2021.02.26

どうなの?流域治水〜KAWAREL MIZBERING CAMPUS DAY6レポート

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大好評のうちに終了した、公共越境力養成塾 KAWAREL MIZBERING CAMPUS。
最終日だった、DAY6のテーマは「どうなの?流域治水 やらされるを超えて自ら、楽しく、やりたくなることへ」

ミズベリング・ディレクターの滝澤恭平がファシリテーターを務め、ゲストに滋賀県立大学准教授の瀧健太郎さん、国立研究開発法人土木研究所の中村圭吾さんをお迎えしたDAY6。

詳細はこちらの動画(https://fb.watch/3IqeYz0H10/)でご覧いただけますが、今回は、講義の内容を一部抜粋して、キーワードと共にお届けします。

ミズベリング的なムーブメントと流域治水的な方法論が混じり合う未来(滝澤)

まず、今回のテーマである、流域治水、について、滝澤氏から説明がありました。

「流域治水とは、河川管理者だけでなく、流域に関わる関係者みんなで洪水を防ごうというものです。今までの治水の考え方は、川や街の水をできるだけ早く海へ流すという管理が行われていました。ただ、昨今のように気候変動による集中豪雨が多くなってくると、河川に流すだけでは耐えられなくなることも多く起こります。そこで、流域全体で水の浸透や貯留を行い、水をコントロールし、洪水の危険を防ぐ、というのが流域治水の考え方です。

2020年7月に国土交通省は、今後は河川管理者だけでなく、流域に関わる関係者が、主体的に治水に取り組んでいく政策・流域治水へ転換する、と発表しました。

流域が治水に関わる、ということは、その過程で、様々なステークホルダーとの協働や水辺の利活用、は治水とは切り離せない問題になるでしょう。そして、それはまさに、ミズベリングがこれまで直面してきた課題でもあります。
今までミズベリングが直面した課題に流域治水も直面することが予想され、ミズベリング的なムーブメントと流域治水的な方法論が混じり合う未来が予想されます。今回は、専門的なことも交えながら、出水期の来る前の今のタイミングからミズベリング的な流域治水を考えていきます」(滝澤)

ミズベリング・ディレクター 滝澤恭平

川の外での治水を考えないさいと言われて、川の中から出された(瀧)

滋賀県立大学准教授 瀧健太郎

一人目の登壇者、瀧健太郎さんは、滋賀県立大学で、水循環と社会との関係に基づく流域政策・計画を研究されています。以前は、滋賀県で県庁の職員として河川管理の仕事をされており、ある日、県知事から流域治水をするよう言われ、流域治水を「やらされた」そうです。

「滋賀県は2012年に「滋賀県流域治水基本方針」を定め流域治水に本格的に取り組んでいます。私は、県庁の職員として担当していました。流域治水は、川から出て、他部所と連携しないとできないのですが、河川管理における治水上の責任が河川法などで厳密に定められています。「治水は河川管理の役割」だとみんなが考えていたのです。他部所に流域治水の説明をし、協力をお願いしても、「こちらの仕事ではない。治水は河川担当がやれ!」と言われてお終い、だったのです。これが一番厳しかった。」(瀧)

流域治水をやることは決まっている、しかし治水は河川管理の責任、と法で決められている、「もう川の中から出してくれ」と、瀧さんの心の叫びを仲間に発表したスライド。

「そこで、川の外でも治水をできるよう、滋賀県では、「地先の安全度」という指標を作って、水害リスクをわかるようにしました。
「地先の安全度」は、国が管理している川も県が管理している川も、田んぼの水路も街の下水道も、全部引っくるめて、降雨規模別の浸水深などの水害リスク情報をシミュレーションしたものです。」(瀧)

「この指標を作るためには、下水道部局や農林部局など、他部局のデータが必要になります。データが集まれば、シミュレーションできる技術はあります。しかし他部局のデータを集めるのがとても大変で。他部局を説得してデータを集める、部局間を超えていく、というのがとにかく大変でした。」(瀧)



地先の安全度から色々なことがわかる。浸水深、床上浸水発生頻度、家屋水没発生頻度。また、これらを利用すると、どのようにに土地利用したらいいのか読み解けるようにもなる

流域での治水は、暮らしが舞台(瀧)

流域治水は身近な川や水路を守るためにやる、というのがとても大事、と瀧さんは言います。
「長浜市のまち中を流れる米川は、家々のすぐ傍を流れる暮らしに近い川です。たくさんのアユが泳ぐ素敵な川です。護岸を整備し放水路も貯水池も作って、でももうこれ以上河川改修できない状態です。だけど、市街化が進んでしまい局所的な集中豪雨が弱点になっています。一定量以上の雨量だと氾濫してしまう。どうしたらいいのか。そんな時こそ流域治水の出番なんです」(瀧)

治水するために、流域でできることは、たくさんあるそうです。田んぼダム、霞堤、耐水型住宅、高台まちづくり・・・などなど。
その中でもユニークな案が。なんと米川の川の中を歩いてみる、というもの。

