2016.03.10 Thu

「新しい」淀川をみんなでチャレンジする 社会実験『淀川アーバンキャンプ2015』実施報告

「新しい」淀川をみんなでチャレンジする 社会実験『淀川アーバンキャンプ2015』実施報告

グランピングも登場!コンセプトは「都市型アウトドアツーリズム」。

「新しい」淀川をみんなでチャレンジする 社会実験『淀川アーバンキャンプ2015』実施報告

はじめに

 大阪の川といえば中之島や道頓堀など都心河川が有名ですが、大阪・キタの中心地「大阪」「梅田」から約15分、大阪有数の繁華街「十三」から約10分歩けば、淀川の河川敷にたどり着きます。都心からほど近いこの場所は、豊富な水と自然に恵まれ、気持ちの良い、広々とした空間が広がっています。

淀川左岸河川敷より梅田のまちを臨む
淀川左岸河川敷より梅田のまちを臨む

 江戸時代、淀川は京都と大阪を結ぶ「川の京街道」として機能し、河岸のまちは淀川舟運の恩恵を受けながら栄えていました。しかしながら、時代と共に水運が衰退し、さらに高い堤防によって町と川が分断されると、人々にとって淀川の存在感は薄くなりました。現在は、年に一度の淀川花火大会には何万人も訪れるけれども、普段は散歩やランニングなど近隣の人々が限定的に使うだけの場所になっています。

 そんな淀川で、2015年9月、大阪商工会議所は近畿地方整備局淀川河川事務所とともに、社会実験「淀川アーバンキャンプ2015」を実施しました。
「新しい」淀川の楽しみ方にみんなでチャレンジし、たくさんの人に淀川の魅力を知ってもらうことを目的とした社会実験、淀川の活用にむけた第一歩“ミズベリング淀川の始まり”の取り組みです。

関西随一の河川「淀川」

淀川は琵琶湖を水源とし、滋賀県、京都府を経て大阪湾に流れ込む一級河川です。
流路延長75km、流域面積8,240km2と関西随一の規模を誇るとともに、下流部は梅田、福島、十三といった都心部に隣接しており、これほど広い川幅と豊富な水量を有する河川が、都心部のすぐ横を流れる例は全国でも珍しいといえます。
淀川流域マップ
淀川流域(出典:淀川河川事務所ホームページhttp://www.kkr.mlit.go.jp/yodogawa/index.php)

淀川下流域(中津・十三地区)
淀川下流域(中津・十三地区)

淀川の歴史と現在

京都・伏見から大阪・八軒家までを結ぶ淀川舟運は、重要な交通手段として、古くから多くの人々に利用され、江戸時代には伏見から大阪・八軒家まで淀川左岸の京街道沿いに宿場町が発展、とりわけ京都と大阪の中間点にある宿場町・枚方は、三十石船など淀川舟運の中継地として機能していました。
明治時代になると、蒸気機関を備えた外輪船が導入され、貨物や旅客の輸送量は飛躍的に増加しました。

しかしその後、鉄道の開通や車社会の到来を受け、輸送手段の主流が陸路へと移ると、淀川舟運は衰退。また、治水重視の河川整備が進められ、上流部から下流部まで高い堤防に囲まれてしまったため、まちから水面や河川敷を視認することが難しくなりました。
その結果、都心部のすぐ近くを流れるという立地にもかかわらず、市民の憩いの空間として、さらに観光客の集う場としての存在感は薄く、淀川が有する自然的・歴史的・空間的魅力を十分に活用できていない状況といえます。

淀川の活性化と賑わい創出に向けた提言

平成26年度、大阪商工会議所は舟運事業者や観光関連事業者等と、淀川を大阪・関西の新たな観光魅力として活用するための検討を行い、『淀川の活性化と賑わい創出に向けた提言』を取りまとめました。

提言では、①淀川大堰に閘門を設置して、上流部と下流部をつなぎ、観光舟運の活性化をはかるとともに、②十三大橋等の架け替えに合わせ「ブリッジパーク」を整備し、下流域に新たなシンボル空間を創出すること、③枚方を中心とした上流域をスポーツツーリズムの拠点にすること、④今後数年間かけて実験事業に取り組み、淀川の活性化につなげていくこと、などを提案しました。
下流域(中津・十三地区)の賑わい拠点イメージ
下流域(中津・十三地区)の賑わい拠点イメージ

上流域(枚方地区)のスポーツツーリズム拠点イメージ
上流域(枚方地区)のスポーツツーリズム拠点イメージ

実験事業「淀川アーバンキャンプ2015」

そして平成27年度、提言の実現に向けて一歩を踏み出そうと、大阪商工会議所は近畿地方整備局淀川河川事務所とともに、舟運事業者、鉄道事業者、アウトドア関連事業者を巻き込み、まだ使われていない淀川の河川敷、水面を使ってみて、たくさんの人に淀川の魅力を知ってもらうことを目的とした社会実験「淀川アーバンキャンプ2015」を実施しました。
コンセプトは「都市型アウトドアツーリズム」。
広々として気持ちがいいけれど、人が集まる場としてはだだっ広いともいえる淀川の空間を、どのように活用するのが魅力的か、ロケハンをしながら事務局と運営事業者でアイデアを出し合いました。やはり豊かな自然、そして大阪の中心にほど近い立地条件を最大限に生かし、都心にいながら自然を体験できる、いままでにないけれども日常的な風景を試行しました。

