2015.10.17

水辺のポテンシャルは圧倒的だった!TAISHOリバービレッジの挑戦

大正らしさ”を追求して水辺の魅力を創出するプロセス

水都大阪の水辺に今年、あらたに存在感をみせた、大正区のTaishoリバービレッジ。そもそもどういう取り組みだったのか、キーパーソンの大正区長、筋原章博さんに聞いた。(聞き手=ミズベリング・ディレクター岩本唯史)

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区長室でにこやかに対応してくださった筋原区長
岩本唯史
今年6月からはじまったリバービレッジの取り組みについて教えてください。

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にぎわうリバービレッジの様子(画像提供:大正区)
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Taishoリバービレッジは、大正区の北の端、尻無川の河川広場でおこなわれている社会実験事業で、地域活性化策「(仮称)大正区尻無川河川広場エリア活性化プラン」を策定するためのマーケティング調査を目的としています。この河川広場の対岸には、年間200万人訪れる京セラドームがあります。ただお客さんはいままで大正駅を降りて素通りしてしまっていたのですが、そのポテンシャルをどう活かすか、という議論の過程で、この河川広場を活かすということになり実施を計画しました。今年の2月に、河川管理者から河川法準則特区の指定を受けました。

Taishoリバービレッジが開催されている河川広場。南側に大正駅、北の対岸に京セラドームがある。
岩本唯史
準則特区というのは、平成23年3月に改正された河川法の河川占用許可準則の22条(リンクはPDF)にうたわれている、区域指定のことですね。
sujihara
はい。実施にあたって、「川と海のまち・大正区に忽然と現れた、南国リゾートムードの秘密基地」をコンセプトに、日本バーベキュー協会監修によるスマート・バーベキュー(手ぶらでこれるということ、エコグリルを使う)、船着場を暫定設置してクルーズ事業を展開、また週末は屋台グルメブースという3つの事業を柱にしています。そのほかレンタルサイクル(土日のみ)、地元のインフォメーションセンターも併設し、一ヶ月の社会実験として当初はスタートしました。
岩本唯史
スタートは上々だったと聞いております。
sujihara
当初はたくさんのメディアに取り上げていただいたりしてたくさんの人にお越し頂きくことができました。屋台スペースは土日、11:00~23:00まで開催し週代わりでテーマを決めて屋台を呼んだのですが、好評でした。クルーズ事業もPier34による動力船のクルーズ、日本シティサップ協会によるSUP体験、日本初川でできるようになったジェットパックなども大変好評でした。
ムードいっぱい、夜のリバービレッジの様子(画像:(有)ハートビートプランウェブサイトより)
ムードいっぱい、夜のリバービレッジの様子(画像:(有)ハートビートプランウェブサイトより)
水辺のスマート・バーベキュー(画像:(有)ハートビートプランウェブサイトより)
大正クルージング(画像:(有)ハートビートプランウェブサイトより)
12086973_635870509888853_1400044815_nオープニングでのジェットパックの様子
岩本唯史
当初は7月までの社会実験だったとお伺いしていましたが、延長されましたね
sujihara
はい。一ヶ月間に約14,000人のお客様にお越し下さいまして、好評だったこともあり、また課題抽出をいっそうおこなうという目的で開催期間を延長させていただきました。ただ、夏場に入って気温があがると、とたんに客足が遠のいて厳しくなりました。バーベキューの営業時間を夕方からに変更するなど柔軟に対応させていただきましたがいい経験を得ることができました。
岩本唯史
このような社会実験を通してどのようなことを感じられたのか気づきを教えてください。
sujihara
水辺のポテンシャルはやっぱり圧倒的だと思いました。
社会実験終了後の実際の事業者の公募にむけての手応えをつかむことができました。行政としては今後、柔軟にインフラ整備などに対応していこうと思います。
岩本唯史
インフラ整備とは?
sujihara
こちらの河川広場にはインフラがなにも整備されておらず、下水や水道、電気など引かなければならないのですが、今回の実験を通じて、どのグレードのインフラが必要なのかということがおぼろげながら見えてきた、というのは収穫です。行政側としては、公募される事業者さんによって柔軟に対応していきたいと思っています。
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にぎわうリバービレッジ
岩本唯史
この社会実験事業の取り組みのひとつの特徴でもある、エリアプランニングについて教えてください
sujihara
この事業は、実はこの河川広場の利用にとどまらず、陸側との関係や中之島漁港などの他の水辺のエリアとの関係性も重要だと考えていて、それが地域の魅力作りにつながると思っています。それがこの河川広場を核にしたエリアプランニングの考え方です。
