2016.11.27

サード・プレイスのつくり方 ”TOKYO ART FLOW 00″二子玉川 ミズベリング・スペシャルインタビュー

最先端の水辺とまちのあり方について、ミズベリング・ライターがディープに取材する「ミズベリング・スペシャルインタビュー」。第一弾はサード・プレイスをテーマに二子玉川の”TOKYO ART FLOW 00“からスタートします。

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二子玉川駅を降りて、夏の光が射る雑踏を歩く。心地良い風が坂の下からやってくる。その坂を下ると、目の前にゆったり流れる多摩川が広がる。手前に小さな流れがある。武蔵野の湧水を集めた野川だ。野川と多摩川の合流点であるこの場所には、三角形の中洲があって、樹林も豊かな河川敷公園・兵庫島公園となっている。野川にかかる結界のような細い橋を渡ると、普段見たこともない光景と出会った。

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透明なスキンで包まれたコクーンがぷるぷると打ち震えながら、空を映し出している。コクーンの中には何人かの男女が座っていて、河川敷に不時着した宇宙コロニーのような感じだ。コクーンの先には馬が軽やかにステップを踏んでいる。馬の周りには人だかりができていて、女性たちの嬌声が上がる。246の橋脚は、色鮮やかなストライプのペインティング・デザインによって、斬新なアート作品に生まれ変わっている。野外フェスのようなタープやテントが並び、思い思いに人びとが過ごしている。

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そう、この感じは、いい感じにオーガナイズされたフェスやレイブの会場で感じるものと同じだ。自由でハッピーなヴァイブレーションに満ちている。人を楽しませるためのクリエイティブな仕立てがあちこちにあって、その手作り感も含めて、オーディエンスが受け入れている感じだ。いま、ここにいる人たちはほんとに楽しそうだ。この時間、この場所は、河川でも公園でもない、そして街なかのにぎわい施設でもない、そのどれにも当てはまらない第三の場所になっている。サード・プレイスだ。サード・プレイスはアメリカの社会学者レイ・オルデンバーグが著書『The Great Good Place』で提唱した概念で、通常、自宅というファースト・プレイス、職場というセカンド・プレイス以外の、くつろげる、コミュニティライフのアンカーとなる場所と説明される。本稿では、サード・プレイスを人びとが普段演じている仮面から開放され、本来持っている自由な感性を羽ばたかせて、創造的な交流が産まれる場所というように定義してみたい。

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このサードプレイスの空間は、二子玉川の河川敷とまちを使った三日間限定のアート・フェスティバル「TOKYO ART FLOW OO」の水辺会場としてコーディネートされている。コクーンや、馬、橋脚といったものそれぞれがアーティストによるアート作品になっており、人びとはそれを自由に回遊して体験する。通常、公園などの施設は、ここは遊ぶ場所です、ここは自然と触れ合う場所ですといったゾーニングによって定義されており、人びとはそのコードに従うように無意識に要求されている。しかし、二子玉川の「TOKYO ART FLOW OO」空間にはそのようなゾーニングやコードは存在しない。むしろアートという仕掛けとインタラクティブに関わることを通して、自分にとってこの場所や対象物はどういう感覚をもって立ち上がってくるのかを、それぞれが各々の感性で感じ取るという塩梅だ。それがサードプレイスの自由さ、楽しさを生んでいると思う。

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「TOKYO ART FLOW OO」はキュレーター、地域に関わる企業、地元のエリマネ組織といった多様な人たちの企画と運営によって、実現している。立場が異なる人びとが、どのような思いと考え方によって、このようなサードプレイスを出現させるに至ったのか、インタビューしてみることにした。インタビュー対象は、アートプロデューサーのスパイラル・シニアプランナー松田朋春さん、東急電鉄都市創造本部開発事業部副事業部長の太田雅文さん、二子玉川エリアマネジメンツ代表理事の佐藤正一さんの御三方である。