「例えば、通勤する時、胴長履いて、川の中歩いて通勤してみる、とか。川底の撹乱すると、アユの産卵床とかの復活につながります。それに、川の中からみる街は、とても素敵なんです。川の素敵さに触れると、流域での治水をしないと、という気持ちになります」(瀧)

米川を歩いてみると、こんなに素敵な風景が

「流域治水はワクワクするもの」と瀧さんは言います。

「川の中の治水はすごく制約が強い(責任が重い)。しかし、流域での治水は、暮らしが舞台、各々のさじ加減で、やりたいだけ、やれるだけ、一人でも仲間でも、いろんなレイヤーで様々なことができる。河川管理者の許可もいらない。どんどん進められるのが、流域治水の強いところ。そしてその活動こそが、グリーンインフラそのものとも言えます。」(瀧)

「治水対策をやりたい」をもたらすのが、グリーンインフラ(中村)

二人目の登壇者、中村圭吾さんは、国立研究開発法人土木研究所 水環境研究グループ河川生態チーム 上席研究員 兼 自然共生研究センター長であり、三次元川づくりの技術開発に関わられています。福井河川国道事務所長時代はミズベリングにも関わられていた、中村さん。流域治水の考え方と、グリーンインフラと河川管理技術の最新知見について、説明いただきました。

国立研究開発法人土木研究所 水環境研究グループ河川生態チーム 上席研究員 兼 自然共生研究センター長 中村圭吾

「持続可能性と流域の管理を考えた時、流域治水とグリーンインフラが非常に重要になってきます。流域治水の課題は、日常性が欠如していることです。そこでグリーンインフラです。グリーンインフラは、治水に日常をもたらすものです。治水対策は多くの人が「やらなきゃ」と思うが、「やりたい」をもたらすのが、グリーンインフラです。そして、その結果として治水整備を早めることにつながります。

そもそも、グリーンインフラとは、「自然の機能を活かしたインフラ整備」のこと。ハード・ソフト両面から、自然環境が有する多様な機能を活用して、持続可能で魅力ある地域づくりを進める取り組みです。インフラ整備から土地利用、しくみ(ソフト)に至るまで、広い範囲で、取り組みがあります。また、グリーンインフラの機能・効果をみるとき、3つの指標から評価できます。1つは防災・減災、2つは環境、3つめは地域振興です。」(中村)

最新技術が流域治水を支える(中村)

「しかし、流域は広く、グリーンインフラで考えることは複雑で多様です。そこで、最新技術を使い倒すことで、コスト自体は小さく、しかしパフォーマンスを最大にした流域管理が可能になってきます。複雑な現象を扱える、河川管理技術が、流域治水を支えているのです。」(中村)

実際に現場でも使われている、流域管理を支える最新技術の事例をいくつか詳しく紹介していただきました。

「グリーンレーザーは、河川を空から航空機でスキャンして、地形が測量する技術です。これにより、河川の詳細な情報が得られ、作業時間もコストも短縮されます。河川の現場では一般的になってきている方法です。
BIM/CIMは、三次元データを活用して、測量から設計、維持管理まで持って行く技術です。この技術を使うことで、これまで難しかった複雑な河川環境を創出できるようになってきました。」(中村)


(左)グリーンレーザー(右)BIM/CIM

また、このような、技術を活用して、新たな合意形成が、可能になりつつあるそう。例えば、川づくりの住民説明会などで、その場で出たアイデアを、リアルタイムで設計に反映・水理計算し、その場で意見を反映したリアルな景観モデルを使って、説明することが、近い将来できるようになるそうです。

また、この他にも、三次元データでの流域管理、都市OSを流域管理への活用など、など様々な河川管理技術の紹介がありました。

 

マネジメントからガバナンスの時代へ(中村)

流域治水をする上でのポイントは何なのか。
「河川管理者は、河川は管理できる、つまりマネジメントとして捉えています。一方で、流域に関しては連携して、巻き込んでやる、ガバナンスなんですね。なので、流域に関しては、皆と連携して、巻き込んでやることが必要になってくる。マネジメントからガバナンスの時代になると思います。そこでのポイントが公共越境力、つまり巻き込む力だと思います。」(中村)

流域ウォーキングしながら治水を考えてみたらどうだろう(滝澤)

三人目の登壇者は、ミズベリングディレクターの滝澤さん。「ミズベリング的流域治水7つのアイディア・フラッシュ」と題し、レインガーデン、エコプールなど、ミズベリング的流域治水のアイデアを紹介しました。

日本旅行作家協会「旅の良書2020」に選出された、旅の作家でもある滝澤氏らしい、流域ウォーキングマップというアイデアも紹介。
「地形を歩く、流域ウォーキングできるマップがあるといいな、と。ハザードマップだと、地域の文化とか載っていなくて、ウォーキングするのには、面白くないんですね。流域の地形や文化を楽しめるようなマップを、流域をウォーキングしながら参加者とつくっていくことができるといいと思います」(滝澤)

