2014.03.12

ざごばの朝市にSUPで買い物に出かけてみた

川をゆく#02 旧淀川

大阪に行く機会を得た。水辺が大好きで、SUP(*註:スタンドアップパドルの略で、サーフィンの一種です。立ってパドルで漕ぐ新しいスポーツ)経験者である筆者は、当然のように日本シティサップ協会のホームページをチェックします。
日本シティサップ協会は、天満橋の駅のそばにある川の駅はちけんやの中に拠点を設けSUPをやっている団体で、それまで海でやるスポーツだったSUPが都市河川で行われるようになったのも、彼らの功績によるところが大きい。

ウェブ

日本シティサップ協会ウェブサイト

ホームページでは、GOOGLE カレンダーに記されているイベントをまずチェック。日本シティサップ協会さんは基本的に毎朝「あさんぽ」と呼ばれる体験会をやっています。

大阪の滞在予定日は2014年1月25日から1月27日まで。どれどれ。1月26日には見慣れないイベントが予定されている。「ざこばの朝市ツアー」?
聞き慣れないな。ざこば?ってなんだろう?説明は「★食のまち大阪ならではのSUPツアー!・・・SUP経験者であれば誰でも参加できる美味しいツアーです^^買い物&買い食いを堪能しましょう♪」なんだかわからないがとても楽しそうです。
参加費は1000円、レンタル料は3000円。とにかく申し込んでみました。

ざこばSUPバナー

ざこばの朝市ツアーのバナー(提供:日本シティサップ協会)

私が東京からイベントに参加するために持っていく装備はウェットのインナーとナイロン製パーカーとパンツ、念のためにダウンも。手袋も靴もウェット素材です。かなりかさばるが持っていけない装備ではないです。万が一を考え、陸上で着るような服装での参加はしません。特にコットンは濡れると体温を急激に奪うのでダメですし、ましてやジーンズは濡れると重くて沈んでしまうのでぜったいNGです。

当日朝、天満橋の駅を降り立った私はまず川と駅の近さにおどろきました。京阪電車の天満橋駅は旧淀川沿いにあって、コンコースの自動扉のむこうがすでに河川敷。すごいロケーションにあります。「川の駅はちけんや」は川沿いを歩いていくとあるとても新しくてキレイな建物。日本シティサップ協会は、ガラス越しにSUPがディスプレイされているのでとてもわかりやすい。

左:天満橋駅のコンコースは河川敷とこんな風に接続されています。
右:川の駅はちけんやは左側のとてもモダンな建物。右奥に中之島と天神橋がみえる
左:日本シティサップ協会は川の駅はちけんやの中に拠点がある。
右:八軒家浜の雁木(がんぎ)。階段状の親水施設で、非動力船の発着スポットです。

八軒家浜の階段状の雁木(がんぎ、と読む)は、非道力船の発着スポットとして使われています。整備された当初は使う人がおらず、放置されていましたが、日本シティサップ協会が2013年7月に川の駅はちけんやに拠点を移してきて以降、扉が設置されて使えるようになったんだそうです。その日も、ぴょんぴょんはねているおじさんを発見。

雁木ではこんな遊び方にも使われていました。新しい水上スポーツの実験でしょうか?

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コース説明をする日本シティサップ協会の奥谷さん

協会のなかには着替えるブースもあるので、参加者は早速着替えてブリーフィングにそなえます。みなSUP経験者です。今日は土佐堀川(中之島の南側)をいって、帰りは堂島川(中之島の北川)を帰ってくるそうです。中之島GATEと呼ばれるエリア(福島区)に向かいます。そこには桟橋があり、河川沿いで朝市が開催されているのです。

map

ルートマップ中之島の南側が土佐堀川、北側が堂島川

早速進水します。SUPはインフレータブル式で、空気がパンパンに入っています。空気式と言っても、ビーチボールとはまったく違うものです。

一団は中之島公園を右手に見ながら下流に向かいます。

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左:右手に中の島公園をみながら下っていきます。見えている橋は天神橋。

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北浜テラスをみる。地元の努力によって、大阪でも川床ができるようになった

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中之島公会堂が右手に見える。れんが造りの大阪のシンボル。筆者はつくるために尽力した岩本栄之助とは名字が一緒だが、残念ながらゆかりはない。
左:淀屋橋はとても重厚なつくり。橋をくぐるたびに風景が切り替わる面白さがある。
右:このあたりは、阪神高速が上空を通っている。歴史のありそうな建物ものこっている。

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水上バスとのすれ違い。奥谷さんは通りかかる船に手を振って挨拶している。大阪の水上バスは驚くほど波をたてずにはしる。

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江之子島の北。水上観光船と高速道路とマンション。大阪らしい。

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SUPで朝市に行く。なんてすてきなコラボレーションなんでしょう!

