2018.05.22
この5年で変わったこと、変わらなかったこと
「ヌマヅのミズベ」2013 ⇒ 2018
ミズベリングかのがわ会議や、風のテラスでのバーベキュー、カヤック事業などの創出など、2013年から積極的にミズベリング活動を繰り広げてきた沼津市の上土(あげつち)地区。ミズベリングの先輩格として日本をリードしてきた沼津は5年経ってどうなったのか。なかから見てきた沼津市役所職員の半藤和重さんがレポートしてくれました。
5月5日こどもの日。
沼津市の中心市街地を流れる狩野川のほとりには、様々な人たちが休日を楽しんでいた。
左岸の狩野川緑地では「こいのぼりフェスタ」が開催され多くの親子連れでにぎわい、右岸の階段堤「かのがわ風のテラス」では飲食のお店が軒を連ね、隣のエリアではBBQを楽しむ人たちもいた。
水面にはいくつものカヤックやSUPが浮かび、楽しそうにパドルを漕いでいる。
かつて思い描いたような休日の狩野川での憩いの風景がそこにあった。
今ではごく自然に、当たり前のように見えるこの狩野川の景色も、河川空間という制限の多い場所をもっと開かれた、使える場所にしていこうという取り組みの積み重ねが生み出したものだ。
水辺の景色をつくってきた5年
5年前の5月連休。
ここでは県内初の民間事業者による「水辺のオープンカフェ」が開催され、先進的な取り組みとしてメディアなどでも話題となった。
国や市などが「開かれた水辺」に向けた実証実験として位置づけることで可能になったもので、並行して「ここをどのように、どう活かしていきたいか、どういう仕組みとするか」が官民交えた研究会にて話し合われた。
当時、自分もここに関わらせてもらった一人だ。
各種の仕掛けを実証実験として回しながら議論し調整する様は、まさに試行錯誤、走りながら考える日々であったように思う。
わずか1年で「開かれた水辺」利用の仕組みである協議会が発足し「かのがわ風のテラス」が本格的に始まった。
あれから5年たった今、仕組みはある程度定着し、実証実験から始まった水辺のBBQなどの各種の取り組みも形を変え続いている一方、新しい動きも生まれてきているように見える。
一時は移転していた恒例の「こいのぼりフェスタ」も狩野川に帰ってきたが、これは水辺利用との相乗効果が生まれたことや、狩野川のシンボルイベントとして帰ってきてほしいとの各方面からのラブコールが実った形だ。
協議会の発足後に「かのがわ風のテラス」を舞台に新たに生まれたフライベントや音楽イベントなども回数を重ね、独自の発展を続けている。
リノベーションや公民連携の流れの中からは狩野川周辺の不動産物件を活用しようという動きも生まれている。
良い意味で変わり続けている、動き続けているという印象だ。
5年経っても課題はある
変わらないこともある。
当時から課題と言われていたことは、いまだに課題のままだ。イベント時には人が集まるものの、日常的に人が立ち寄る場所にすることがなかなかできないこと。
活動するプレーヤーがまだまだ限られていること。公共的な資金援助なしにイベントや事業を回していく仕組みがなかなかできないこと。快適性や利便性を高めるハード的な整備になかなか踏み切れないこと。また、ここから情報発信していくチカラも弱い。
これらの課題については、結局のところ狩野川だけを見ていても解決できないだろう。
川をもっと楽しく心地よい空間にしていくには、同時に隣接するまちも楽しい場所にしていかなければ人は訪れないし、川を発信していくには、川を取り囲むまちも発信していく必要があるだろう。
目新しさの時期が終わり、次は川とまちにどんな楽しい未来を描き、それに向けて進んでいくかを考える時期に来ているかな、と感じた5月の連休であった。
この記事を書いた人
沼津市役所に2000年(平成12年)入庁。 2013年(平成25年)、商工振興課在籍時に「狩野川活用研究会」事務局の一員として「かのがわ風のテラス」の誕生に立ち会った。 現在は担当を離れているが、「かのがわ風のテラス」や沼津のまちが楽しい場所になるよう引き続き見守っているところ。 43歳
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