2016.02.19 Fri

みんなで川に入って新たな価値を見出そう。国交省水管理・国土保全局長、水辺を語る。

みんなで川に入って新たな価値を見出そう。国交省水管理・国土保全局長、水辺を語る。

ミズベリングジャパンに登壇する国土交通省水管理・国土保全局金尾健司局長に、川のこと、地域のこと、そしてミズベリングについてお聞きました。

みんなで川に入って新たな価値を見出そう。国交省水管理・国土保全局長、水辺を語る。

カヌーで見る川と、技術者として見る川は一緒です

――プライベートでの川との関わりを教えてください。

 もともと、田舎で育ったので、川で遊ぶのが好きでした。子どもの時に住んでいたのは、お茶で有名な宇治という場所で、宇治川の支川が流れていました。川で魚を取ったり、泳いだり、「川ガキ」でした。
 今でも趣味で、カヌーと釣りをしています。カヌーは広島の太田川で、地元の方に誘われて、始めてみようと。やってみると、カヌーで水面から見る景色が、陸上で歩いて見る景色とまったく違うんですよ。これは面白い世界だなと思いました。休みの日には、車にカヌーを載せて、川まで出かけます。関東近辺ですと、那珂川、鬼怒川、利根川、大井川などによく行きます。一日に20kmほど下る時もあります。「ホワイト・ウォーター」といって、瀬に白波が立っていて淵もあって、結構スリルがあって楽しいです。けど、もう年だからさすがに怖いですね。最近は、おだやかな流れの方がいいです(笑)。

――好きな川はありますか?

 魚野川という越後湯沢を流れている川が、本当に水が綺麗で好きですね。この川にはサケも上ってきます。釣りは九州の球磨川で、ヤマメ取り名人の人から教わったんですが、ビギナーでも面白いほど釣れるんです。渓流釣りで、餌はトビゲラとか川虫を探して釣ります。

――カヌーで川を見る時と、技術者として川を見る時では違いはありますか?

 一緒ですね。川を見て肌で感じる感性を大切にしています。川の仕事をしている人は、川が好きな人が多いんですよ。その結果、川を大事にしていきたいなと考える人が多いです。ちなみに、砂防は、山が好きな人が多いですね。

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地域で信頼関係をつくるには、自分をさらけ出すことです。

――これまでお仕事で関わってきた川はどのような川でしょうか?

 
 日本を代表する様々な個性的な川と縁がありました。
 最初に仕事をした利根川は、人との関わりが深い川でした。川を利用して米をつくる、人と川が戦いながらも共生していく、そんな川でした。
 それから、奈良盆地を流れる大和川に赴任しました。雨の少ない地域で、川は人に利用されつくし、傷めつけられているような印象を持ちました。もともと条里制に沿って、流路がクランクに形づくられているので、増水してもうまく流れてくれません。そういう条件の川が、都市化によって牙を剥き、洪水がたびたび発生しました。川の中にできるだけ雨を流さないように、雨を陸側で貯留・浸透させる「総合治水対策」を行なってきました。宅地開発で浸透枡を設置してもらうなど、市民に協力してもらうことも必要でした。
 次に島根県の斐伊川で仕事しました。河口域は、宍道湖と中海となっていて、ワカサギやシジミなど「宍道湖七珍」という地域の水辺の名産がたくさんあります。松江の街には、大橋川という風光明媚な場所があって、お城の堀川など城下町と水辺が一体となった水辺空間が特長でした。
 そして、九州の球磨川です。清流で、地域のひとが大変大事にしている川でした。ここで川辺川ダムの計画があり、反対運動もありました。ダムをつくると川の自然が失われると。一方では、水害もあり、危険なところもたくさんある川です。できるだけ清流を残しながら、治水との折り合いをつけるということを、現場で考えてきました。
 
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――意見が対立する中で、仕事を進めるのは大変ではないですか?

 川とはそもそも利害が対立する場です。上流から流せば下流が溢れる、左岸が洪水になれば右岸は守られる。いろいろなステークホルダーが川を通じて関係を持っています。他の社会資本と比べて、川は利害をどう調整するかということがより重要となってきます。私も技術者として利害調整の仕事をしてきました。

――どのようにすれば利害調整はうまくいくのでしょうか?