また、グリーンインフラのケーススタディとして自身が関わる横浜市の白根地区の渓谷再生事例も紹介しました。

don’t think feel be water〜水になってみよう(滝澤)

最後に、滝澤さんは、ブルース・リー名言「Empty your mind, be formless, shapeless – like water.」を例にあげ、の水というものを理解することが大事、とも説明しました。
「水はどういうものかを感じることが大事。水がどうやって流れるのか、そのイメージを持つ。ミズベリング的には、それをエンタメにしたり、ライフスタイルにしたり、皆で楽しめるよう、これから考えていきたい。」

クロストーク

登壇者の皆さんのプレゼンが終わった後、ミズベリングディレクターの岩本も交えて、クロストークが行われました。
その中でも特に印象的なトークをいくつか紹介します。

治水にとって、貯めることと溢れることは裏表。貯まったところは溢れている。(瀧)

ー「瀧さんのお話を聞いて、今まで、治水において、溢れた後のことを想像するのがNGだったのか、と驚きました。」(滝澤)
ー「河川管理をやっている時は、溢れさせない、が使命だったので、溢れた時のことを話すと、だいたい怒られるんです。最近は、大きな水害もあって、そういうこともあるんだ、と皆さん思ってくれるようになりました。溢れることが想像できる社会に少しずつ近づいてきていると思います。
また、溢れることと溢れさせないことは裏表なんです。例えば、川の中に水が入らないように、田んぼに貯める。田んぼに貯める、ということは、田んぼの横の水路から溢れさせて貯めているんです。支川にとっては溢れているが、本川にとっては貯めていると受け取れる。だから、溢れると貯めるが一緒なんだ、という想像ができると、流域治水全体が見えてくると思います。」(瀧)

自分の専門を越えて、他の領域を勉強して、頭の中で統合していく(中村)

ー「技術の進歩は随分進んでいるな、という印象を受けました。では、使う側の人に、どういう意識があるといいのでしょうか。」(滝澤)
ー「思い切って外に出ていく、が大事だと思います。これまでは街と川を同時に扱うということの概念はあっても、実際にできる技術がついてきていませんでした。今は、複雑な現象を扱える、技術だったり、PCだったり、そういうものが追いついてきた。それが流域治水を支える意味として大きいですね。」(中村)
ー「グリーンインフラでは進めていく上では、異なる領域を巻き込んでいく必要があると思います。どうゆう姿勢であるべきでしょうか」(岩本)
ー「河川だけでなくいろいろな問題が、越境力を必要としている気がします。だから、私は河川屋だから河川のことしか分からない、ではなく、自分の専門を越えて、他の領域を勉強して、自分の中で統合していくのが必要なのではないかと思います。」(中村)

流域治水は喜びとともに(滝澤)

ー「中村さんのプレゼンの中で、グリーンインフラによる治水は、From duty to delight(義務から喜びへ) とあって。今まで治水は恐怖に基づいて進めてきたところがあったが、これからの治水は、喜びとともにやるんだ、っていうことが大転換だと感じました。」(滝澤)
ー「滝澤さんのお話聞いてても、うわ、いいなと思って。ワクワクしますよね。楽しいところから、治水に入っていく・・・ていう。そうゆう視点がなかったですからね。」(中村)

私たちは、河川管理者だけに水のことを押し付けすぎてきた(滝澤)

最後に当日のグラフィックレコードを担当した、関美穂子さんのグラレコを共有しました。一枚目は瀧さん、中村さん、滝澤さんによるプレゼンテーションの内容。2枚目は、当日行われた受講生たちによるミズベリング的流域治水のグループワークの内容を表しています。


「2枚目は、これまで、川のことは河川管理者が背負い、プレッシャーも凄まじかった、それは左端の一人がたくさんの荷物を持っている様子で表しています。しかし、これからは、皆で川のことを考えていく、ミズベリング的流域治水を目指す時代です。一人で負担していた荷物を皆でちょっとずつ持つイメージで描きました」(関)

「私たちは、河川管理者だけに水のことを押し付けてきすぎたのではないかと思います。昨年7月に国土交通省が、流域治水、つまり、治水はみんなでやらないとダメだって言ったのが、すごいこと」と、滝澤さんは言います。

流域治水は、「やらされるを超えて自ら、楽しく、やりたくなることへ」。

今後、流域治水を進めるにあたり、様々なステークホルダーとの協働や水辺の利活用が行われるでしょう。そして、それはまさに、ミズベリングがこれまで培ってきた、他者への巻き込み力、領域を超える越境力が、力を発揮する機会なっていくのはでないでしょうか。

この記事を書いた人

ミズベリング

ミズベリングとは、「水辺+リング」の造語で、 水辺好きの輪を広げていこう!という意味。 四季。界隈。下町。祭り。クリエイティブ…。 あらためて日本のコミュニティの誇りを水辺から見直すことで、 モチベーション、イノベーション、リノベーションの 機運を高めていく運動体になれば、と思います。

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