2018.03.09

今年のかわまちづくり全国会議は、観光まちづくりがテーマ

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“かわまちづくりはプラットフォームが必要” 多摩大学 中庭光彦教授のプレゼンより

かわまちづくり全国会議 〜観光資源としての「かわ」のその活かし方〜が2018年2月9日開催されました。かわは観光資源なのか?内容が豊富で地方でミズベリングをすすめるにあたって非常に示唆に富んでいた今回のかわまちづくりのレポートをします。多摩大学経営情報学部事業構想学科の中庭光彦教授の講演をお伝えします。

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多摩大学経営情報学部事業構想学科 中庭光彦教授

私は水と関わりをもってすでに20年ぐらいが経ちました。以来ずっと水環境の活動に携わり活動してきた身からすると、かつては治水、利水もして環境を守ることを主要政策にしてきた国土交通省の水行政が、「水辺で賑わい」、ということをテーマにしていることに対して、嬉しい驚きを持っています。私は水文化の他、地域政策をテーマにしてきました。今回の講演では、そのような視点で具体的なケースをもとに、かわまちづくりの課題とヒントを話してみたいと思います。

観光地域計画

観光地域計画という言葉があります。観光まちづくりの基本となる考え方なのですが、前提として考えなければならない類型があります。

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この類型に沿って分析することで、自分たちの地域の特性を把握することができます。例えばその土地は「観光地」なのか「生活地」なのかは重要な視点です。
また、よく地域資源といいますが、その地域資源のなかに、集客マグネットは多いのかないのか、ということを考えなければなりません。集客マグネットとは、存在するだけで人が集まる場のことを指します。

観光地域開発には以下の下位計画があります。

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まちづくりは、横浜市長だった飛鳥田さんが当時「都市計画はかたい」と言って当時右腕だった都市計画家の田村明氏が考えついたことばです。都市計画は公的事業の企画と合意形成のことを指します。また、所有者と利用を分離して円滑化しています。それに対して、観光地域経営はひとにきてもらわなければならない、人々の「足による投票」をしてもらわなければならない。そのためには、「事業者」が魅力をつくって収益事業をつくらなければなりません。行政はそれをどう支援し、どうやって作ってもらうのでしょうか?行政がどうそれを支援する制度をつくるか、というのが観光地域計画の視点です。

地域資源とは?

最近よく地域資源という言葉が聞かれます。
私は地域資源というのは、「①集客マグネット×②促進要因」に分類できると考えています。

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集客マグネットとは、存在するだけで人が集まる場のことを指します。例として以下があります。

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宗教的聖地と書いてありますが、アニメもそうですね。そういうものが地域にあるかどうか、それを生かしているかどうかがポイントになります。

川を例に考えてみましょう。川がそこにあるだけで人は来るでしょうか?例えば山口県の錦帯橋。錦帯橋があるから私は観光で錦帯橋を見に行き、そこには川が流れています。錦帯橋には川がないと意味がありません。でも川そのものが集客マグネットではないのではないでしょうか?
ですが、集客マグネットだけあれば地域資源なのかといわれればそうではなく、実は川がそうであるように、促進要因というものがあります。

促進要因とは、存在するからといって必ずしも人が集まる場所ではないが、集客マグネットと組み合わされると相乗効果を発揮出来る要因です。促進要因には、以下があります。
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かわまちづくりの課題

かわまちづくりといいますが、かわとまちはつながっているでしょうか?私はつながりを生むためには「プラットフォーム」が必要だと考えます。

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かわまちには訪問目的がない場合がありますが、それでは訪問目的はだれがつくるものなのでしょうか?知恵が必要で、知恵が訪問目的を支えます。
だれが訪問目的をつくるのかというと、事業者です。事業者に一定の収益が見込まれるプロジェクトでないと、コミュニティは持続的でなくなる。何度行っても面白いと思う事業が望まれるわけですね。
それでは、かわまちづくりをつくるのはだれでしょうか?そのまちの人たちと行政ですよね?なので、事業者にとってメリットになる戦略、すなわちプラットフォームを誰がどうつくるのか、というのが問題なのです。

それでは、それぞれの類型に従って、事例を見ていきたいと思います。

【生活地型】大田区田園調布の例

大田区の事例

田園調布の調布堰のそばの事例です。ここはかわまちづくりで歩道ができました。これで歩いてジャイアンツの練習場まで行けるようになりました。ここは多摩川駅のそば、富士山がみえるということでできた浅間神社のそばで、六郷用水という歴史的財産もある。すでにいい感じのお店もあります。キッチンカーも出ている場所もある。あと浅間神社の川側の一階には若い人たちがお店をだしはじめて、とても面白い場所になってきています。

