2014.05.07

東京初!
水辺のカフェ、オープン。

タリーズコーヒージャパン株式会社 知久和男
事業開発本部 事業開発部管理グループ グループ長

東京で初めてオープン、河川敷地のカフェ

2013年10月7日、隅田川沿いにオープンした「タリーズコーヒー隅田公園店」は、東京都内で初めてオープンした河川敷地内のカフェであり、同時に、河川敷地に初めて進出した民間の飲食店です。
同店は、東京都が提唱する「隅田川ルネサンス」の一環であり、台東区の行政の方々、地元・花川戸の住民の集まる町会の方々で構成される「隅田公園オープンカフェ協議会」の公募によって選ばれ、隅田川沿いに出店を果たしました。
東京で初めての取り組み、河川敷地に憩いのカフェが無事オープンした裏側に迫ります。

2

コンセプトは「エコ・防災・観光の基点になれるコミュニティーカフェ」

東京で初めての河川敷地のカフェということですが、オープンするまでにどのような経緯があったのでしょうか?
まず、「隅田オープンカフェ協議会」の公募に関してですが、経済条件だけでなく、事業コンセプトがはっきりしていました。河川敷地占用許可準則の改正にあたり、「都市・地域再生」のための施設としてオープンカフェを開設すること。その事業は、水辺の賑わいを創出し、まちを活性化する、という主旨であること。そして、公募要件として挙げられた事業コンセプトの軸は、以下の4項目でした。
①人々が集い、賑わいが生まれる水辺空間を創出する。
②誰もが訪れたくなるカフェに。
③水辺とまちをつなぐ。
④地域と協働した良好な水辺空間の保全・創出。
この要件を満たすべく当社としてできる限りのプランを練り、書類審査、プレゼンテーションに臨みました。

3

単なる水辺のカフェ、ではないということでしょうか。
そうですね、この地域の“水辺全般を盛り上げる”カフェとしての位置づけと考えました。そもそもタリーズコーヒーは「地域社会に根差したコミュニティーカフェ」を理念として標榜しており、実際に店舗ごとにその土地ならではの施策をどんどんやっていく、という方針を奨励している背景があります。幸い、今回の公募に関しては要件にある「地域コミュニティーへの貢献」に合致している事業展開例が当社にありました。そして、店舗づくりのコンセプトを「エコ・防災・観光の基点になれるコミュニティーカフェ」と設定し、地元の方々と観光客に出来うる限り配慮するようなプランを提案し、選定いただくに至りました。
具体的にはどのようなプランですか?
店舗設計としては、まず、地域貢献の側面を重要視しました。公園としての景観を損なわず周辺環境との調和を大切にし、木のぬくもりを感じさせる外観に。夜は店舗を暖色系のあたたかいイメージでライトアップすることで、地域の安心・安全に貢献できるよう考えました。さらに、トイレは外付けにして周辺を通る方にも使いやすいようにしたり、AEDを設置するなど、地元の方々のお役にたてるような仕組みを考えました。
そして、観光の側面からは、ビューポイントとしてこの店舗自体が観光名所となるよう意識。前面と上部をガラス張りにして、どこに座ってもなるべくスカイツリーや桜を楽しめるような店舗設計にしました。また、外国人のお客さまも多数お見えになることから、英語が喋れるスタッフを採用したり、フリーのWi-Fi環境を整えました。台東区の観光課と提携してチラシを置いたり、観光用の映像を流したり、といったことも行っています。
左:観光地としての景観を損なわないよう配慮して設計した店舗外観
右:晴れていれば対岸にスカイビューを望める絶景ポイント。春は桜も美しい
浅草ならではの和風スイーツ「T‘s抹茶クリームあんみつ~おこし添え~」は、隅田公園店の限定メニュー。
プリプリの寒天、モチモチの牛皮、サクサクのおこしなど、一皿でさまざまな食感が楽しめる。
同店限定のコーヒー「リバーサイドブレンド」も人気のメニュー。
桜や花火をモチーフにした和柄風デザインの限定タンブラーも販売している

