2016.05.09

大学院生、ミズベを撮る!

冬も終わり、春の陽気の季節となりました。これからはミズベのシーズンですね!

ダイビングにスノーケリング、カヤック、沢登り、河川敷でバーベキューなどなど河川や海で遊べるシーズンの到来です。

私は学部時代、スキューバダイビングに明け暮れていました。
そのなかでもダイビング中に出会った生き物の撮影は非常に楽しく、撮影を通してある生き物が大好きになっていきました。

米粒大の生物の写真を撮ることに惹かれ
それが「ウミウシ」との出会いでした。

今思えばダイビングを始めた当初、八丈島での様々なウミウシとの出会いがきっかけだったのかもしれません。
授業である課題を出されました。

「映像教材としてショートムービーを作ります」という内容です。

ならば水中撮影で撮れるウミウシにしようとさっそく撮影に出かけました。

写真㈫

ウミウシという生き物を皆さんはご存知ですか?
古典的分類体系でいうと軟体動物門>腹足綱>後鰓亜綱に分類されます。

大きい仲間としてはイカ・タコやサザエなどの軟体動物がいます。

海に行ったことがある人はアメフラシとか呼ばれる生き物を見たことがありますか?
ウミウシもその仲間になります。
流氷の天使と呼ばれるクリオネもウミウシの親戚ですね。

サイズは大小様々で米粒以下の小さい個体もいれば、20cm程度で泳ぐ種類もいます。

ウミウシを研究していた人は昭和天皇が有名です。神奈川県葉山には御用邸がありますがこの地域は多くの種類のウミウシを見ることができます。
夏場のシュノーケリングでも簡単に観察することができますよ。

写真㈬

アオウミウシ

ウミウシ、その魅力としては色も形も多種多様、とてもユニークで綺麗な生き物です。
私も最初は色のついたナメクジのように見えていました。

しかし、ウミウシは日本海から太平洋、いろいろな海に様々な色や形のものがいるのです。

知らないうちにこの綺麗な生き物をいかにして、良い写真としてにカメラに収めるか、
そんなことを考えているうちにどんどん、ダイビングと撮影に夢中になっていきました。

写真㈭

ダイアナウミウシ

そんなウミウシのためのプロモーションビデオを作るため、四季折々、静岡県の伊豆まで撮影に行きました。

ウミウシは年間を通して海で見ることができ、その写真を撮りに行くウミウシダイバーの数は意外に多いのです。特に冬は多くの種類が現れます。
マイナーな生き物ではありますが近年、デザインとしてや展示としても注目を集め始めました。

しかし、水族館などでは未だあまり見かけません。これにはウミウシの食性やライフサイクルといった様々な要因が飼育を困難にしている現状があります。食べるものが種によって異なり、また幼生の時期のウミウシはこの写真で示したような姿とは全く異なる形をしています。その時期に何を食べているかはまだ決定的に明らかにはなっていません。
これらがウミウシを長期間飼育することを非常に難しくしているのです

それでは、ウミウシの撮影の方についてお話しします。
先ほど小さいウミウシから大きいウミウシまでいると述べさせていただきました。

ウミウシの平均サイズは約1cmから3cmほど、普通の写真機材ではなかなか大きく映すことが難しい生き物です。

写真㈮

写真は私が使っている撮影機材です。

カメラを水中に持って行けるパッケージに包み、周りにはライトを二つ、レンズは小さいウミウシを撮るための拡大レンズがくっついています。

これで米粒サイズのウミウシもばっちり撮ることができます。

最近はとっても拡大できる防水コンパクトデジカメが発売され、シュノーケリングをしながら撮影もできるようになりました。

意外と海に行って生き物の写真を撮るハードルが低くなってきています。
夏の海で綺麗な魚の写真を撮ってデスクトップ壁紙などにしてみてください。

きっと癒されること間違いなしです。

写真㈯

体長5mmミアミラウミウシ

また、授業で用いたものは写真と同時にウミウシの映像でした。
水中の動画撮影は意外と難しいものです。

手ブレやピント、生き物も動き、私たちも波に揺られます。
深く潜れば潜るほど、周りは暗くなるのでライトを使わなくてはいけません。

ブレないように、じーっと動かずにいると、顔面をクラゲに刺されることもあります。

写真㉀

カンナツノザヤウミウシ

上の写真はカンナツノザヤウミウシといい、ダイバーの中でも人気のある種です。

このツノザヤウミウシの仲間にはウデフリツノザヤウミウシという種もいるのですが、
通称ピカチュウと呼ばれ、撮影のため水中で順番待ちをするくらいの人気を集めています。

いろいろな困難を乗り越え、無事に動画は出来上がりました。
試行錯誤を加え、いろいろな人にアドバイスを頂きながら、ウミウシに魅せ方を
工夫いたしました。拙い作品ではありますが、この記事で少しでもウミウシに興味を持った方は是非ご覧ください。

また、ショートムービーの制作にあたっては、全日本ウミウシ連絡協議会、中野理枝先生からもウミウシの魅力についてインタビューを頂くことが出来ました。
ウミウシの行動学と分類学を専門に研究をされており、本動画にも多くのご助言を頂きました。

これから夏になり、ダイビングのシーズンになります!多くの人に水中撮影の面白さとウミウシの魅力が広まりますように願いを込めまして筆をおかせて頂きます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

注)この動画ではカンナツノザヤウミウシを俗称ピカチュウと呼ばれるといっていますがこれには諸説あります。本動画には田代の主観が含まれております。
また、Thecacera spのSPが斜体になっていないことをお許しください。

この記事を書いた人

田代拓

東京学芸大学大学院、総合教育開発専攻-環境教育コース。出身は阿賀野川水系。 専門は海洋環境教育(水圏環境教育)、森と川と海のつながりをテーマに環境教育カリキュラムの提案と評価を研究しています。趣味はダイビングと登山。雪山も好き。 水があったら淡水海水なんでもいいから入りたい人。

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