また、先ほど集客マグネットの説明の中で、宗教的、アニメ的聖地のことを説明しました。「シンゴジラ」をご覧になったかたなら分かるかもしれませんが、首都を防衛する作戦の指揮所が置かれたのがこの浅間神社でした。残念ながら、このすばらしいコンテンツを活かしているとは言い難いのが実情です。
シン・ゴジラで重要なタバ作戦の舞台

さきほど触れたかわまちづくりでせっかく整備された歩道ですが、写真のように並行している車道と分断されている。堤防を越えて人を誘導することができていないのですね。またシンゴジラのように、地域資源があるのにプロモーションを行っていない、ということもあります。商店街、用水、水道、道路等これらを総合することができていない。総合するためにはこのエリアを活性化したいという事業者のコミュニティと協力することが必要です。これは私の想像でしかありませんが、事業者たちと協働、連絡はされていないのではないかと推察されます。

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【生活地型】青梅市の例

青梅市、地図上で見ると駅と川が非常に近いです。でも実際は多摩川左岸は河岸段丘で非常に勾配がきつい。いわゆる時間距離が遠い。川と公園の距離は近く、川遊びやBBQに最適です。ラフティングなどで川は利用されています。
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一方まちなかはどうなっているかというと、青梅市は観光振興に力を入れていて、「映画の街、昭和レトロの街」として売り出しています。リノベーションされた蔵や織物工場を利用した工房などが興味深い。2010年には40万人の来街者がいたとされています。
ところで、青梅市は人口も増やしたいと思って、駅前にマンションが林立する事態になってしまった。これが何を意味するかというと、遠方から来る人にとって、観光地のイメージではなく、当たり前の空間になってしまい、中心地の集客力そのものの低下を意味します。現実としては、誘導しきれていないのです。

生活地であるまちでは、集客することの難しさがあります。川を地域資源として集客を補完する促進要因にしきれないという難しさもわかっていただけたと思います。かわとまちがつながっていないのが現状です。地図だけではなく、勾配を把握し、時間距離で川との近さを測ることが重要です。

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【観光地型】岐阜県高山市

岐阜県高山市は30年ぐらいウォッチしていますが、類型でいうと完全に観光地型です。一番の集客装置は伝建地区(伝統的建造物群保存地区:文化財保護法によって文化庁が指定する制度)である上三之町などの街並み。また、陣屋と宮川の朝市も人気で、集客力が高いです。特に宮川の朝市はかつては陣屋の朝市に集客面で負けていたけれども、最近では宮川の方が人気があって、買った品物を河川敷に降りて食べる姿などが見られます。川に面したオープンカフェもできていて、宮川がまちの中心を流れているコトが最大に活かされてきています。

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ミズベリングでは高山の若い人たちが川床をつくった実験が有名ですね。
私は高山で泊まったホテルで「高山に面白い事業者はいませんか」と聞き、すぐ紹介していただいたのが、この川床をつくった若い人たちの中心人物の住尚三さんでした。普通では考えられないことですが、川をふさぐかたちで川床をつくった住さんは、川に面した場所でコワーキングスペースをやっています。

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地元の事業者の中にはリノベーションでゲストハウスを開業したり、朝市があるから朝早くからやっている朝食がたべられる定食屋もある。あらたなニーズを掘り起こしているひとたちがいるんですね。
高山で強く感じたのは、川を改修するんじゃなくて、まちで事業してくれる人が、かわで何かをやってくれると、かわまちづくりになる、ということでした。

川を改修するんじゃなくて、まちで事業してくれる人が、かわでなにかをやってくれると、かわまちづくりになる

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これは高山市の事業者コミュニティの関係図です。観光協会の資料なのですが、これをみるとまちに関わっているひとたちが公的な団体によってつなげられていて、既に事業者による調整組織が出来上がっているんですね。おもしろい事業者が組織化されていて、調整組織ができあがっている。

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他にも例えば長井市のおもしろい事業者を、ネットワーク図で表すとこんな感じになります。どういう活動でどういうひとたちがつながっているか、可視化するといいと思います。
高山のかわまちの特徴は、宮川がまちの中心にあって、川に平行した通りは賑わいの中心。地元の事業者があらたな事業に参入していて、リノベーションが盛んである。その事業者のコミュニティが複数あるということにあります。
面白い事業者が組織化されていてネットワーク化されているからこそ、かわが生かされているといえます。

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かわまちづくりのプロセス

観光かわまちづくりのプロセスをまとめてみたいと思います。

まず、地元の面白い人をさがす。(資源開発)その人々を結びつけ、テーマコミュニティをつくり、面白い企画をたてます(事業企画)。その人々に地域資源発掘・希望する川の使い方を考えてもらい、実現してもらいます。面白い事業者にかんがえてもらう、ということですね。(事業実施)また、そのひとたちの実現を支援することも必要です。(事業支援)もちろん、活動、体験情報を拡散させることが重要です。(情報発信)

