2014.08.28

ミズベで映画:Kino Iglu有坂塁さんインタビュー

そこでしか体験できない映画上映会をインディペンデントに開催しているKino Iglu有坂さんに話を聞いてみた。

そこでしか体験できない映画上映会をインディペンデントに開催しているKino Iglu有坂さんに話を聞いてみた。

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Kino Igluのおふたり、有坂さん(右)と渡辺さん(左)。Photo:Kino Iglu
いつもどんな場所で上映会されているんですか?
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目黒のホテルの屋上や横須賀美術館の前、立川は毎年夏に映画上映会をやっています。その他にも北は北海道から南は九州までいろんなところでやっていて、森のなかでやったり、店舗のなかでやったりしています。映画を上映するということでその場所が特別な空間になるのですが、それを最小人数4人から、最大150人ぐらいまでの上映会をやっています。

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目黒のホテルの屋上で行われていた映画上映のイベント
依頼があった場所でやるんですか?
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私は映画の上映会をここでやりたい、と営業をかけることはしないんです。私がどういう場所でやりたいか、というのはなくはないのですが、依頼者さんに映画上映会をこういう場所でやりたいとおっしゃっていただいて、その場所にあった映画をその場所に行ってインスピレーションでセレクトして上映会を開催します。 私はお声をかけてくださった方とのご縁が重要だと思っています。映画を上映する前にどういう思いでその場所で上映会を開催したいのかということをお聞きして一緒につくりあげるものだとおもっています。私だけが熱量がたかくてもダメなんです。
どういうことを考えて企画されるのですか?
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映画って2時間のあいだ観なければならない、しかも聞いたことのない監督の映画だったりすると、ハードルが高いじゃないですか?昔は上映する映画がなんでも、映画館に行けばそこでやっている映画をなんとなくみる、という見方もあったけれども、最近は上映作品を目的に映画館に行くことが普通ですよね。でも、私の上映会は、作品が目的ではなくて、たとえば今日であれば「ホテルの屋上で観る」ということが目的になるから、映画鑑賞の入り口の幅がひろがります。 また、そのイベントを介してその映画監督の作品を知ることになる。それが監督で映画を見るという鑑賞方法につながるといいなと思っています。
なるほど。
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個人鑑賞ではなく、その場所で映画をたくさんのひとと一緒に観るという体験を通して、その場所に対する愛着が深くなるという面もとても重要です。映画を個人で鑑賞するのとはまったくちがう体験です。これも映画の楽しみ方のひとつだと思います。 また、人には映画の「スイッチ」があるとおもいます。私自身の経験で、このスイッチがオンになるきっかけがありました。映画と場所の組み合わせで私はこのスイッチを「オン」にすることもできるとのではないかと思います。入り口を単に映画鑑賞ではなく別のところにもうけることで、映画がより身近になるのです。
ここまでお聞きして、映画の地位というものがこの数十年でどう変わってきたかということに気づかされました。有坂さんが「映画の入り口」とおっしゃっていたのがよくわかりました。ところで、上映会は水辺でやることもあるのですか?
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横須賀美術館の芝生は目の前が浦賀水道になっていて、水辺です。あと、もみじ市というクラフトマーケットは調布の河川敷で行うイベントなのですが、ここでも毎年やっていて、今年も9月27日に開催されます。ただ、岩本さんに言われるまで水辺にそんなに関心は正直言ってなかったです。

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小さなテントのなかで行われる、もみじ市でのイベントの様子。Photo:Kino Iglu

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横須賀の沖合に浮かぶ無人島で行われた映画上映会 photo:Kino Iglu
そうなんですね。例えば横須賀ではどんな様子なのですか?
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横須賀美術館の上映会の会場は海に向かって芝生の広場が傾斜していて、県道を挟んで反対側が海なんです。上映する前にお客さんがシートを持ってきてめいめいのスタイルでその場で上映を待ちます。なかにはワインボトルとワイングラスをもってきて楽しみながら日没を待っている人もいるんですよ。その場は、映画がまだ始まっている訳ではないのに、とてもすてきな光景なんです。