民間、地域、行政。連携あってこその事業実現

東京で初めての水辺のカフェをつくりあげるにあたって、苦労された点はありますか?
私が、お店を開発する仕事をするなかで、地元の方とここまで協議を重ねて店舗設計をしたのは初めての経験でした。他の店舗ではここまで地域の方々と密接にやりとりさせていただくことはありません。
まず、この店舗をオープンさせるにあたって、花川戸の住民・町会の方々、台東区の行政の方、東京都などの協議会のメンバーの方々に、店舗のコンセプトからお店の図面まで一から説明し「どういうお店づくりをするか?」という会議を数回にわたって開催。会議以外にも何度も話し合いを重ねて行きました。
商業利用していない場所にお店をつくることは、地域住民の方にとっては不安です。事業としてただ水辺を盛り上げればいい、というものでもありません。「眺望が妨げられる」「ゴミが散乱する」「生活環境が脅かされる」など、会議の際に不安要素としての意見を率直に上げていただきました。それに対して、お店の資材の搬入・搬出の時間は通勤・通学の時間帯にかぶらないように、ですとか、お店の周辺だけでなく台東区の大江戸清掃隊と一緒になって地域周辺一帯を月に1度ゴミ拾いするなど、細やかな配慮ができるよう一つひとつ対策をたてていきました。
大江戸清掃隊との清掃活動の様子
河川敷地の商業利用に前例がない分、さまざまな申請を通すことに時間がかかりましたが、この地域になじむためにどうすればいいか、さまざまなノウハウを多々いただきました。
また、委員会形式で協議を行っていくのは関係者が多くて、話を進めるのに最初こそ時間がかかりました。しかし、慣れていくと意思決定も早く、諸処の進行がスムーズに。この事業は本当に、地域と行政との連携があったからこそ、なしえたことだと思っています。

事業スキーム
※事業スキーム図、台東区に確認中

6

東京の水辺カフェ開発の先駆者として、これからの構想はありますか?
タリーズ隅田公園店の事業は占用許可と使用許可をそれぞれ台東区と東京から得ているものであり、上限3年間で再審査が行われますが、カフェは継続しつづけていきたいと思っています。
その上で、今後はもっと、もっと、まちとの連携が図って行ければと。浅草にもっと観光客が回遊するようなプロモーションの仕掛けが出来たらおもしろいですね。たとえば現在は東京都が運営している「東京水辺ライン」と連携して、ラッピング水上バスを走らせていただいております。今は乗船券をお持ちいただくとドリンクサイズがアップするサービスを開始しましたが、ゆくゆくはその水上バスの中でコーヒーをもっと楽しんでいただくためにタリーズが開催しているセミナー「コーヒースクール」を企画したりもしたいですね。また、お客さままで巻き込んで、先ほどの大江戸清掃隊との清掃活動をイベント化していったり。
今後、東京の水辺はどんどん開いてゆく流れにあるのではないかと思っています。そのなかで、水辺のカフェの先駆けとして、水辺に人を呼び寄せる事例をつくっていきたいです。そのために必要なのは、やはり地域との連携。水辺の開発は、地域貢献とまちづくりの側面が非常に強い。なにか今後ここで積み重ねていくにあたって、水辺からの取り組みは必要ですが、それをやるためにはそれを受け入れていただく、まちの方々のご理解が必要です。今後の水辺を盛り上げていくために、“水辺とまちがつながる相乗効果でさらなる盛り上がりを醸成する”事例をつくっていきたいと思っています。

7

関連リンク

タリーズコーヒー

この記事を書いた人

ミズベリング

ミズベリングとは、「水辺+リング」の造語で、 水辺好きの輪を広げていこう!という意味。 四季。界隈。下町。祭り。クリエイティブ…。 あらためて日本のコミュニティの誇りを水辺から見直すことで、 モチベーション、イノベーション、リノベーションの 機運を高めていく運動体になれば、と思います。

過去の記事

> 過去の記事はこちら

この記事をシェアする