2016.01.30

離島のコミュニティを形成するミズベ

九州本島から南に約550km、鹿児島県大島郡に属する沖永良部島には、昔からコミュニティ形成の場として活用されてきた水辺があります。

沖永良部島は地表を流れる河川が少なく、水道が整備される前は水資源の確保がとても困難なところでした。一方で地下には多くの雨水が染み込み、「暗川(クラゴー)」と呼ばれる地下河川や「ホー」と呼ばれる湧水が点在しています。昭和36年に簡易水道ができるまで、人々はこの暗川やホーで生活用水や飲み水を確保していました。中でも、住吉暗川は鹿児島県指定天然記念物に指定、ジッキョヌホーは平成の名水百選に選定されています。

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中に仕切りがあり、上流側の綺麗な水は飲料水、下流側の水は洗濯のための水、など用途に合わせて使う場所が変わります。かつてはここで生活用水を得たり洗濯をしたりするのが女性の日課であり、毎日地下から急な坂を上って水を運んでいました。

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人々は水を得るためだけではなく、集落民との交流や情報交換の場としてこの暗川やホーを活用していたそうです。

水道が普及してからは、生活のために毎日水を汲みに行くことはなくなったそうですが、今でも野菜を洗ったり、夏祭りが行われたりと、地域の憩いの場として存在しています。

私がジッキョヌホーを訪れた際も湧水を使って洗濯をしている女性がいました。夏場には子どもたちが水遊びをしているそうです。

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都会に暮らしていると、自然との関わりも少なく、近所付き合いも希薄になりがちです。私はこの沖永良部島でインターンシップをしていたのですが、島の方々はとてもあたたかく、島外から来た私たちをいつも気にかけてくださったことを思い出します。もともとは生きていくための水を得る場所でしたが、周囲60km足らずの小さい島ならではの人と人との密接な関わりはこうした水辺からも生まれていたのでした。

この記事を書いた人

足立 祥子

東京学芸大学教育学部F類環境教育専攻4年吉冨研究室所属 神奈川県出身 趣味は写真撮影・旅行

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