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海風が強いので、上映用のスクリーンは工事現場用の編目になっている6M×8Mのシートなのですが、少し透けるのです。そうすると、白黒映画をやっていると、上映中にスクリーンに赤い光が横切ったりするのですが、それが浦賀水道を通るタンカーだったりして、その場でしか味わえないものを感じます。また、県道はよくヤンチャなバイクが通ったりするのですが、裏からも映画が見えるので、みんな上映しているのをみると、「あ、映画だっ」という具合に止まって映画を見ていくんですよ。それをみて、広場のひとたちとの間に共感するものが芽生える。公共空間で映画をみることの醍醐味です。きっとみんな、その場所で映画を見たことで、その場所に対してポジティブな印象をもって、共有することができます。愛着がわきますし、映画に対しても楽しみ方がわかった気になるのです。 終わった後の余韻も映画の体験の一部でとても重要です。みんな横になりながら、飲み物を飲んだりしながら隣の人と談笑する。
私も目黒のホテルの屋上で開催された屋上映画祭に参加したのですが、映画がきっかけになった空間とおっしゃっていた余韻がすばらしかったです。

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映画上映が終わった後雰囲気の余韻もすばらしい
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ありがとうございます。
今年、これから開催される水辺で行われる映画上映会を教えてください
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イベントはいくつかあります。 横須賀美術館の上映会は8月の最終土日に行われます。

夏の野外シネマパーティー 『もぐらくんとズデネック・ミレル』

日付
2014年8月30日(土)、31日(日) 19時〜20時
場所
横須賀美術館・海の広場
企画
キノ・イグルー
定員
野外のため特になし (雨天時→ワークショップ室で定員50名程度。整理券配布先着順)
参加費
無料
参加方法等
当日自由参加
概要
飲食物の移動販売等あり。敷物、飲食物の持ち込み可。 今回は、チェコの国民的キャラクター・もぐらの“クルテク”の作者、ズデネック・ミレルのアニメーション作品を上映します。みんな大好き「もぐらくんシリーズ」から3本、さらにミレルの別のアニメーションを3本、豪華6本立てでの上映です(上映時間50分)。 横須賀の沖合に浮かぶ無人島猿島で行われる「無人島シアター」の第二弾も企画中
詳細
http://www.yokosuka-moa.jp/event/

「無人島シアター」

日付
9月20日(土)
概要
東京湾に浮かぶ無人島「猿島」にて、一日限りの野外シアターを開催。
詳細
http://trippiece.com/plans/4378

もみじ市「テントえいがかん」

日付
9月27日(土)、28日(日)
概要
多摩川の河川敷で行われる「もみじ市」に出展します かわいいテントの中で、短編作品をお楽しみいただきます。
詳細
http://momijiichi.com/2014/
非常に楽しみです。
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このインタビューをうけて、水辺がとっても気になりだしました。
ぜひ、水辺でもどんどんやってください。ありがとうございました。最後に、お願いがあるのですが、有坂さんが選ぶ、水辺映画5選をおねがいしてもいいですか?
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わかりました!

有坂さん推薦の水辺の映画5選

1.ロシュフォールの恋人たち(1966年 フランス) 2.MUD-マッド-(2012年 アメリカ) 3.やかまし村の春・夏・秋・冬(1987年 スウェーデン) 4.世界中がアイ・ラヴ・ユー(1996年 アメリカ) 5.草の上の昼食(1959年 フランス)

Kino Iglu

「2003年に中学校時代の同級生、有坂塁と渡辺順也によって設立された移動映画館。 東京を拠点に全国各地のカフェ、雑貨屋、書店、パン屋、美術館など 様々な空間で、世界各国の映画を上映している。 多彩なアーティストとのコラボレーションを始め、夏の野外上映会、クリスマスパーティー、 SHOPのAnniversary Party、こどもえいがかい、全国ツアー、 さらには映画祭のディレクションや、ライブラリー向けのDVDセレクトまで、 既存の枠にとらわれることなく、自由な発想で映画の楽しさを伝えている。 縁とつながりを大切に。」

http://kinoiglu.cocolog-nifty.com/

この記事を書いた人

ミズベリングプロジェクトディレクター/(株)水辺総研代表取締役/舟運活性化コンソーシアムTOKYO2021事務局長/水辺荘共同発起人/建築設計事務所RaasDESIGN主宰

岩本 唯史

建築家。一級建築士。ミズベリングプロジェクトのディレクターを務めるほか、全国の水辺の魅力を創出する活動を行い、和歌山市、墨田区、鉄道事業者の開発案件の水辺、エリアマネジメント組織などの水辺利活用のコンサルテーションなどを行う。横浜の水辺を使いこなすための会員組織、「水辺荘」の共同設立者。東京建築士会これからの建築士賞受賞(2017)、まちなか広場賞奨励賞(2017)グッドデザイン賞金賞(ミズベリング、2018)

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