今回この社会実験事業をおこなってみて、地域の水辺、ということをものすごく考えました。大正区の陸地と尻無川は高い堤防で仕切られているのですが、大正区にお住まいの人たちからすれば、水辺が盛り上がっていても生活エリアから切り離されたどこかべつの場所のことだと思われかねないのです。ターゲットである京セラドームのお客さんを相手にしてSUPやクルーズなどやっていることが、下手すると地域のひとたちからしたら関係のないことのように思われてしまいかねない訳です。
今回の実験を通してさらに確信したことは地域に愛される水辺を目指すべきだということです。地元のひとも水辺に親しんでもらって飲んで食べて、イベントのときには地域のお店に屋台をやってもらって、その屋台にお客さんがついたら、地域のお店にまたお客さんが増える、というような循環を生みたいと思うようになりました。地域との一体感をどうつくりだすのか、というのが見えてきた課題です。
事業者公募のときに、地域との連携をどのように入れ込むか、ということは課題ですね。
岩本唯史
事業者公募はいつされるのですか?
sujihara
来年の常設事業開始に向けて、今年の冬以降、インフラなどの調整状況を見ながら出来るだけ早く公募に取りかかりたいと思っています。
岩本唯史
その他の課題を教えてください。
sujihara
今後大正区ではこの河川広場だけではなくて、下流側にむけても特区エリアを広げていければいいなと思っております。大正区の魅力が水辺をつなげていくことでさらに高まるといいなと思っているのですが、問題は、河川は規制緩和されて今回の社会実験のような取り組みができるようになったのですけれども、そこから海側の港湾がまだ仕組みがないんです。国家戦略特区のような仕組みを使えばいいのかもしれませんが、いずれにしても課題だと思っています。
そんななかでいいニュースもあって、11月に有名な壁紙屋さんが本社を大正の水辺に移してくれるということを聞いています。「ここは大阪のブルックリンだ」といって気に入ってくださっていて、リノベーションで有名な設計事務所さんがかっこいいスペースに設計してくれていると聞いています。この本社のなかに地域に開放した小さな公園も作ってくださるそうです。こちらの敷地は大正区が持っている臨港緑地と続き地になっていることもあって、大正区が間に入ってなにかできないか、考えています。例えば臨港緑地から桟橋をつくって船着場として舟運の拠点にすることができたら素敵だと思っています。
また、大正のオリジナリティをどう出していくか、ということも課題だと思っています。中之島とおなじことをしても太刀打ちができないので、大正らしさというのを水辺のまちをつくっていくなかでどうだしていくか、そして先にも述べましたがどう地域とつながっていくのか、というのが大正らしさにつながると思っています。
岩本唯史
それはすごい話ですね。
最後に、僕が大正区に始めてきて筋原さんにお会いしてから1年ぐらい経ちますけど、壁紙屋さんが移転されるようになったことのように、この期間水辺を盛り上げてきて感じられた変化がありましたら教えてください
sujihara
最近駅前に、若い人がお店を出してくれるようになりました。いままでは大正と言えばいわゆる飲み屋さんぐらいしかなかったんですけど、こういう活動が功を奏して若い人にとって「出店してもいい街」に少しずつ変わってきたんじゃないかと思っているんです。大正の魅力をつくる活動はまだまだ続きますけどね。
岩本唯史
どうもありがとうございました。
事業名称
Taishoリバービレッジ
開催期間
平成27年6月6日(土)〜10月18日(日)
営業時間
平日/午後5時〜午後11時、土日祝/午前11時〜午後11時 / 原則無休
※雨天でも営業しますが、荒天の際には中止する場合があります。
またイベント等により、営業時間が変更になる場合があります。
あらかじめご了承ください。
主な実施内容
日本バーベキュー協会の監修によるスマートBBQ&レストランカフェ/期間中毎日
水辺のアクティビティ(小型船によるクルージング等)/土日に実施
屋台グルメブースの出店/主に週末に実施   …etc.

*ジェットパックの画像をOPEN-Aの大我さやかさまよりご提供いただきましたので、追加させていただきました。2015.10.18

大正リバービレッジ開催の報道発表(大阪市)2015年5月
大正リバービレッジ公式サイト
大正リバービレッジ、期間延長の報道発表(大阪市)2015年7月
尻無川河川広場を中心とした地域再生事業(大正区)

この記事を書いた人

ミズベリングプロジェクトディレクター/(株)水辺総研代表取締役/舟運活性化コンソーシアムTOKYO2021事務局長/水辺荘共同発起人/建築設計事務所RaasDESIGN主宰

岩本 唯史

建築家。一級建築士。ミズベリングプロジェクトのディレクターを務めるほか、全国の水辺の魅力を創出する活動を行い、和歌山市、墨田区、鉄道事業者の開発案件の水辺、エリアマネジメント組織などの水辺利活用のコンサルテーションなどを行う。横浜の水辺を使いこなすための会員組織、「水辺荘」の共同設立者。東京建築士会これからの建築士賞受賞(2017)、まちなか広場賞奨励賞(2017)グッドデザイン賞金賞(ミズベリング、2018)

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