 話し合い、意見を出す場をつくることですね。それも本当のところではどうなのと、本音を出しあう場です。多様な意見を持って話し合う場があれば、利害が対立していても、お互いに折り合いがつく場面もあります。ミズベリングには、そのような本音で話し合える場つくりも期待しています。

――本音で話しあいを行うための技術はありますか?

 やはり、自分をさらけ出すことですね。この人とは折り合えるかもしれない、信用できるという信頼関係をつくる。どんどん地元に入ることです。県庁、市役所、市民、地元のオピニオンリーダーと信頼関係をつくる。その時、キーマンからの信頼を得ることが大事です。意見を束ねてくれるキーマンやコーディネーターがいると、バラバラな意見のままやるのでなく、集約できるようになってきます。 

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多様な川の価値をぜひ実現してほしい。

――川の未来とは?

 川はいろいろな価値を持っています。まず、自然環境の価値。これは日本全国の河川で多自然川づくりを進めています。また、自然体験の価値。人格形成にも貢献するということで、河川での環境教育が盛んになってきています。さらに、癒しの場。病気の療法にも効果があるかもしれません。まだデータでは実証されていないのですが、患者が川で過ごす時間を持つ秋田の病院では、患者さんが、とてもイキイキされていることが報告されています。ビジネスやアートなども含めて、これまで光の当たっていなかった川の価値を見出す時代です。市民や民間事業者の方も、食わず嫌いでなく、どんどん川に入ってきてもらって、川のいろいろな価値を見出していただきたいと思います。
 

――市民や民間事業者はなかなか川に入りづらいと思っているかもしれません。

 これまで、災害が日本列島を跋扈していたので、治水優先という時代がありました。そのために利用があまり進まないところがありました。しかし、現在では、占用許可準則も改正され、みなさんに川に入ってもらいやすい環境をつくっています。かわまちづくり制度も今年改正され、市町村ばかりではなく、民間事業者の発意によって、水辺空間の活用ができるようになります。

――いろいろなことが川を舞台にできそうですね。

 地元の人が面白いと思うことをやってほしいです。そのためには、行政主導でなく、(地元を)受けとめられる行政マンがいることが非常に重要です。こんなこと止めてしまえという上司がいてはいけないのです。鹿児島の川内川では、河川敷地内に温泉が湧いて、地域の人と一緒に足湯をつくったという例もありました。九州では、川を地域のものと思っている人が多く、行政マン、市民も含めて、面白い人が育っていますね。
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――ミズベリングプロジェクトに期待することを教えて下さい。

 さまざまな川の価値をぜひ掘り起こしてほしいです。ミズベリングで、多様な人たちをつなげて、川の価値を発見して、実現していく場をどんどんつくってほしい。また、継続は力なりです。ミズベリング活動は持続的に末永く続けて欲しいです。楽しみながらやることが続けるコツだと思います。

――行政マンと市民へメッセージをお願いします。

 行政マンの方々は、川で遊んでいる人と一緒に、川の中に入って歩いてみましょう。市民の方と同じ目線で川を見れば、いろいろな物事が分かりやすくなってきます。川での体験を、市民と共にひとつにすることが大切だと思います。
 市民の方々は、厭わずに、注文をつけて一緒に川に関わってほしいです。行政の人間は固い、わからずやだという先入観があるかもしれませんが、行政マンも人間なので、川に対する想いも持っているのです。

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金尾健司(かなお けんじ)

京都府出身。1958年生まれ。東京大学大学院工学系(土木)修了。83年4月旧建設省入省。12年水管理・国土保全局河川環境課長、13年同河川計画課長、14年九州地方整備局局長。15年より水管理・国土保全局長。

Writer's Profile
ミズベリング

ミズベリングとは、「水辺+リング」の造語で、
水辺好きの輪を広げていこう!という意味。

四季。界隈。下町。祭り。クリエイティブ…。
あらためて日本のコミュニティの誇りを水辺から見直すことで、
モチベーション、イノベーション、リノベーションの
機運を高めていく運動体になれば、と思います。

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