TOKYO ART FLOW 00アートプロデューサー、スパイラル・シニアプランナー:松田朋春さんインタビュー

kyohei
今回のアートフェスで、二子玉川のまちだけでなく、とても上手く河川空間を使われています。川を取り込んだ理由をお聞かせ下さい。
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まちの特徴をアートの素材として使いたかったのです。二子玉川のまちには、川があります。川はまちより歴史が長い、生活の前提です。そこで、川に着目して橋脚を使ったり、水面を使ったりしたかった。
「TOKYO ART FLOW 00」のテーマカラーはマゼンダですが、これは緑の補色です。緑という川に代表される「自然」を補うコントラストとしての「アート」を示しています。
kyohei
河川敷という自然が豊かな空間に、アート作品がうまく配置され、非常に魅力的な空間が出現しているように思いました。
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分かりやすくないとダメだと思いました。たまたま通りがかっても面白がってくれるような。そして、見たことのない風景、ちょっと変だと思うような一生忘れないようなシーンを生み出したいと思いました。馬をアートとしてあの場所に置いたのもそういう意図がありました。
kyohei
アーティストはどのような基準で選ばれたのでしょうか?
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公共空間の戦略的な活用、都市空間の自由で柔軟な活用ということをテーマとしています。そのために、どのように表現を行なってもらえるか、パブリックな場での表現に経験値のあるアーティストを選んでいます。

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kyohei
246の橋脚を彩ったラング&バウマンの作品がとても印象的です。どのような経緯であの作品が出現したのでしょうか。
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全体の中で、シンボリックなものが必要だと思っていました。撮影スポットとしても。
海外からの招聘アーティストとして参加いただいたラング&バウマンには、会場全体を示してどこに作品を造るかロケハンしてもらいました。それであの橋脚を彼らが選びました。
kyohei
なぜ土木構造物を選んだのでしょうか。
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彼らのこれまでの作品も土木構造物や大きな建築をベースとして使っています。作品として効率的だからでしょう。
kyohei
それは構造物自体のマッスがあったり、造形を素材として取り込めるということでしょうか。
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はい。そうですね。
kyohei
一方で、橋脚は管理者によって管理されるインフラです。あのような表現を行う許可を取るのに困難はなかったのでしょうか?
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それはもう知恵比べですね。他の作品もそうですが、公共空間の場合は道路管理者、公園管理者、消防、警察等と協議して、解釈次第のところにソフトに落としこむ感じです。
kyohei
管理者とのやりとりというのはアーティストが直接行うのでなく、事務局が行なったのでしょうか?
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アートをまちにインストールするための制作部隊がいて、届け出や交渉などは事務局としてワンストップで行なっています。
kyohei
橋脚はペイントでないと聞きました。どのような方法を取ったのですか?
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今回は3週間で原状回復しないといけないという条件がありました。そこでカッティングシートで橋脚を覆っています。事前にアーティストに色見本を見せてOKを取りました。
kyohei
ぴっちりと貼りあわせの精度が非常に高いですね。

実はペインティングではなく、カッティングシートを精密に貼り合わせている。

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はい。中川ケミカルさんというメーカーです。技術力は高かったですね。
kyohei
日本の技術で、日本の法規制をクリアして、海外アーティストの表現を実現したということですね。
ところで、東京の中で、二子玉川という場所でアートフェスを行うことは、どういう位置づけにあるのでしょうか?
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東京の東側のエリアは、アーティストが空きスペースをリノベーションしてスタジオやしていたりギャラリーがあったり、既にアート活動のリソースが豊富にあって、アートフェスをやりやすい状況にあります。二子玉川、自由が丘といった東京の西側エリアは、それが少し弱く、アート的には穴が空いていているように見えます。逆にこのあたりでやる意味があると思いました。いろいろなアートフェスの特徴があっていいと思っています。たとえば、「六本木アートナイト」では「夜」が資源となっていますね。そのまちならではの、公共空間の資質を個性として活かすということを考えています。
kyohei
二子玉川ならではの資源として、水辺は、どのような個性を持っていると思いますか?
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アートキャンプということで、河川敷で焚き火をしながら少ない聴衆と制限時間なく話し込む「キャンプファイヤートーク」というイベントを行なったのですが、とても良かったです。3つのグループはそれぞれ4時間話していました。火を囲んで、ゆっくり話す時間を共有するという、ここでしかできない体験でした。

