2018.08.24
いいだしっぺはアメリカから来たバーテンダー!熊本市白川沿いのオープンスペース「緑の区間」で白川フェス開催
民間、自治体、国、それぞれの協力から生まれる利活用
8月4日に熊本県市熊本市で白川沿い「緑の区間」で「Shirakawa Fes(白川フェス)」が、(白川「緑の区間」の利用を考える協議会主催、Shirakawa Banks(白川バンクス)共催)開催されました。白川は、阿蘇山のカルデラを水源とし、熊本の市街地を貫いてを流れる川です。フェス会場となったのは、地域住民との共同参画により整備を進めてきた、川沿いの区画・通称 「緑の区間」です。(緑の区間に詳細についてはこちらの記事へhttp://mizbering.jp/archives/17016)当日は35度を超える暑さながら、多くの人が訪れ、地元の飲食店によるおしゃれな出店で買い物したり、ヨーヨーすくいや紙芝居などのイベントを楽しみました。
今回、ミズベリング事務局は、民間主導のまちづくりに関して多数著作のある木下斉さん(熊本城東マネジメント株式会社の役員でもある)から「おもしろい取り組みが熊本の白川ではじまる」とご連絡いただいたことで取材しに熊本に伺いました。主催者であるShirakawa Banks 代表ジェイソン モーガンさん、協力者である、熊本市中央区役所まちづくりセンターの喜佐田さん、国土交通省熊本河川国道事務所の末吉さんにお話を伺いました。
怒られながらも、徐々に色々な人が協力してくれました
ーどうしてこの白川沿いの「緑の区間」でイベントを開催しようと思ったのですか?
- (Shirakawa Banks 代表ジェイソンさん)私は、白川沿いで、voyager(ボイジャー)という飲食店を共同経営しています。中心市街地から白川を超えた東側のエリアは、熊本の中心市街地から近いのに、少し盛り上がりにかけているように感じていて、何かできたらと思っていました。もともと母国の川で遊んだ体験があり、それがとても楽しかったんです。この白川沿いの「緑の区間」は、川沿いの気持ちいい場所なので、ここで川を楽しみつつ、同時に、地域を盛り上げるイベントができるのではと思い、始めました。
ー思い立ってすぐ開催できたのでしょうか
- 最初は一人でイベントを始めようと思って、関係各所へ働きかけをしたら、ダメだと怒られてしまいました(笑)。ただ、そうして怒られたりしていくうちに、怒った方も含めて、たくさんの人と関わりができてきて、だんだん協力者が増えていきました。白川バンクスのメンバーは10人程度で、熊本市白川小学校PTA会長の森永さん(ShirakawaBanks副代表)や内装・空間デザイン会社の中川さん、熊本城東マネジメント株式会社の南さんなど、この地域で働き、強い思いのある人たちに集まっていただけました。熊本市中央区役所の方も、色々手伝ってもらって、大変ありがたいです。
白川沿いのエリアのポテンシャルは高い
ー今回会場になった、このエリアはどういった地域なのでしょうか。
- (熊本市中央区役所まちづくりセンターの喜佐田さん)中心市街地から白川を挟んで、東側のこのエリアは、市街地からも近く、家賃も対岸の中心地に比べれば安く、逆にこれからのポテンシャルの高いエリア。交通量の多い橋のふもとということもあって、人通りも多く、イベントをした時に、ちょと立ち寄りやすい場所です。また、小学校も近く、ファミリー層の集客も見込め、人が集まりやすい立地でもあります。
- ここで初めてイベントをしたのは2年前です。立地の良さもあって、自然と人が集まりました。
ーイベントのノウハウは元々あったのでしょうか。
- 白川フェスは、中心市街地開催している、シードマーケット(Seed Market:熊本市の中心市街地で開催されているマーケット)のノウハウを活かしています。熊本では以前から熊本城東マネジメントというまちづくり会社があり、民間主導のまちづくりの主体として活躍しています。彼らの活動の一環で行われているのがシードマーケットです。実はこのシードマーケットは、新規に飲食事業などの出店したい人々を熊本の中心市街地に誘引する側面もあります。
- 私も初めはシードマーケットでクラフトビールを販売していました。
- シードマーケットは、熊本市で事業を新しく始めたい人が試しに出店してみる、スタートアップとしての側面もあり、白川フェスも参考にしています。白川フェスについても、このエリアでお店を始めたい人やお店を知ってもらいたい人が出店しています。
熊本城東マネジメント株式会社とシードマーケット
※「熊本城東マネジメント株式会社」は、2008年に熊本市中心部の商店街代表で設立された。店ごとだったゴミ処理契約を一括化することによって、契約費を抑え、浮いた費用をまちづくりに活用している、民間主導のまちづくり会社として全国をリードする存在である。様々なまちづくり活動を行なっており、その一環として行われているのが、熊本市内への新規出店を誘引する、SeedMarket(シードマーケット)である。
ー資金はどこから出ているのでしょうか。
- 出店者さんからの出店料だけで賄っています。補助金等は受けていません。正直、あまりプロモーションにもお金はかけられていません。今後、協賛金などを集めたりできたら・・・とは思っているのですが。
