2019.04.02 Tue

「染物の街」の未来を、東京の水辺でつくる

「染物の街」の未来を、東京の水辺でつくる

染色の祭典「染の小道」で新たな取り組みが行われています

    新宿区中井ではじまった「護岸アートギャラリー」が面白そうなので作業を見学しに行ってみた

    「染物の街」の未来を、東京の水辺でつくる

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    長年の信頼関係

    染の小道はこれまで10年にわたって開催してきた歴史がある。今回の企画を実現するにあたっても、地元の自治体である新宿区と調整があった。この川は常に土嚢がどの位置にあるかを心配しなければならないような氾濫のおそれがある川だった。それが、上流の貯水池の整備をきっかけに、新宿区としても河川のアピールのニーズがあったことが、これまでの10年の官民連携の歴史を支えている。

    染の小道には現在新宿区の職員も職務を離れれば趣旨に賛同し個人的に参加している者もいる。染物の街をアピールすることで、特徴ある街にしたいという公共マインドへの共感が10年を経て広がっていることは間違いない。

    その官民の信頼があったからこそ、今回の「護岸アートギャラリー」は実現したのである。

    イベントを超えた、まちの未来への思い

    「川の姿は、本当はこうじゃないと思って、染の小道をやってきたんです。」小林さんは言う。「せせらぎを復活させて、いまの掘込河川の上に蓋をして人工の河川をつくってでも、反物を洗うという過去の風景を復活させることが、この街のためになると考えていたんです。そのためにも染の小道をやってきた。結果、現在なお残る染物産業の工場に対するイメージが上がっている。イベントによって集客に繋がって、地元の人々も喜んでくれるようになった。近隣の学校でも染物に関する授業を盛んに行ってくれるようになった。工房がまちに支えられて残っていくことができるんじゃないか、という期待も生まれ始めました。

    川に入って糊を落とす工程「水元」を復元している様子。新宿区のwebサイトからの引用

    将来、工場の誘致や、工房の誘致をこのまちにしていくことも必要かもしれません。工場と言っても、仕立屋や染み抜きなどアパートの一室程度の規模でできる作業もあって、そういう作業をそうやってさらにこのまちを染物の街の未来を描いていけるような気がするんです。」
    水辺のまちづくりが、産業育成になっている。小林さんは、もう蓋をしたりせせらぎの復活させることそのものにそんなにこだわらなくなったそうだ。

    ポジティブな巻き込み力

    染の小道のメンバーは多様である。
    まず商店街会長がメンバーである。撮影、記録ができるメンバーがいる。染物に関わる、染色の職人や、のれんの作家もいる。実際に河川占用の手続きを行うのは、建築家のメンバーである。グラフィックデザイナーもいる。「デザインは重要で、巻き込むためにとても大切」と小林さん。巻き込まれているメンバーたちは、本業での活躍もありつつ、だれかにお願いされたわけではないのに、主体的意思として参加している。「染物は産業として内向きになりがちなんです。工程の一部を担っている職人は、どういうひとが次の工程を担うのか、それがどういう人々に使われるのか。染の小道の祭典がなかったら知ることもなかった。そして巻き込まれてきたたくさんの人々の関与を通して、染物が外に向かって開いていくのを実感しているんです。」

    夜になってあらためて眺める自分たちの成果に思わず笑みがこぼれるメンバーたち
    作業のあいまあいまに、さまざまなアイデアが生まれてきてシェアされている様子

    「護岸アートギャラリーの今後」

    護岸アートギャラリーは、今回中井駅のそばの河川の護岸10mにわたって、「七宝」柄の護岸アートを整備した。毎年10-15m程度の護岸アートを整備していくことを染の小道では計画している。

    「一年一紋。毎年柄が変わっていくことを考えています。今年は「七宝」柄。来年はオリンピックのロゴにちなんで「市松」柄。そうやって年代で柄がちがうことが、地域の歴史になって積み重なっていけばいいなと。ガウディの建築のように、いつまでも続いていく。今後も新しいメンバーが増えていくでしょう。そのメンバーの参加年によって柄がちがうことが、このプロジェクトが年に3日の機会から、年間通して染物の街としてのなにかがずっとありつづける、そういう新しい挑戦なんです」

    作業の慰労で乾杯。お疲れさまでした。この場で関わる人々が税理畑のかたや自動車業界ではたらくひとなど多様な人々が関わっていることがわかった。

    都会の三面張の護岸でも、川があらたな表現の場となることで、人々が巻き込まれていき、まちづくりにつながっていく。
    20年ぶりに訪れた中井のまちは、当時とはまったく違う街に見えた。

    「殺風景な中井がこの活動によって温かくなる」というのは、中井の居酒屋の名店「錦山」の店長

    Writer's Profile
    岩本 唯史
    株式会社水辺総研代表取締役、RaasDESIGN代表、BOAT PEOPLE Association理事、水辺荘発起人 、一級建築士

    公共空間としての水辺がよくなることで、社会がよくなると考える。建築家として建物のリノベーションを主に設計の仕事をしている傍ら、都市をリノベーションするのであれば、公共空間である水辺を外して考えることはできないと考え活動している。BOAT PEOPLE Associationのメンバーとして、いままでさまざまな水辺のトライアンドエラーを繰り返して社会に水辺の空間のあり方とつきあい方を提案してきた。
    2005年横浜トリエンナーレ出展作品「Life on Board II」「内閣府都市再生モデル調査事業、FLOATING EMERGENCY PLATFORM」「地震EXPO09(BankART)」「東京アートポイント LOB09-10」など。最近は横浜の水辺を「使い倒す」ことを目的に、水辺のソーシャルスペース「水辺荘」を日ノ出町たちあげ、都市に新しい風景をつくる試みをたくさん行っている。
    株式会社水辺総研
    RaasDESIGN
    水辺荘
    BOAT PEOPLE Association

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