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kyohei
もともと芸能は河原で発生したという説もありますが、アートの原点かもしれませんね。
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秩序の一番外側にあるという経験を、水辺は共有できると思います。
kyohei
オープニングセッションで、アートはまちに見通しを与えるという話がでましたが、アートはまちづくりにどのように貢献できるか、お聞かせ下さい。
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アートは未来の感受性を先端的に表現するようなところがあって、「まちに見通しを与える」というのは、公共空間において未来のプロトタイプを見せてくれるというような意味です。
アートの価値は、人類的、普遍的なものです。アーティストはまちのためにやっているのでなく、自分の表現のためにしているから面白いのです。それが結果的に、まちに新しい機会や作用をもたらします。そのようなアートフェスを自分たちのまちで行えること自体が誇らしいと思えれば、それはシビックプライドにも繋がっていくのではないでしょうか。

水辺、河原者、マージナルな場所から秩序にフィードバックしうる価値がうまれる。アート×水辺という文脈は昔も今もとても面白いですね。
続いて、東急電鉄都市創造本部開発事業部副事業部長の太田雅文さんです。

東急電鉄都市創造本部開発事業部副事業部長:太田雅文さんインタビュー

kyohei
TOKYO ART FLOW 00というアートイベントを、なぜ二子玉川でやろうとされたのでしょう?
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ライズの開発も終わって、次の情報発信のフェイズの手段として、コンセプチュアルなもの、クリエイティブなものをやりたいと思っていました。特にアートでなくてもよかったのですが、ライブ感のあるコンテンツをやりたいと。
kyohei
公共空間の使い方の実験という意味もあったのですか?
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はい、そういう場作りをやりたいなと。玉を投げてみて、これに賛同できる人をキャッチしたいと。別に地域の人でなくても良くて、川の空間を使ってみたい人を集めたいと。その中で駅と川の関わりも深めたいと考えました。
kyohei
東急電鉄としては、二子玉川をどう位置づけているのでしょうか?
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いろんな人に住んでもらいたいのです。その結果、まちで、何か新しいものが生み出される。そんなところに興味を持つような大企業が現れるような。
kyohei
住民も企業も。
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田園都市線は、郊外からワーカーを都心に運ぶ鉄道です。
kyohei
郊外はベッドタウン、都心は働く場所という区分があったと。
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ええ、そういったいわば旧来の鉄道のビジネスモデルと違うものをやりたい。それは、まちの中に職住や店舗などが混在して、まちが多様化していくという方向です。
kyohei
単機能ではない、ミクストユースというわけですね。

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そういうことです。長野県の善光寺の若者が始めた不動産屋があって、まちがリノベーションで盛り上がってクリエイティブな人が集まっているような状況などはいいなと思います。
kyohei
エリア・リノベーションの事例として有名ですね。
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はい、二子玉川でも「コミュニティ・リビング」などサードプレイス的なものの提供をしたり、それがオフィス的なものと繋がっていくなどを狙っています。媒体的な人材が集まって、いろいろな事業アライアンスが組めるような状況になれば面白いなと思います。
kyohei
ライズには楽天が入居されていて、colabなどのコワーキングスペースもありますね。
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楽天はIT系大企業で、これからずっと一緒に地域を盛り上げていきたい、と思っています
kyohei
同時に、ITは事業環境の変動が激しい業態ですね。そうすると、常に入居の可能性がある企業を惹きつけていく必要がありそうですね。そこがクリエイティブ・シティというコンセプトにも繋がっていると。
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二子玉川は、従来のオフィス立地ではないのです。クリエイティブ・シティであるために、QOL(クオリティオブライフ)的にプラスになることをやりたい。それを地域に根付かせるための社会実験をやっていきたいと考えています。「TOKYO ART FLOW 00」もその一環です。

二子玉川は川向うと川手前をつなげる場所

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二子玉川には、多摩川を挟んで川向うと川手前という区分があるんです。で、川の手前がオフィス街の拡張限界になっている。
kyohei
彼岸と此岸。川がまちのキャラクターを変えているんですね。

