2014.10.17

“ものづくりびと”大集合!
多摩川もみじ市に行ってきました。

河川敷が“ものを作る人”と
“使う人”がふれあう出会いの場に

多摩川は秋の風物詩…と言えば「もみじ市」。
全国から陶芸家やから料理家、音楽家、農家まで、さまざまな “ものづくりびと” が集って
多摩川の河川敷で2日間だけ開催する青空市。

こだわりあるお店の数々、美味しいご飯やパン、ライブや映画まで楽しめる
まさに「大人の文化祭」という名称がぴったりの「もみじ市」は、
はじめは仲間内で始まったイベントでしたが、
口コミで広がっていまでは毎年2日間で約2万人を動員、
国内は北海道から沖縄、最近では台湾からもお客さんが来るとか。

今年参加した”ものづくりびと”は、なんと100組。
どんなイベントなのか、初参加してみました。

もみじ市の入り口はこんな感じ。
河川敷なので囲いはなく、誰でも自由に出入りできますが、
遊園地のゲートをくぐるみたいで、わくわくします。

子どもから大人まで夢中にさせるボタン屋さん「sunomoto」。
にぎわう店舗の後ろには多摩川が流れているという、ちょっと不思議な光景です。

羊毛フェルト製のアクセサリー「feltico 麻生順子」。

「店舗自体も作品なのでは?」と思ってしまうくらい
完成度の高いお店が多く並ぶのが、もみじ市の人気の理由のひとつ。

もみじ市実行委員であり創立メンバーの手紙舍・北島勳さんに聞いてみると、
その秘密はふたつありました。
ひとつは、公募制ではなく「キュレーション制」をとっていること。
公共の場所で開催するイベントだからと言って公平性を担保するより、
ものづくりの目利きである主宰者側が責任をもって出店者を選ぶことで、
イベント自体のカラーや質が保たれ、形作られている点です。
それが、ものづくりをしている人にとっては「いつか“もみじ市”に出たい」という憧れにつながったり、毎年足繁く通うファンのお客さんのハートを掴んでいるのではと思いました。

もうひとつは、その丁寧な企画準備体制にありました。
実行委員が出展者をセレクトした後は、
出展者それぞれに担当スタッフが付き、
出展作品やお店のディスプレイ方法、デザインまでを
半年間かけて話し合い、じっくりと企画していくのだそう。
スタッフと作家さんが、二人三脚で一緒に企画をして、
出展作品の精度を上げていく……という、まさかの「担当マネージャー制度」!
なんだかまるで、漫画や小説の作家さんのやる気を引き出す担当編集者かのような関係性。

そういえば手紙舍のコアメンバーは、皆さん雑誌編集者だったんだっけ……と思い出して、
思わず頷いてしまいました。

たとえば左藤吹きガラス工房の左藤さんは、今年で5回目の出店。
「もみじ市は他の企画展とは違って、一度選ばれて呼ばれると、次回以降もずっと呼んでくれる。だから、自分が頑張れば、全体のクオリティも上がるというモチベーションがある。
出展者も主催者のひとりという気持ちになれるのが大きいですね」と話してくれました。

……とはいえ、河川敷というオープンスペースで開催するだけあって、
「教養ある一部のハイセンスな人たちのための市場」という敷居の高さはありません。
ステキなモノは好きだけど、
ものづくりの知識も造詣もほとんどないという私のような人間や
子ども連れでも楽しめる企みも、もりだくさん。

紙芝居や

ハンモックに、

木製彫刻の動物園は子どもたちに大人気。

会場中央には四面体の黒板に
愛する人へのラブレターをチョークでしたためる、
ラブレターボックスも。

わたしも書いてみました。
最後にチョークで落書きしたのって、いつぶりだろう。

乙女な女子が列をなしていたのは、
即興で生花とドライフラワーを髪に生けてくれる「Tiny N」。

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10分程度で生け花を美しくあしらってくれます。
ステキな母娘のおふたり。

もみじ市ではフード屋台も
いい品&美味しいものが勢揃い。
しかし、出遅れてしまったようです。
もみじ市名物「うずまきちゃん」こと、「成城・城田工房」の炭火焼3連ソーセージは、
午後1時過ぎには既に売り切れ御免で残念無念….。また来年リベンジします!

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……このように、「ちょっといいもの」が宝箱みたいに詰まった、夢のような時間でした。
これだけたくさんの人が集っても、ゴミやトラブルがとっちらかったり、
カオスにならずに、ゆったりといいものを慈しむ時間と空間が保たれているのって、
すごいなと思いながら帰路につきました。

今年記念すべき10回目を迎えた「もみじ市」の主催者・手紙社の
北島勲さんとわたなべようこさんに話を聞きました。

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「もみじ市」開催のきっかけを教えてください。
北島勳さん
もともと僕たちはものづくり系の雑誌の編集者で、周囲には、作り手の方たちがたくさんいました。それで好きな作家さんの作品を集めて、つくる人とそれを使ったり楽しむ人たちとの出会いの場を作れたらいいよね、そこに美味しいご飯や音楽もあったら最高だよねっていうところから始まったんです
わたなべようこさん
第1回目は森のテラスという展覧会場で、10数組の出品者を集めて開催しました。特に告知もしていないのに、500人もお客さんが集ってくださって。ものづくりのエネルギーを感じて、自然と2回目の開催に続きました。回を重ねるごとに、農家もパン屋さんもものづくりだよねって、“ものづくり”の定義も拡がっていきました
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なぜ会場に多摩川の河川敷を選んだのでしょう?
北島勳さん
すごく気持ちがいいじゃないですか?(笑)でも会場の条件的にみると、河川敷って、必ずしもいいとはいえない環境なんです。風は強いし雨のためキャンセルになったこともあるし、展示にも演奏にも向かない。一度、屋内の展示場を探して移動しようかという話もありました。でも毎年来てくださる出品者の人たちから「河川敷でやるからこそ、もみじ市じゃないですか!」と熱く説得されて、そうかと思い直したりしました
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河川敷で開催することの良さと難しさって、何ですか?
北島勳さん
難しいことだらけでした(苦笑) 。特に河川敷の使用方法に関しては規制もありますので。そんな中で、調布市の産業振興課の方がとても僕たちのやりたいことを理解して下さり、さまざまな調整をして下さり、すごく応援してもらっています
わたなべようこさん
河川敷の気持ちよさは何物にも変え難いです。それからオープンスペースなので、偶然通りかかった町の人が作品に出会うこともあるのもいいですね
北島勳さん
いろんな要素が重なると、ここは天国かって思うんです(笑)川が流れてて、小鳥が飛んでいて、いいお天気の中ライブ演奏が始まると、土手に座ったり寝そべりながら聴いている人や、自転車を止めて観に来る人、みんなが自由なスタイルで作品や音楽、ご飯を楽しんでいる瞬間。その奇跡みたいな瞬間の気持ち良さを味わいたくてやっているのかもしれません

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この記事を書いた人

編集者・ライター

鈴木沓子

新聞社を経て独立、主にアートやメディア、都市の公共性をテーマに、編集・執筆・翻訳をおこなう。愛車SURLY パグスレーで、川沿いや浜辺など水辺ライドをゆくのが楽しみ。共訳書に『海賊のジレンマ』(フィルムアート社)、『BANKSY YOU ARE AN ACCEPTABLE LEVEL OF THREAT【日本語版】』(パルコ出版)、『BANKSY’S BRISTOL Home Sweet Home』(作品社)など。

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