2020.12.28

川と河川敷と公園は三位一体。あったらいいなを形にした「木伏緑地」

「場の提供」だけでなく、「場の活用」を

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盛岡駅から歩いてすぐ、街なかの川沿いに、とっても素敵な水辺の公園があります。
その公園の名前は、木伏緑地(きっぷしりょくち)。北上川沿いにある、こちらの公園、今年の9月で2019年のリニューアルオープンから1年が経ち、オープン前と比べて、利用者はなんと、2.5倍になったそうです。
今回は、オープンまでの道のりと、1周年イベント「KIPPUSHI 1st ANNIVERSARY FESTIVAL」の様子を紹介しながら、木伏緑地の魅力の理由に迫ります。

木伏緑地はこんなところ

~位置~
JR盛岡駅から歩いて5分。こんな街なかに、北上川とその公園はあります。
公園の名は、北上川沿いの木伏緑地(きっぷしりょくち)。

~事業のあゆみ~
せっかくの好立地にもかかわらず、日常の利用者が少なく、賑わいが不足していることや、公園内に公衆トイレがなかったことが課題だった木伏緑地。
それを改善するために、設置者である盛岡市がPark-PFIという手法で民間事業者を公募し、新たな姿にリニューアルオープンしたのが2019(R元)年9月です。
市としても初のPark-PFIだったため、2017(H29)年5月からマーケットサウンディングを開始して、公募に備えたそうです。(下記の流れ図を参照)
2018(H30)年に公募設置等予定者(民間事業者)を選定し、翌2019(H31)年には民間事業者との協定締結や設置許可などの手続きを行い、事業開始(整備着手)されたのが同年4月ということですから、6か月で整備されたことになります。
最終的に選定された民間事業者は、「ゼロイチキュウ合同会社」。代表の猪原さんへのインタビューは後半をご覧ください。

~木伏緑地の空間構成と点描~
公園入口に設置されている施設案内図をもとに、園内施設と河川敷からの景観をご紹介します。(案内図上の写真番号は合成したもの)

~事業スキームと現在の連携体制~

Park-PFI制度を活用した木伏緑地の事業スキームと、盛岡市・民間事業者・テナントさんの3者で構成される木伏出店者連絡協議会は下記のようになります。


~事業の効果~
リニューアルオープン前後の平日・休日2日間の来園者数調査結果(盛岡市が実施)によると、オープン1.5か月後(R1.10月)には、オープン前(H30.11月)の調査時の2.5倍の利用者数となり、賑わい創出効果が出ている結果となったそうです。
また、利用者アンケート(令和元年10月31日(木)、11月3日(日)実施)結果では、満足度は79%(とても満足+やや満足)、周辺環境との調和は77%(調和している)という回答が出ています。なかなか好評。

~木伏緑地紹介データ~

・公園名称:木伏緑地
・施設名称:木伏(きっぷし)
・場所:盛岡市盛岡駅前通 12 番外地内(木伏緑地)
・敷地面積:0.4ha
・用途:都市公園(都市緑地)、 市街化区域,都市計画公園区域,準防火地域
・公募設置管理制度に基づく木伏緑地公衆用トイレ整備事業の事業者
:ゼロイチキュウ合同会社
・店舗運営:9つのテナント(コーヒースタンド、地産地消レストラン、ジェラート店、ジンギスカン専門店、大衆料理店、焼き鳥専門店、海鮮料理店、クラフトビール専門店、ポテト専門店)
・建設費用:公衆トイレ(28,000千円;市負担)、飲食店等民間収益施設・芝生広場・デッキ等(事業者負担)
・維持管理費用:提案により民間事業者が全額負担

出典:盛岡市公園みどり課作成資料および同市ホームページ

1周年記念イベント開催

オープンして1周年を迎えたこの公園で、2020年10月に「KIPPUSHI 1st ANNIVERSARY FESTIVAL」が開催されました。
もともと「かわまちづくり計画」の登録地区でもあったこの場所に、Park-PFIによる公園施設が加わることで、ミズベリストからも今注目を集める場所になっています。
この施設の運営管理をする民間事業者「ゼロイチキュウ合同会社」の猪原勇輝さんに、イベント終了後、今回の1周年イベントのこと、そして木伏緑地の魅力や『木伏』(猪原さんたちが運営する施設の名称)のこれからなどについてお話を伺いました。

1年間の感謝と
忘れかけていた日常を思い起こしてもらうこと

― ― 1周年記念イベントの狙いは?