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はい。さらに、面白いことに、多摩川を挟んで、両岸に野毛とか丸子とか同じ地名があるんですよ。
kyohei
等々力も多摩川沿いに、世田谷と川崎の両方にありますね。瀬田や宇奈根なんかも両岸にありますね。
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よくご存知で(笑)。あと、二子玉は、高台と低地でまた住んでいる人のキャラクターが違いますね。高台は昔から住んでいた人たちがいる。
kyohei
低地は多摩川の氾濫原で、昔は流路を頻繁に変えていたらしいですね。近代に入って治水が進み、堤防で流路を固定するようになってから、ひとつのムラが、彼岸と此岸に分断された。ムラといっても、土地利用はほとんど水田ですよね。
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いまは、川を境界にして行政区も違うんですよね。
kyohei
低地は、もともとは氾濫原という同じアイデンティティを持つ場所だから、「多摩川区」という区を作っても面白いかもですね。
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ああ、なるほどですね。現在の二子玉川では、川向うには、シングルやDINKSが住んでいて、川手前には子供持ちや、家族が住んでいる傾向があります。川向いには、独身でクリエイティブな人が住んでいるかもしれない。
kyohei
江戸時代、隅田川の川向うの墨東に、北斎や広重などのアーティストが住んでいたみたいな感じですね(笑)
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そうそう。われわれとしては、そういうクリエイティブ層が、川を渡ってこちらに来て欲しいんですよ。川向うのシングルも結婚したら川手前に住むのかもしれないし。
kyohei
東急電鉄の東浦さんがミズベリング・ジャパンでプレゼンされた「二子玉川ペデストリアンデッキ(歩道橋)構想」というのも、そういう背景があったんですか?
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そうですね。多摩川にある程度幅をもった歩道橋を架けて、自転車と歩行者が両岸を余裕を持って行き来できて、川向いと川手前がつながるようにする
kyohei
橋の上で、マルシェやライブなんかもやって、水上のにぎわい空間になるといいですね。

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そういうこともできるといいですね。二子玉にはかつて、渡し船があったんですよ。舟運もやりたいと思っています。二子玉の下流に堰があるので、そこまで船で来て、あとは堤防の上を水陸両用バスで走って、二子玉まで来るみたいな。
kyohei
それは、面白いですね。ぜひ実現していただきたいです。今回は、ラング&バウマンの作品が246の橋脚に一時的に出現しましたが、ああいいうのも継続的にやることは考えておられないんですか?
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今回は、時間がなかったのですが、有識者委員会をつくって、公共的な占用を道路管理者と詰めれば使えるようになると思います。
kyohei
東急さんも主要メンバーとして参加しておられる、「二子玉川エリアマネジメンツ」では、どのようなことをされるのでしょうか?
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河川空間と道路空間の活用というのがテーマのひとつになっています。そういう許認可をとりまとめる組織になりたいと考えています。社会実験として河川敷でのハナミズキカフェや、アートフローではキッチンカーの運営などをエリマネで行いました。堤防の利活用もやりたいと思います。二子玉川のまちなかに旧堤防があるんですが、そこを駐輪場に活用するなんかもアイディアレベルであります。

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街なかの多摩川旧堤防。大正7年(1918)着工の多摩川改修工事にて昭和8年(1933)に完成した
kyohei
あの堤防は治水要件としてまだ必要なもののはずですので、堤防のマルチユースならできそうですね。今回、「tokyo art flow」で使った河川敷の管理者は、京浜河川事務所ですか?
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あそこは、兵庫島公園となっていて、世田谷区が河川から借り受けて管理者になっているんですよ。
kyohei
公園用地なんですね。営業的な利活用など、協議が難しいとかはありませんか?
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二子玉川エリアマネジメンツにも世田谷区がアドバイザーとして入っているので、話はしやすいですよ。
kyohei
そうでしたか。これから二子玉川の水辺でワクワクすることが起きていくことを期待しています。

高台と低地、川向うと川手前など、意外にもブラタモリのようなトークがでてきて楽しい展開でした。
多摩川がオフィスエリアの限界になっていて、東京の拡張というマクロな分節・境界設定になっているという話はポートランドの都市成長限界(urban growth boundary)のようですね。二子玉川というまちのポジションは、都心の中ではエッジ・シティであって、それを企業がどう捉えているかという視点が伺えたと思います。水陸両用バスも含め、今後の展開も楽しみです。
続いて、二子玉川エリアマネジメンツ代表理事 佐藤正一さんです。