やってみることで変わる川への意識
ーイベントを通じて、白川に対する意識は変わりましたか。
- フェス実現にむけていろんなつながりができましたが、白川地域防災センター(白川わくわくランド)に行く機会があり、そこの先生とも知り合いにり、お忙しい方にもかかわらず白川について、3時間も講義をしていただきました。あらためて、阿蘇のカルデラを水源とする白川は治水上非常に難しい川ということがよくわかりました。しかし、川について正しく理解すると、確かに危ない時もありますが、ほどんどは穏やかな状態であることがわかります。川について、興味を持って正しく理解することが大切だと思います。川でイベントを企画する立場になったことで、川の性質や治水への理解に繋がるということは発見でした。
白川と熊本の関係のこれから
フェス会場である「緑の区間」の設計に関わった熊本大学准教授の星野さんにもお話をうかがえました。。
- (熊本大学准教授の星野さん)白川は、以前は、洪水の危険性が高く,ここで水があふれると熊本の中心部が水浸しになるような状況でした。20年以上をかけて多くの市民と合意形成を行い,15mほど川幅を拡げ,薄く低い堤防を築くことによって,洪水の危険性を大きく減少させる整備を行いました。同時に、多くの樹木を残したり移植したり、伝統的な技法を用いた石積みによって、歴史的な景観かつ緑豊かな親水性の高い水辺空間を創出したことで、このゆたかな環境を街中で堪能できる河川公園として生まれ変わりました。これをどうみなさんが使っていくのか、ということがこれからの課題で、今回のように、市民の方に利用してもらえるのはすばらしいことです。現在「緑の区間」の扱いとしては、工事期間となっており、暫定利用という建てつけになっています。今後もどんどん利用してもらい、本格的な運用が始まった際の管理のありかたにみなさんの活動の経験が活かされればいいなと思っています。
ーこのような河川沿いのイベントは九州では多いのでしょうか。
- (国土交通省熊本河川国道事務所末吉さん)九州の河川で都市部で商業目的で活用している例は珍しいです。今後も色々な使い方を試して、上手く地域の人に使ってもらえればと思います。そして、使うことで楽しさ・危なさを知ってもらうことで、白川の防災への理解へつながればと思っています。
- 橋の脇にある、国土交通省管轄の電光掲示板に白川フェスの情報を掲載してもらったりと、国交省さんには協力いただいています。民間・自治体・国と、皆でできることを協力しあっています。
まずは色々仕掛けて立ち寄ってもらえるエリアに
ー今後の展望を教えてください。
- 今後も色々なイベントを開催できたらと思っています。お化け屋敷、映画上演、バーとかやってみたいですね。
- まずは色々仕掛け続けて、皆に立寄ってもらえる場所にしていきたいですね。誰も見向きのしなかったエリアなので、このようなイベントを続けてすることで、このエリアの価値を上げていけたらいいですね。また、今回のようなイベントをすることで、有志で草刈りをしたりなど、使えば使うほど綺麗になっていくため、維持管理の面でも良いことと思います。
- 気軽に使えるように色々な使い方を試していきたいです。使うことで、白川の楽しさと危なさを知って防災への理解につなげていけたらと思います。
ー次回はいつ開催予定ですか?
- 次回は9月28日16:00~22:00の夜市を予定しています。(*編集註:主催者からの申し出で、開催日が記事公開当初の予定日29日開催から変更になっています。)
今回のフェスは、出店することで商売の始めるためのスタートアップや地域に店の認知度を上げたい民間事業者、このエリアの活性化に繋げたい地方自治体、川沿いを使うことで川への理解を深め、河川行政への理解に繋げたい国と、それぞれの立場をお互いにうまく使いこなしているように思えるイベントでした。
会場となった「緑の区画」は、今後熊本市に管理が移管されるとのことですが、このイベントのような様々な社会実験を通じて、今後の水辺の管理手法検討につながり、経験を活かすすることで、よりよい利活用につながるのではないかと感じました。
「九州バカたちと考える、熊本のあした」という講演会が白川フェスにあわせて開催されました。左から九州パンケーキで有名な有限会社一平社長村岡浩司さん、「まちづくりの狂犬」と呼ばれる熊本城東マネジメント株式会社の木下斉、今話題のアパレルブランド「ファクトリエ」の社長山田敏夫さん。三人の鼎談は、さすが経営目線で地方創生を考えられているみなさんという感じで、特にローカルでの起業家がどのように主体性を獲得するか、という話題が印象深かった。どのように自分ごとにするか、ということをテーマにしてきたミズベリングとの共通点が多く、地方で起業家として活躍されている方々の話はとても参考になりました。(岩本唯史:ミズベリングディレクター)
この記事を書いた人
主婦、兼、株式会社水辺総研プランナー 内装設計会社にて店舗設計を担当後、地元市役所の職員として、広報やシティプロモーション業務に携わる。2018年から水辺総研プランナーとして勤務。