2018.09.10

パリの水辺。オシャレすぎる公共空間の使い方。海外視察レポート

セーヌ川沿いでバカンス気分を楽しめるイベント「パリ・プラージュ」

セーヌ川沿いでバカンス気分を楽しめるイベント「パリ・プラージュ」をご存知だろうか。日本でもオマージュしたお台場プラージュが開催されるほど有名なイベントで、のだめカンタービレ15巻でも描かれている。
さて、この夏、本家本元のパリ・プラージュを見にいってきた。
パリでは毎年、夏にセーヌ川沿いに人工で砂浜(フランス語でplage)をつくり、「パリ・プラージュ」として夏の風物詩になっている。のだめカンタービレでは、美女がセーヌ川沿いで背中を焼いている描写がある。市内で気軽にバカンス気分を味わえるようにとパリ市が開催しているものだ。これまでは毎年7,8月限定でセーヌ川沿いの自動車専用道を封鎖してこのビーチ等が設けられていたが、今年から2年間は24ヶ月通年で道路を封鎖しての社会実験が行われている。2年間ぶっ通しとは、実験と呼ぶのだろうか。パリ市の本気度が伺い知れる。人々が集い、行きかい、賑やかであり、くつろいでいて、ここが自専道だったとは、信じられない。

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水着美女がくつろぐ川辺を想像してイソイソと出掛けって行ったのだが、残念ながら今年はプラージュ(砂浜)は無かった。そのかわりなのか、砂浜でなくても人々がくつろげる仕掛けが多く設けられていた。ビーチチェアが置かれている場所には、ウッドチップを敷き詰めたり、ウッドデッキや芝生、人工芝が敷かれていた。滞留空間において「足元をオシャレにする」ことの効果を体感、一気に特別感が出る、ような気がする。
ベンチ(ビーチチェア?)は布製のものがオシャレな雰囲気を盛り上げていた。軽いし安そうなのに快適って最高じゃん!と思ったが丈夫ではないという側面がありそうだ。風雨に弱そうだった。毎日見ていると朝晩は片付けていて、出し入れの手間を惜しんではいけない、ということなのだろう。

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ベンチやカフェでゆっくりする以外に、ちびっこたち(ときには大人もご老人も!)が楽しめる仕掛けもいたるところに。巨大チェスやテーブル・フットボール、ミストも。なかにはボール遊び場としてネットでドーム状に囲まれたものもあった。壁面アスレチックは、擁壁に後からアンカーを打ち込んでいた。日本じゃなかなか許されなさそう…笑

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パリでは、モビリティの多様性を感じた。パリ・プラージュ会場は、自専道であったこともあり、舗装がよいせいか、様々なモビリティが集まってきていた。パリ全体で自転車用道路を整備していることもあり自転車が多かったが、電動キッカー、ホバーボード(ハンドル無しのセグウェイ)、電動一輪車、ローラースケート、いろいろなモビリティで川沿いを楽しんでいた。もちろんベビーカーや車椅子も。

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ラ・ヴィレット貯水池

図12

パリ・プラージュのもう1つのメイン会場。ラ・ビレット貯水池。
セーヌ川から北にバスと徒歩で30分ほどのところ。
サンマルタン運河の途中に設けられている貯水池で、お世辞にも水はきれいとは言えない。匂いからすると外濠より汚いのではないか… なのに人々のこの水との近さ!
アクティビティがセーヌ川沿いよりももっと水面上に食い込んでた。
貯水池のなかにプール!SUP!しかもメガサップに金髪美女が5人で水着姿!圧巻の光景!
レンタル電動ボートでワイン片手にパーティーしている美女グループも。
水辺が洒落込んで出かける場所になっているなんて、なんとも羨ましい。
レンタル電動ボートはトリコロールカラーの3種類で停泊しているだけでも格好良かった。

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大人向けのものばかりでなく、子供が楽しめるアクティビティもたくさんあった。
ちびっこ用ボート。チューブ。両岸を結ぶジップライン。
フランスのまちなかに多くあるメリーゴーランドもあった。その脇にはエッフェル塔が。夜にはライトアップされるらしい。

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こちらには砂浜があった。子供は砂遊びが大好き。全体的に子供ウケするものが多かったのが印象的だった。

図18

ちなみに、セーヌ川はそのうち泳げるくらいきれいになる(かもしれない)らしい。
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パリ市長・イダルゴ氏は、「近い将来、必ずセーヌ川は一般市民が泳げるくらい水が綺麗になる」と、テレビで宣言。現在パリ市内では、公共交通利用や自転車移動推進策やセーヌ川畔の自動車道路の歩行者空間への転用を初めとする、様々な自動車迂回、自動車利用を減らす措置などが推進されている。すべて、この市長の「パリによりよい環境を求める」信念と政策からきている。
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フランスのまちづくりの専門家ヴァンソン藤井氏のブログ(http://www.fujii.fr/blog/?p=5169&lang=ja)より。

水辺を人が集うオシャレな場所にすることも大切だが、水質改善といった環境へのアプローチも大切。日本の都市も見習っていかなければ、と強く思う。

この記事を書いた人

今佐和子・淺見知秀

土木系公務員夫婦。 夫婦共に筑波大学で都市計画を学んだ後、数年の民間企業勤務を経て、国土交通省に入省。 夫の専門は交通計画で栃木県小山市に出向中。 妻は育児休業中につき、住民の立場から小山のエリアマネジメントを実践中。

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