二子玉川エリアマネジメンツ代表理事 佐藤正一さんインタビュー

kyohei
TOKYO ART FLOW 00の一般の方の反応を教えて下さい
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アートイベントを通して、河川敷を使って、あのような空間が出現し、体験できたのが新鮮だったという声をよく聞きました。エアストーンやお馬さんがいたりしたことも含めて。そんな川辺で、自然とビールを飲みながら語らったりできたのが、とてもよかったと。「今度は、いつやるんですか?」とか、「毎週あってもいいですね」とか、そういう声も聞きました。

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kyohei
都心の中にありながら、ああいう場所はなかなかないですよね。
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河川敷は、自然の空間の中に溶け込んでいて広いです。そういう場所をどう使えば、空間と時間を楽しむことができるのか、ハレの場を演出する実験でした。
kyohei
二子玉川エリアマネジメンツとして、水辺をどのように使っていこうとされていますか?
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河川は地域の最大の自然資源と捉えています。エリアを盛り上げていくには、二子玉川ライズの開発空間だけでは限界があります。エリマネの対象としては、河川の自然空間や、二子玉川の商店街も含めた空間が複合的にあります。まち全体の中で、水辺の位置づけを上手く活用するプロジェクトを着手するにあたり、まず兵庫島の河川空間で実験しようと考えています。
kyohei
兵庫島では、どのようなことを行なっていく予定ですか?
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今回のtokyo art flowでは、キッチンカースペースはエリマネで運営しました。これは継続的に、頻度を上げて行っていきたいと思っています。同時に、ドロップインで初めて河川敷に来られたお客さんに対して、安全講習や、ライフジャケットの貸し出しなども行っていきたいです。

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kyohei
河川敷という公共空間を使って、収益事業を行うということですね。
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はい、一方で、その収益の一部を河川での様々な活動の資金にしたいです。水辺の環境整備や、ライフジャケットの貸し出し、水辺のアクティビティのサポートなどの原資になればと思います。地元に対しては、そういうことも含めて丁寧に伝えていけば可能となるのではと考えています。
kyohei
二子玉川はどのようなまちを目指すのでしょうか?
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過去の歴史を踏まえた上で、多様な文化、ユニークな人が集まるまちを目指したいです。いろいろな人が生活し、働き、新しいものが生まれていくようなまちです。そのためにも、自然空間としての水辺は欠かせない資源だと思います。

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いかがでしたでしょうか。インタビューで佐藤さんが語っておられたキッチンカーの活用は、「二子玉川水辺キッチンカープロジェクト」として実現し、今年の11月12日から12月4日(日)までの土日の日中にオープンしています。ぜひ足を運んでみて下さい。

三名の方のインタビューを通して見えてきたこと。それは都市に水辺があるだけで可能性がとても広がるということです。二子玉には二子玉川ライズがあり、都市再開発としてはLEEDゴールド認証も取り、すばらしい環境が実現しています。でも、それだけでは、多様な人材が集まり、自由なインスピレーションが羽ばたく場所になるかというと、もう少し違ったコンテキストも欲しい。それが水辺というサード・プレイスなわけです。都市の開発コードはもちろん大事ですが、そこから逸脱するベクトルとしての水辺。人間以外のエコロジカルなものや完全にコントロール出来ないものとコネクトしていることがポイントです。これらがセットになることによって、「アーバンネイチャー・ミクストユース」という新たな都市デザインの姿が見えてくる。これらはNYやロンドンでも実現しようとしている、グローバル都市間競争時代の先端都市のトレンドと言えるのかもかもしれません。

この記事を書いた人

ランドスケープ・プランナー

滝澤 恭平

ランドスケープ・プランナー、博士(工学)。 「ミズベリング・プロジェクト」ディレクター、株式会社水辺総研取締役、日本各地の風土の履歴を綴った『ハビタ・ランドスケープ』著者。大阪大学卒業後編集者として勤務。2007年工学院大学建築学科卒業、愛植物設計事務所にランドスケープデザイナーとして勤務後独立。2022年九州大学大学院工学府都市環境システム専攻博士課程修了。都市の水辺再生、グリーンインフラ、協働デザインが専門。地元の葉山でグリーンインフラの活動を行う。

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