今年の11月に予定されていたJR盛岡駅開業130周年記念イベント(木伏も参加予定だった)の開催がコロナ禍で中止になってしまったんですが、もともと木伏では今年の春からは、収益施設の営業にあたる「場の提供」だけでなく、公園の「場の活用」をしたいと考えていたので、とりあえず木伏緑地単独でもイベントをやろうと。それが1周年記念イベントになりました。
イベントの一番の目的としては、1年間の感謝とともに、参加者の皆さんに忘れかけていた日常を思い起こしてもらうこと。だから、大人から子供が楽しめる内容を盛りだくさん準備しました。
メインターゲットは子連れファミリー。もちろん、そこにはおじいちゃんやおばあちゃんも入っていますよ。コロナ禍にも関わらず2日間で、9,200名の参加者がありました。
当日は駅前商店街で開催されていた「100縁市」そして材木町の「よ市」の開催と重なっていたので、3つのイベントを回ってこられた人もいますね。
駅前商店街と材木町は少し離れているのですが、その中間に位置する木伏が、ちょうど3つのイベントをつなぐハブ的な役割を果たせたと思います。
木伏のテナントは周辺地域の方にとってみればオープン当初は新規参入者でしたが、今では地元の商店街振興組合にも加入し、地域の仲間としていい関係になってきていますよ。

反応は予想以上!めちゃよかったですよ!

― ―「一般来場者」の反応や感想はいかがでしたか?

2日間のイベント当日よりも、イベント後に各店舗を訪れるお客様から「次はいつやるの?」「クリスマスマーケットやって欲しい!」など、イベント参加者の反応を直接聞くことができました。イベントをやってその場で終わりでなく、日常的に常設店舗があるからこそ参加者のリアルな声を継続的に拾えるというメリットがありますね。

河川敷という屋外で体を動かす気持ちよさを感じてもらいました

― ―河川敷で「アクティビティ体験に出店された方」の感想・反応は、いかがでしたか?

スケートボードやボルダリング体験を展開してくれた彼らは、花巻市から来てくれたんですが、通常は屋内で活動しているので、河川敷という屋外空間でやったのは気持ち良かったという感想でした。
参加者も、気軽なスポーツに触れるいい機会になったようで、体を動かす楽しさを感じて、機会があればまたやってみたいという方もいましたよ。

 よくキャンプする人にとっても、「新鮮な非日常体験」だったみたいです

― ―河川敷の「まちなかキャンプに参加された方々」の感想・反応は、いかがでしたか?

普段はいわゆるキャンプ場のようなアウトドアシーンでキャンプしている人々にとっては、駅に近く、川に近く、飲食店が隣接していて、少し行けば銭湯にも入れるようなこの場所は、まさに「キャンパーにとっての非日常体験」を味わえる環境として、新鮮だったようです。大自然の中のキャンプとは違って、家から気軽に来れるし持ち込む荷物も含めスケールダウンのライトさが良かったんじゃないですかね。
河川敷でのまちなかキャンプは、まだ社会実験の段階なので、大きくは情報発信せず、参加申込者は情報発信したSNSを見て、申し込んできてくれた人たち限定でした。
PARK-PFIの民間事業者である私たちとしては、木伏の運営資金の一環として、1グループテントごとに木伏のトイレや飲料水などの使用料も含めた場所貸し代をいただいています。利用者からは、洗い場が欲しいとかごみ処理できる場所があるとよいなどの声が聞こえてきましたね。

 もっと「場」表現の質を上げたいですね

― ―今回のイベントで「改善点」があるとすれば?
イベント開催の経緯が急な展開だったので、とにかく準備期間がなくテナントオーナーで構成した実行委員会の人的・資金的負担が大きかったですね。今後は準備期間をしっかり取り運営スタッフを増やすなどしてもっと「場」表現の質を上げたいですね。