江戸時代、水運の便が良かった西区江之子島付近に生まれた生魚市場は、雑喉場(ざこば)と呼ばれるようになりました。天満青物市場、雑喉場魚市場などが吸収され、昭和6年11月、中央卸売市場が開場しました。ざこばの朝市は、大阪市、大阪商工会議所、福島区ほか民間企業等で構成される、「ざこばの朝市プロジェクト実行委員会」が主催していて、“西日本一の規模を誇る‘食の拠点’としての役割や大阪都心の“水の回廊”と臨海部との結節点に位置する立地条件から「大阪市中央卸売市場(本場)」の周辺地域について、民間活力を利用した賑わい創出を目的に開催するもので、奇数月の第4日曜日に開催しています。“(ホームページより引用

左:会場を川側から見る。お店のひとも、まさか川からくるとは思わずびっくりしている。
右:冷たい雨が降りしきる中、暖かい朝ご飯をもとめて歩く。

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参加者で一緒に朝ご飯を食べます。関西のお雑煮をゲット。

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少し天気が回復してきました。かなりの人手があります。

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ざこばの朝市はさすが本格的な中央卸売市場と関係があるだけに、巨大なあかまんぼうまで出品されています。

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再び川にもどり、出発した八軒家浜まで戻ります。

zakobasup

朝市を後にして、上流に戻ります 撮影:渋谷健太郎
左:途中中之島バンクス横を通る。川にひらいた施設が大阪にはたくさんできている。
写真はデザインミュージアムDESIGN DE。
右:堂島川沿いは大型の再開発がたくさん行われているようです

Enroutebak

都市河川を行く。写真は堂島川の田蓑橋付近。

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八軒家浜に戻ってきました。雁木越しに川の駅はちけんや。その奥には天満橋駅が見えます。

大阪と言えば、お好み、たこ焼き、阪神タイガース。でも、この水上を行くツアーはそのどれでもありません。それでも、大阪のことを知るために最適なツアーなのではないかと感じています。それは、このツアーによって大阪の骨格を僕は一回りしてきたと感じているからです。この旧淀川があったからこそ、大阪は栄えて、その象徴的な場所こそ、この中之島周辺のエリアなのです。
有名な大阪の食は、川とともにありました。水運で運ばれてきた物資はここで交換され、人々の交流が生まれたことによって大阪は大きくなった。そもそも中央卸売市場が水辺にあることが大阪の都市の骨格を物語っています。水運が少なくなってしまった現代でも、その歴史的系譜は感じることができます。それは、地下鉄に乗るだけの観光では難しいかもしれませんが、水辺をつなぐツアーによって、より増幅される。大阪の人々が綿々とつないできた営みを追体験できたような気がするのです。
帰るとき、写真に撮り忘れて後悔したことがひとつあって、それは、堂島川を上って天神橋をくぐった際、目の前に広がった風景。旧淀川の川筋の先に頂く生駒山。この都市軸は昔から変わらず、ずっと人々の心に残ってきたにちがいない。

大阪の都市軸旧淀川と生駒を結ぶ大阪の都市軸。途中寝屋川も同じ軸線上にあることがわかる

このスタイルの旅行はヤミツキになる。現地の有能なガイドをしてくれる人がいれば、大阪でなくともどこでも可能になる。そういう旅の仕方もあっていい。

日本シティサップ協会のSUPをするためには
・レッスン 川の駅はちけんや前の大川(旧淀川)で、中学生以上の未経験者・経験の少ない方を対象とした教室です。毎日朝7時と8時半に開催されています。
レッスン|日本シティサップ協会

・経験者はこちらのコース水都回廊コース(一周約11km)
川の駅はちけんや〜大川〜堂島川/土佐堀川〜安治川〜木津川〜道頓堀川〜東横堀川〜と、いくつもの川・いくつもの橋をくぐり抜けるこのツアーは、まさに冒険の旅!世界でも稀な四方を川で囲まれた水の都大阪を探訪して下さい。
<安心のガイド付きです!>
ツアー|日本シティサップ協会

・残念ながら取材した時点ではざこばの朝市ツアーは予定されていませんでしたが、まめにウェブサイトをチェックしたり、日本シティサップ協会のFacebookページをフォローしたりしてみてください。

この記事を書いた人

ミズベリングプロジェクトディレクター/(株)水辺総研代表取締役/舟運活性化コンソーシアムTOKYO2021事務局長/水辺荘共同発起人/建築設計事務所RaasDESIGN主宰

岩本 唯史

建築家。一級建築士。ミズベリングプロジェクトのディレクターを務めるほか、全国の水辺の魅力を創出する活動を行い、和歌山市、墨田区、鉄道事業者の開発案件の水辺、エリアマネジメント組織などの水辺利活用のコンサルテーションなどを行う。横浜の水辺を使いこなすための会員組織、「水辺荘」の共同設立者。東京建築士会これからの建築士賞受賞(2017)、まちなか広場賞奨励賞(2017)グッドデザイン賞金賞(ミズベリング、2018)

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