想い馳せたことでしょう。
この日、多くの参加者が揃って口にしていたのは、「移動そのものが万博の一部だった」という言葉です。古川さんの「せっかくなら船を出してみよう」という着想が、多くの人にとって生涯の水辺体験へと変わった瞬間でした。
古川さんとともに、今回の有志企画を幹事として支えた舘林香菜さんは「改めて、舟運の可能性を感じた。とはいえ、安定的・定常的な需要創出は今後の課題。今回の万博でスタンプラリーが人気を博したように、水辺回遊を促す仕掛けも有効では」と、大阪の水辺の可能性を展望していました。

(写真左から)今回の企画・幹事役を担った舘林さん・古川さん・松井さん。無事に夢洲への上陸を果たし、達成感と安堵感に満ちた表情が浮かんだ
万博閉幕から半年近く過ぎた今でも、貸切船から眺めた景色と潮風の香りは忘れられません。今回の企画は、水都大阪が持つ舟運の可能性、水辺が生み出す豊かな体験、そして水辺活用をしなやかに実現してみせる大阪人の存在を、改めて私たちに教えてくれました。
大阪・関西万博を契機に、水辺の魅力がより多くの人々に届き、水辺を活かしたモビリティやライフスタイルが発展していくことを期待せずにはいられません。
ミズベリングは、これからも水辺の魅力を発掘し、その可能性を広げる活動を続けていきます。ぜひあなたも、アフター万博の大阪の水辺を訪れて、新たな発見をしてみてください!
ミズベリング・プロジェクト事務局。都市開発・運輸交通分野の広報・PRプロジェクトに数多く関わる。近年は、水辺をはじめとした公共空間と広告表現のダイナミックなコラボレーションに挑戦中。津々浦々の「おふね」に乗って、まちやくらしの姿を船上から味わうのが大好き。