木伏緑地でのこれまでと、コレカラ

ここでビールを飲めたら最高にきもちいい!これだけ

― ―木伏緑地でPark-PFIに取り組もうと思った「きっかけ」は?
平成28年(2016年)の岩手国体で炬火リレー出発式も行われた木伏緑地で、その頃から何かできないかなあ、とずっと考えていたんです。「ここで北上川を見ながらビールを飲めたらきもちいいだろうな」って。でも、都市公園内に建てられる施設の建蔽率の制限を調べると、当時それはなかなか難しかった。
そんな思いを後押ししてくれるように、平成29(2017)年にPark-PFI(公募設置管理制度)ができたわけです。私は過去にリノベーションスクールやリノベーションスタディにも参加していて、事業についてリスクをとることや補助金を使わないことは、頭からきめていたので、とりあえずやるしかないと考えて応募したんです。

地域との連携と周辺派生、地域のハブになることを目指したい

― ―木伏緑地の運営をしているなかで「配慮していること」はありますか?
今後もやっていきたい周年記念イベントでも、今回盛岡駅前と材木町で同時開催されていたイベントをつなぐ役割を果たせたように、地域をつなぐハブの役割を意識しています。
木伏緑地の公園内には余白としての芝生広場もあるので、定期的に地域の方々や市民の皆さんに、ぜひともこの場を使ってもらいたいと考えています。
木伏緑地側も利用を希望する方々に気持ちよく使ってもらえる環境を整えておくために、営利目的と非営利目的では異なりますが、維持管理に充てるための使用料は設定しているんですよ。

木伏は、「川」と「河川敷」と「緑地」を三位一体的に活用する

― ―木伏緑地とその周辺で「これからやりたいこと」、「構想」、「夢」はありますか?

この場所は、北上川と河川敷と緑地が何といっても魅力ですから、Park-PFIに募集するときから北上川と河川敷を含む一体で構想図を描いていました。
水上ではカヤック、河川敷ではまちなかキャンプに加えてサウナ、屋外映画会、キャンドルアートなんかもやりたいですね。将来的にはカヌー教室ができればさらに良い。
現在(2020年11月)国交省のかわまちづくりの事業の一環で、木伏緑地前の河川敷では船着場や川にスムーズに下りられるスロープの整備が始まっています。この施設は、今後水上アクティビティをより豊かにしてくれるのではないかと期待しています。

結局、無いものは自分でつくるしかないってとこに行き着く

― ―最後に、ここまで猪原さんを動かしている「原動力」は何ですか?

木伏緑地も、あったらいいな、を自ら形にした結果です。無いものは自分で作るしかない。
まずはスピード重視でとりあえずやってみる。ダメなら改善。これが大切かな。行政は特にだけど、とにかく構想に時間をかけてその時に考えついた理想の完成形でスタートしたがる。
魅力を育てることに重きを置いてないから持続しないことも多くて、社会情勢の変化にもめっぽう弱い。結局のところ事業のピークが開業時だったりすることも多い。
今後、木伏緑地利用の活性化策では、河川敷でのキャンプなどの利用以外に、公園内の広場や常設屋外キッチン(公園敷地の西側に設置)の場所貸しなどを考えています。

(猪原勇輝氏)

【インタビューを終えて】
もともと北上川の盛岡地区は、2009(平成21)年度から始まったかわまちづくり計画の登録地区で、地域住民の方々と行政がしっかり連携して、川の整備や活用をしてきた土壌があります。そこに、地元盛岡出身の民間事業者が運営管理する公園施設が加わり、まさに老若男女誰もが水辺に親しめる場所として『木伏』ができたことを、実感しました。

今年度(2020年度)中には、木伏緑地前の河川敷に船着場やスロープが完成予定とのこと。公園と河川敷と水面という、三位一体の空間を使った複合的活用に拍車がかかりそうです。猪原さんの最初の想い「水辺でビールが飲めたらいいな」は、陸域を飛び越えて、近いうちに水上(舟上?)でビールを飲めるようになるのではないでしょうか。木伏緑地からは、「水辺」に加えて「水上」でも様々なアクションが湧き出してくる予感がします。

読者のみなさまへの緊急打電
“モリオカニ ミズべリングイチダイキョテン アラワル”
“コレカラモ マスマスメガハナセナイゾ 『キップシ』”

この記事を書いた人

宮下幸彦

長野県生まれ。諏訪湖のほとりで遊んだ原体験が、今も水や緑への憧憬の源泉。東京で建設コンサルタント会社に勤めてはや30数年。風の人として、公園、川、水源地などで環境文化創造を目指し、土の人として、公共空間を楽しむプレイスメーカーを目指す。

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