皆川袈裟雄著『よみがえれ!早川堀』の紹介

皆川袈裟雄著『よみがえれ!早川堀』(新潟日報事業社、2014年10月2日、1500円+税)

皆川袈裟雄著『よみがえれ!早川堀』(新潟日報事業社、2014年10月2日、1500円+税)

 

NPO新潟水辺の会・会員の皆川袈裟雄(けさお)さんが『よみがえれ!早川堀』という本を新潟日報事業社より上梓された。本の出版には、執筆はむろんのことこまごまとした作業が必要であり、大変なエネルギーを必要とする。皆川さんは80歳を目前にそれを成し遂げられたのである。ただそれよりも、早川堀そのものを再生させるために皆川さんが費やしたエネルギーも膨大であり、ただただ敬服するのみである。

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大正14年(1925年)の新潟市街地の堀 (同書23頁から)

 

早川堀はかつてたくさんあった新潟の堀の一つであったが(図参照)、堀が埋め立てられてからは早川堀通りとして、新潟歴史博物館(みなとぴあ)から廻船問屋であった旧小澤家住宅の導線に位置しており、延長は約650mであった。ここを「早川堀通り道路整備事業」の一環として、そのうち約400mが水路として再生されたのである。

 

早川堀の再生には、地域住民と行政の間で徹底的な話し合いが行われた。2006年6月に「早川堀通り周辺まちづくりを考える会」が発足し、早川堀が完成する2014年3月にまでに333回の勉強会が開かれている。なんと9日に1回の割合で勉強会が開かれていたことになる。これに皆川さんは全部出席したとのことである。また、『早川堀通り周辺まちづくり時報』というニュースレターが発行されてきたが、創刊号が2006年6月26日で、最終号が2014年8月21日で、83号に達している。ひと月に1回は出されていたことになる。こうした記録を見るだけで、早川堀通りの住民たちがどれほどのエネルギーを費やされたのか、そしてそれをリードされてきた方々の努力と、『誰も置き去りにしないまちづくり』という思想の堅固さに感嘆する。

 

実は、NPO新潟水辺の会としては、同じ新潟の下町にある他門川(図参照)の再生を水辺の会発足当時から目標の一つに掲げていた。会員の上山寛さんが、その復活のパースをアメリカ・テキサスのサンアントニオを模しながら美しく描いてくれており、それをいろんなイベントで披露してきた。また、韓国ソウルで、高速道路で覆われていた清渓川の復活工事が始まった時には、2004年に見学し、2005年には内閣府からの補助金で他門川再生のフォーラムを新潟で開き、清渓川計画を指導していた李龍太氏を招へいし、大いに議論を重ねた。そして、2006年には清渓川の復元工事の完成を受けて、その視察にも行ってきた。また、私の新潟大学での研究室でも、2009年度の修士論文では陣内洋一郎君に『都市のケル水辺再生に関する研究-新潟市他門川を例に-』ということで研究テーマに取り上げてもらった。彼の研究では、地形測量結果から、部分的に小規模な堤防を造り、洪水時には水門で遮断すれば、通常時は自然流下で信濃川から取水し、他門川を通して、信濃川に排水可能であることが分かった。しかし、残念なことに他門川沿いの住民からは全く関心を寄せていただくことができず、われわれの他門川再生は夢に終わったのである。

2014/07/19の総会後に、皆川袈裟雄さんに早川堀を案内していただきました。

2014年07月19日の総会後に、皆川袈裟雄さんに早川堀を案内していただきました。

 

そうした経過を皆川さんは眺めながら、早川堀をどうしたら再生できるかを熟考され、早川堀通りの住民を早川堀再生の渦の中に巻き込んでいかれたのであった。本書では、その経過が克明に記されており、物事を実現するには、こうした過程を踏まなければならないことを教えてくれる。

 

ただ、皆川さんは、早川堀が復元したとは書かれていない。本書の冒頭には「平成26年3月、早川堀通りに堀をイメージした水辺が完成した。」と書かれている。確かに、今回完成した水路には、3区間に分けて、水道水を循環させているのであり、昔の早川堀とは全く異なると言っていい。3区間に分けたのは、1区間で水を流すと、水路には勾配をつける必要があり、末端はかなり深くなり、子供の落下などを考えると、水路を浅くしておく必要があり、3系統に分けたということである。そして、その細部に至るデザインの見事さもさることながら、いざという時の防災トイレや防災かまどなども考慮されている。

 

こうした、かつての堀とは異なるものを再生させて意義があるのかという問いが出されるであろう。しかし、堀が埋め立てられた後の早川堀通りの佇まいと、水路が再生されてからの佇まいを比較して、後者の方が断然良く、夕暮れのライトアップされた情緒は人をひきつけてやまないであろう。早川堀通りの住民の方々は、この水路を再生させた経緯に誇りを持ち、これからその活用・維持に魂を入れ、子孫に宝として残されることを期待してやまない。

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