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それでは、面白い、というのはどういうことなのでしょうか?よく学生に「先生、面白いってなんですか」と聞かれます。私が面白いというのは、笑えるとかそういうことではないですね。
いままでのやりかただとつまらないと思っている人が面白い人。つまり、お客さんのニーズに答えるだけではなく、お客さんが思いつかないような事業を提案しようとする人のことですね。つまり、イノベーティブな人のことを私は面白い人だと答えています

かわまちづくり成功の原則

観光地経営目線でかわまちづくりを成功に原則をまとめました 。

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川を空き地にしてはいけません。訪問目的をつくることが必要です。整備しておわり、では訪問目的になりません。人がそこにどう関わるかが重要です。
賑わいはまずメディアありきです。実は観光は江戸時代からメディアが重要な役割を果たしました。伊勢講、富士講は、人々が浮世絵を通していってみたいと思ったことで、実際に行くひとが増えたのです。見て実際行ってみたいと思わせる。情報発信は非常に重要です。川に訪問目的をつくるなら、メディアは切り離せません。
かわまちづくりは政策ですが、事業者が関わらないとうまくいかないことは容易に想像できます。若い出る杭を探しましょう。出る杭にチャンスがめぐってくるような寛容さが必要です。

また、居場所、というキーワードも重要です。みなさんにとって第一の居場所はきっと家でしょう。第二の居場所といえば、職場や学校にあたります。いまは第三の居場所、つまりサードプレイスが注目をあつめています。
公有地(河川、道路)は、民有地の事業者と連携をすることが重要です。川だけ使えればそれでいいのでしょうか?相互の連携がなければ、かわまちづくりとは言えないでしょう。

ところで、プラットフォームとはなんでしょうか?

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プラットフォームを事業者が使うと、標準ルールに従うことで、事業コストや取引コストが劇的にさがります。
また、つながっている人が多いほど利便性が雪だるま式にあがるもの、とも言えます。

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郊外におけるかわまちづくりの視点

郊外にかわまちづくりを計画するとき、難しい問題に直面します。
1.事業者が少ない
2. 中心地の集客マグネットもない

ということが往々にあります。

例えば、郊外の河川とまちの民有地をまたぐ場所で、6つのコンテンツを整理して施設を計画するとしましょう。
どのようにするとかわとまちが一体的に使われたことになるのでしょうか?
よくある提案が、「健康のために川を使いたい」ということ。
こういう提案があると、じゃ、公園作ろうということになりませんか?空き地にしておこう、ということになりませんか?

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河川側はただの空き地にしておいて、民間土地側だけを機能をつめこむことはかわまちづくりと呼べるのでしょうか?

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たとえば、この機能群のなかで、河川敷地のなかにおいたらいいものはなんでしょうか?
このなかだと、軽トラ市がおけそうですね。しかしそれだけではかわとまちは分断されています。
たとえば、カードリーダーをかわのほうでも使えるようにして、ポイントが共通化されたりすると、どうでしょうか?
河川敷地のなかに、あらたにいく目的がうまれますよね。
また、飲食施設なんかもありそうですよね。

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このようにいくつかの機能を川側におくことで、河川の空間が生かされるとともに、その機能があることによって、町側にもむすびつけることができる。

これを実現させるために必要なのが、プラットフォームです。川とまちを横断しているプラットフォームがないと、これは単なる民間事業者のアイデアになってしまいます。このように事業者が円滑にその場所をつかって事業ができるようにするのがプラットフォームなのです。

観光地経営視点によるかわまちづくり成功の原則とは?

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現地をあるいて現地の事業者たちから話を聞かないとわかりません。
そして、イノベーションをおこせる面白い人を探すことが重要です。そのひとたちを結びつけることが必要なんです。
かわのなかからではなく、まちの方から。かわのそとから事業者を結びつけて川をどう使うか。という視点にたってかわまちづくりを考える必要があります。

中庭光彦教授
多摩大学経営情報学部事業構想学科
近著 コミュニティ3.0

 

この記事を書いた人

株式会社水辺総研代表取締役、RaasDESIGN代表、BOAT PEOPLE Association理事、水辺荘発起人 、一級建築士

岩本 唯史

公共空間としての水辺がよくなることで、社会がよくなると考える。建築家として建物のリノベーションを主に設計の仕事をしている傍ら、都市をリノベーションするのであれば、公共空間である水辺を外して考えることはできないと考え活動している。BOAT PEOPLE Associationのメンバーとして、いままでさまざまな水辺のトライアンドエラーを繰り返して社会に水辺の空間のあり方とつきあい方を提案してきた。 2005年横浜トリエンナーレ出展作品「Life on Board II」「内閣府都市再生モデル調査事業、FLOATING EMERGENCY PLATFORM」「地震EXPO09(BankART)」「東京アートポイント LOB09-10」など。最近は横浜の水辺を「使い倒す」ことを目的に、水辺のソーシャルスペース「水辺荘」を日ノ出町たちあげ、都市に新しい風景をつくる試みをたくさん行っている。

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