実験事業「淀川アーバンキャンプ2015」_00001
実験事業「淀川アーバンキャンプ2015」
会場の様子
会場の様子

会場となった十三周辺の河川敷には、快適にそして少し贅沢に野外を楽しむ、新たなキャンプスタイルとして近年注目を集める「グランピング」のテントを展示。キッチンスペースを備えたテントをメインとして、屋外テーブル、バーカウンターを設置し、キャンプ料理や食事を楽しみました。
淀川は、梅田のビル群を眺めながら豊かな自然を楽しめる河川敷です。これを楽しみながら美味しいお料理をつくって食べたらきっと楽しい!という事務局の想いから企画しましたが、一番のハードルは調理に必要なガスや水がないこと。そこで震災を機に制作された薪で火をたくロケットストーブが活躍しました。火力も十分で、薪に火をつけるのも楽しい作業でした。水は、ポリタンクに入れて地道に運び、排水も同じように手作業で運び出しました。
ふらっと立ち寄った方々にも美味しい食事を楽しんでいただたくためにオープンしたカフェは、部活帰りの子どもから近所のお散歩中のおじいちゃんまで、いろんな方々に楽しんでいただくことができました。普段の生活の動線上に、ちょっと座れるベンチがあり、ちょっとした軽食を楽しめるだけで、毎日がちょっと楽しくなります。子連れのファミリーも、お父さんはテントで昼寝、子ども達は駆け回り、お母さんたちはカフェを楽しむなど、思い思いに楽しんでおられました。広々としたオープンスペースのカフェだからこそ可能な休日の過ごし方です。このように、イベントっぽくなりすぎず、日常生活に溶け込んだカフェのあり方が好評でした。
キャンプ料理のワークショップ
薪を燃料として非常時にも使える「ロケットストーブ」を使ったキャンプ料理のワークショップ
屋外テーブル
屋外テーブル
バーカウンター
軽食と飲みものの販売を行うバーカウンター

そして、災害時の物資輸送等を目的に整備された緊急用船着場を活用し、昼と夜の淀川クルーズ、サップボード体験、小型モーターボート操縦体験と、淀川の水面に親しむアクティビティを試行しました。とっても立派な船着場ですが、普段は誰も活用していません。いざという時に「あそこに船着場がある!」と知っていてもらうためにも、日常的な活用が大切だと考えます。通りがかったサイクリング中の人やランニング中の人が「ここから船に乗れるの?」ということで、飛び込みで参加される姿もみられました。また、淀川は大阪都心の川と違ってとにかく川幅が広く、観光船などの航行もない、いわば未開拓のひろびろとした水面が魅力です。大阪の都心部では難しい複数のアクティビティの同時進行も安全ですし、チャレンジングな新しい水面の使い方もイメージが広がりました。

淀川ディクルーズ
淀川ディクルーズ
小型ボート操縦体験
小型ボート操縦体験
メガサップボード体験
メガサップボード体験
淀川ナイトクルーズ
淀川ナイトクルーズ

夕暮れから夜にかけては、河川敷に設置したスクリーンを囲んで、淀川活性化に向けたアイデアを語り合う「キャンピングトーク」を開催し、美しい淀川と梅田のまちを背景に、水辺を楽しくするトークが繰り広げられました。
夕方から夜にかけて屋外でスクリーンをつかうと、日没までスクリーンの照度が足りずに画面が見にくくなる一方、暮れゆく空の色の移り変わりは何物にも代えがたい魅力があります。そこで日没時間を事前に調べ、トークイベントの内容を企画しました。おかげで参加者の皆さんには、トークの内容だけでなく、川辺の夕暮れも楽しんでいただけたようです。また秋の夜の水辺は存外に肌寒いものですが、キャンプファイヤーの火やバーの温かい飲み物をより楽しむことができました。普段は真っ暗で誰もいない夜の淀川に、数多くのランタンとキャンプファイヤーの灯りがともり、新しい大阪の夜の過ごし方が実現した一夜でした。
キャンピングトーク
淀川活性化に向けたアイデアを語り合う「キャンピングトーク」

さいごに

今回の実験事業「淀川アーバンキャンプ2015」では、淀川の魅力的なシーンがたくさん生まれ、朝から夜まで約300人が訪れ、「こんなに心地よい淀川での楽しみ方は初めて」「船上はとても楽しくまた乗りたい」と淀川の新たな魅力、活用の可能性を感じてもらうことができました。また、運営に関わった事業者や管理者、事務局など関係者の満足度が非常に高く、「またやりたい!」という声が多く寄せられました。今後、本イベントで明らかになった淀川の魅力を広く伝えて共感の輪を広め、淀川の河川敷に関心を持ってくれる人々をどんどん増やしていきたいと思います。
また民間企業や市民の活用を促すためのしくみやルールづくり、アクセスの改善など今回の実験事業を通じて明らかになった課題の解決を図り、引き続き新しい淀川にチャレンジする活動を続けながら、淀川が市民の憩いの場、また大阪・関西の新たな観光魅力となっていくことを目指していきます。あなたも、ぜひ淀川の水辺を楽しみにいらしてください。

(文・編集協力:株式会社ワイキューブラボ 杉本容子)

Writer's Profile
常深久代

大阪商工会議所 地域振興部 勤務。
2年前から大阪の水都に関する事業に関わる、ミズベ初心者。
もっともっと水辺の魅力を発見すべく、
川の見える物件に転居を検討中。
趣味は旅行。特技は武道。

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