2014.11.11
ミズベリング岩原川会議が行われたよ。
盛り上がりを見せた会議の模様をレポート
2014年10月26日 長崎市立図書館多目的ホールで「ミズベリング岩原川会議」が開催されました。これまでたくさんのミズベリング○○会議が各地で行われてきましたが、今回の会議もその地域の実情に即したとってもオリジナルなものでした。
岩原川はかつて市場だった?!
まずは岩原川について。聞き慣れない川だと思いますが、それもそのはず。なぜなら、数年前まで市場だと思っていた場所が川の上だったのですから!
そんな岩原川の現状について早速長崎市役所土木維持課の森尾課長からプレゼンテーション。
岩原川の上にはかつて恵美須市場、大黒市場がありました。戦後の闇市の整理を行った際、長崎市が主導して河川の上をスラブ(コンクリートの構造物)でふたをし、川の上の市場がはじまりました。
設置から半世紀以上が経ち、スラブの強度に問題が生じてきたこともあってふたがはずされることになり、市場は撤去されました。そして現れたのが、戦前の姿そのままの岩原川でした。
市場はなくなり、地域は変化を余儀なくされました。これからこのエリアは、ふたがあいた岩原川をどう活かしていくのか、話し合いが必要となったのです。
ミズベリング岩原川会議の前にすでに市では昨年度、地元とともにたくさんの話し合いを開催してきました。ワークショップを行い、意見を集約しながら、整備後の姿を地域のひとたちと共有してきました。10年後のあるべきすがたを「岩原川エリアみらい計画(案)」として平成25年度中にとりまとめ、それにもとづく岩原川周辺の整備計画を作成しました。
岩原川は、新幹線駅があらたに出来る長崎駅と中心市街地をつなぐ重要な動線になり得ると森尾さんは語ります。
森尾課長 「岩原川では昨年度、5回のワークショップが行われました。市役所があまりに主導的になりすぎるのも問題なので、建築士会さんなどにファシリテーターになっていただいて進めてきました。そしてこれからのまちづくりついて「水と緑と賑わいのある都心のオアシス」という目標と3つの方針をとりまとめ、その結果をもとに設計案へとつなげることができました。3つの方針にもとづいて、われわれは整備はできますが、使ったり活かしたりするのは市民の方々です。ミズベリング的な手法や事例を参考にできればと考えています。」
「川ろう」
国交省水資源・国土保全局河川環境課の田中理佳さんのプレゼンテーションでは、彼女が生まれ育った勝浦の海や川の話からはじまり、中国地方整備局勤務時代の広島などでの川に関する体験が話されたあと、ミズベリングについてお話されました。
田中さん 「これからの河川整備には、「作る」だけではなく、「賢く使う」という視点が重要なんです。いままでは、使ってはダメなものと規制があったのも事実ですが、法整備がされて、使えるように少しずつ変わってきました。方法をこれからの未来をつくりだすためには、川ろう!」と力説されていました。
ミズベリング事務局からは、チーフディレクターの真田武幸氏がコーディネーター、ディレクターで建築家の岩本唯史氏がプレゼンテーションを行いました。各地のミズベリングの事例をご紹介しました。
「地縁コミュニティとテーマコミュニティのつきあい」
「例えば、横浜の水辺では、地元の地縁組織とSUPのようなテーマ型のコミュニティが出会い恊働することによって川の利用機会が劇的に増えて、水辺のまちらしくなりつつあります。利用する者を地元の地縁のコミュニティがどうつきあうかが重要です。」
真田武幸氏からは、妄想から発展するなにかの可能性について言及があり、例えば、首都高を大きなウォータースライダーみたいにしてみるという妄想を画像化したものや、皇居のお堀でコンサートをしている妄想を画像化したものによって人に想像力をかきたてることの重要さを説かれていました。
橋梁デザインのネイ&パートナーズジャパン代表の渡邊竜一さんは、自身の橋梁デザインの仕事においていきなりデザインはせず、まず条件整理から入り、話し合い、方向性をきめるという話をされました。
「デザインは好き嫌いがありますが、市民や利用者を巻き込んで目的を決めて、その目的を満たす力学的要素、デザインを設計によって解いていきます」
ネイ&パートナーズの橋はどれひとつとして同じものはありません、単にかっこいいだけではなくて、地域が欲しているさまざまな条件を解決して
できあがったデザインが地域にとって文化的な意味をもつ橋梁になることを目指しているというお話でした。
休憩をはさんだパネルディスカッションでは、昨年度の岩原川プロジェクトのワークショップ全5回に参加され、今回のミズベリング岩原川会議の実行委員長の溝田さんが、岩原川でマルシェをやりたいとアイデアを披露されました。その後岩原川の魅力や可能性について討議がなされ、この地域を巻き込んですでにワークショップが5回も行われていることに賞賛があったとともに、出来上がっていくプロセスに関与し、岩原川に誇りをもてるようなPRの手法や、利用したり、潜在的に岩原川に関わっていく可能性のある人たちを取り込む「場」の重要性について話がおよびました。また、さまざまな人が関わっていく中で、肩書きをはずして話をしたり、仲良くなったりすることで、立場を超えて地域のことを考えることの重要さなどが話され、閉幕しました。
ミズベリング岩原川会議は、ミズベリング岩原川会議実行委員会によって運営、開催されました。若きボランティアメンバーからの「ミズベリング岩原川のロゴをつくってほしい」という問い合わせがきっかけ実施が検討され、市役所の共催をとりつけて実施されることになりました。
いままでのミズベリング会議はワークショップ形式をとることが多かったですが、実行委員会との話し合いの結果、これまでワークショップを重ねてきた経緯があるのであ、今回はあえて外部からの情報提供と岩原川の持つ可能性を示すこと目的にすることとなり、プレゼンテーションとパネルディスカッション形式を採ることになりました。
後日、岩原川会議に参加した市民の方から「岩原川を活用したい」との問い合わせ寄がせられているとのこと。「これからのミズベリング岩原川会議は、地域住民と岩原川に関心を持つ市民、そして岩原川を管理する長崎市役所が寄り合い、岩原川の活用をより実践的に考える場に発展させたい」と溝田委員長は語ります。
地域の実情にあった長崎ならではのミズベリング○○会議でした。
この記事を書いた人
ミズベリングプロジェクトディレクター/(株)水辺総研代表取締役/舟運活性化コンソーシアムTOKYO2021事務局長/水辺荘共同発起人/建築設計事務所RaasDESIGN主宰
建築家。一級建築士。ミズベリングプロジェクトのディレクターを務めるほか、全国の水辺の魅力を創出する活動を行い、和歌山市、墨田区、鉄道事業者の開発案件の水辺、エリアマネジメント組織などの水辺利活用のコンサルテーションなどを行う。横浜の水辺を使いこなすための会員組織、「水辺荘」の共同設立者。東京建築士会これからの建築士賞受賞(2017)、まちなか広場賞奨励賞(2017)グッドデザイン賞金賞(ミズベリング、2018)