2021.11.09

川の国埼玉へ ~埼玉県の川の再生の取組について~

はじめに

実は、埼玉県は豊かな川をもつ「川の国」です。この価値ある資産を活用して「川の国埼玉」を目指し、川の再生事業に取り組んでいます。これまでの取組と令和3年度から新たに着手した、民間事業者と連携しオーダーメイドのように川の整備を行う「Next川の再生・水辺deベンチャーチャレンジ」を紹介します。

埼玉県の川のポテンシャル

埼玉の川のポテンシャルとして有名なのが川幅日本一。秩父を源流とし、県の中央を流れ東京湾にそそぐ荒川はその中流(鴻巣市と吉見町の境)で川幅約2.5kmとスカイツリー3個分の川幅を有しています。これは「秘密の県民・・・」など、よくテレビで取り上げていただいてるネタで、「どこが川幅なの?」という話題の場所です。初めて聞いたという方は「川幅日本一」で検索してみてください。
もう一つが県土に占める河川面積の割合が3.9%で全国2位。こちらも絶妙な指標ですね。かつては日本一を誇っていましたが、他県の算定の見直しにより現在は2位に陥落してしまいました。

川幅日本一の標

埼玉県の川の再生事業

それでも「埼玉は川だらけで川幅日本一」というポテンシャルを生かし、「海はないけど日本一の川がある」を合言葉に、平成19年から「川の再生」に取り組んできました。まずは「清流の復活」と「安らぎと賑わいの空間創出」の2本柱で、短期間に100箇所の水辺を再生し、確かに変わった姿を見せる「水辺再生100プラン」、平成24年度からは上流から下流まで川をまるごときれいにしちゃう「川のまるごと再生プロジェクト」、平成28年度からは市町村のまちづくりや観光振興と連携し、川に賑わいを創出する「川の国埼玉はつらつプロジェクト」と3期12年のプロジェクトで実施してきました。

埼玉県の川の再生

埼玉県が取り組む河川空間のオープン化「水辺空間とことん活用プロジェクト」

国の規制緩和を活用し、河川敷地で民間事業者が営利活動を行うことができる、いわゆる「河川空間のオープン化」、これを埼玉県では「水辺空間とことん活用プロジェクト」と称して平成25年度から進めています。令和3年10月現在の開業箇所は14箇所、箇所数では東京に次いで全国2位となっています。活用形態は、主にバーベキュー場が多いのですが、埼玉スタジアム2002に隣接するイベント広場や秩父・荒川のバンジージャンプ、ときがわ町・都幾川のグランピング施設、狭山市・入間川のスターバックスコーヒーなど素敵な場所が続々と誕生しています。

左:秩父ジオグラビティパーク(荒川・秩父市)、右:スターバックスコーヒー狭山市入間川にこにこテラス店(入間川・狭山市)

Next川の再生・水辺deベンチャーチャレンジ

令和3年度からは、川の再生事業箇所の利活用や維持管理の持続性を担保するため、新たに計画段階から民間事業者等が参画し、経済によって良好な河川環境を維持するスキームの「Next川の再生・水辺deベンチャーチャレンジ」に着手しました。

(1)背景・目的

本県が取り組む「埼玉版SDGs」では、重点テーマの1つに「埼玉の豊かな水と緑を守り育む」を掲げ、豊かな自然と共生しながら持続的に発展する埼玉の実現を目指しています。
河川は、洪水から生命や財産を守る治水機能や生活に必要な水を確保する利水機能を担うだけでなく、多様な生物をはぐくみ、人々の生活に潤いをもたらす河川環境としての機能を有しています。そこで、環境、社会、経済の三側面から豊かな自然と共生しながら持続的に発展する埼玉を実現するため、地域や民間事業者等と連携した新たな川の再生を推進します。

(2)事業の概要

河川空間の利活用について、新たに企画段階から民間事業者との連携を強化し、より魅力ある水辺空間の創出を図ります。利活用の内容については、県や市町村、地域住民、民間事業者等で構成する利用調整協議会で検討を行ない、協議会で合意したプランに基づき整備を進めます。事業のイメージは、これまでの川の再生事業(ハード整備)と水辺空間とことん活用プロジェクト(ソフト事業)を同時に推し進める感じになります。
県は河川管理施設を民間事業者の意向に沿ってオーダーメイドのように整備し、民間事業者は営業施設を整備、運営します。市町村は河川敷地の占用や地域活動の支援を行い、地域住民は美化清掃などの地域活動を行うスキームです。民間事業者は、周辺河川の維持管理を行うとともに、市町村などと連携し、地域活動をサポートします。

(3)民間事業者と市町村のマッチング

Next川の再生・水辺deベンチャーチャレンジにおいても、地域振興が大前提で河川を利活用するという「水辺空間とことん活用プロジェクト」のスキームはそのまま継承しています。そのため民間事業者と市町村とのマッチングは特に重要なポイントになります。
民間事業者は地元に根差して活動する企業のほかに、埼玉版SDGsで設置した「埼玉県SDGs官民連携プラットフォーム」や「SAITAMAリバーサポータープロジェクト※1」に登録した企業サポーターなどと埼玉版SDGsの作業部会等を通じて意見交換を行い、活用したいフィールドや提案内容を確認した上で、市町村とマッチングを行い、新規の候補箇所を発掘する事例もあります。

※1…埼玉の豊かな川を育む自発的な活動が持続的に行われるよう、県民・団体・企業の取組を県が支援していくプロジェクト

最後に(個人の感想)

Next川の再生・水辺deベンチャーチャレンジは、まだ着手したばかりで具体的な成果は出ていませんが、オーダーメイドの川づくりは、かなりチャレンジングな取組です。県が整備する施設は、河川施設としてどこまで民間の要望に応えられるのか、オシャレさなどの見栄えも含めて、具体的な整備をどこまで県が踏み込んでいけるのかがとても重要だと考えています。そのため民間事業者や市町村、地域住民ときめ細かな調整を図り、地域に受け入れられ、しっかりと収益性の上がる持続可能な事業計画を立てなければなりません。その辺は担当者としても知恵の絞りどころ、腕のみせどころなので、プレッシャーはありますが、とてもワクワクする事業です。
最後に決意表明として、皆様、これからの埼玉県の新たな川の再生にぜひ注目してください。しっかりと成功させて名実ともに「川の国埼玉」を実現してまいります。
(あそこで成功させてミズベリング大賞をいただきます。ムフフ。)

この記事を書いた人

埼玉県県土整備部河川環境課主幹

石野剛史

埼玉県県土整備部河川環境課主幹 平成6年4月埼玉県入庁 平成19年度からの川の再生プロジェクト立上げから川の再生基本方針の策定、「水辺再生100プラン」モデル箇所の検討、平成25年からの「水辺空間とことん活用プロジェクト」関東初開業、平成28年度からの「川の国埼玉はつらつプロジェクト」のスキームづくりなどに携わり、令和3年度から現職。個人では地元埼玉県越谷市にある「みずべのアトリエ」代表として元荒川の水辺で様々な地域活動を実施。埼玉県の水辺とビールめちゃくちゃ愛する変人。趣味は水辺で乾杯!

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