2015.09.26

徳島版ミズベリング「徳島ひょうたん島水都祭2015」

水辺への入り口、その多様性に富む徳島にて短くもアツい夏へと飛び込もう!

こんばんは。水主の糸井です。
9月も終わり秋が徐々に深まる季節です。あの夏の暑さを懐かしむ方も少なくないのではないでしょうか?
海ではビーチパラソルが閉じ秋へと移行していく時季ですが、日本では8月15日というお盆の終わりと共にパタリと夏が終わる地域があります。
そこは、徳島県徳島市。
日本三大盆踊り「阿波おどり」でフィナーレを迎える短くもアツい夏を毎年徳島の方々は堪能しています。

日本三大盆踊りの1つ「阿波おどり」
地元徳島の人たちだけでなく、日本全国から多くの人が参加する日本を代表するアツい祭りにて徳島の夏は終焉を迎える。

さて、そのお盆から1ヶ月ほど夏を巻き戻してみましょう。
徳島各地で「阿波おどりの練習」が完成形に近づく7月中旬に、私は徳島の水辺でアツいアツい夏を謳歌しておりました。

阿波おどり」の練習を徳島の水辺を代表する新町川水際公園にて行う子供達。

目的は、2015年7月10日~12日まで開催した「徳島ひょうたん島水都祭」に参加するためです。
今回は、「ひょうたん島」と評される水路に囲まれた徳島という水辺を、「徳島ひょうたん島水都祭」というイベントを通して皆様にお届けします。

多数の水路に囲まれた徳島。その中心地のひょうたん島を巡る

四国随一の大河「四国三郎」の異名を持つ吉野川。その河口近くの南岸に、今回対象となる水辺徳島が位置しています。

江戸時代初期に作成された「阿波国徳島城之図」を見ると、吉野川河口のデルタ地帯に発達した都市であり、かつ多くの水路に囲まれた島々により形成された都市が徳島の実態であるということがよく判ります。
つまり江戸や大坂に匹敵するほどの水辺の街であり、現在でもその姿は健在なのです。

1644年に幕府が諸藩に命じて作成させた城下町の図
北を1km以上もの川幅を持つ吉野川、東を紀伊水道に囲まれた水辺の都市。
地図中心に位置する徳島城は周辺に流れる河川を天然の要害として利用し、中世から繁栄した南海道を代表する都市である。

その水辺の街徳島の中心地が、今回対象となる「ひょうたん島」と評される島です。
島の中心には陸の玄関口徳島駅。
そして周辺を新町川、助任川、沖洲川が流れ、ちょうど上空から島を見ると瓢箪の形をしているため、ひょうたん島と評されています。

そう、地図で見ると水路が縦横無尽に張り巡らされています。島々から成る都市徳島を理解するには、この興味深い水路群を巡るのが最良の方法です。
早速、地元徳島の水辺で30年近く川の清掃活動を行っている新町川を守る会さんのひょうたん島周遊船に乗船し、ひょうたん島を水路で1周してみましょう。
ひょうたん島1周は約6km。所要時間は30分で、乗船にかかる費用は保険料のみ(高校生以上200円、中学生以下100円)とお手頃な価格で、徳島の水辺を堪能することができます。

「新町川を守る会」によるひょうたん島クルーズ。

実際にひょうたん島を1周してみると判ることは、河岸の利用だけに留まらず、水上の利用も際立っています。
美しい青石護岸に映える新町川や助任川の各河岸では、動力船だけでなくカヤックやSUPなどにも利用しやすい桟橋や階段護岸が整備され、各所で定期的に多様な団体が利用している模様。
そして、桟橋や階段護岸の後背地には公園が整備され、河川敷の利用も盛んに行われています。
まさに、ハード面での障害が極小の状態で河川敷などの緑地から水上までの動線が一帯となり、その各地でいろいろな団体が水辺を利用しています。

新町川河口から徳島を象徴する眉山を背景に県庁前という街中にあるマリーナ「ケンチョピア」(左上)、沖洲川で練習中の徳島市立高等学校ボート部(右上)、徳島の水路をSUPで案内する「ファンライド徳島」が利用する助任川へエントリーできる階段護岸の後背地には徳島城跡と徳島中央公園(左下)、「新町川を守る会」が所有しているひょうたん島クルーズの乗り場、そして後背地には毎月最終週の日曜日にマルシェが開かれる新町川水際公園(右下)など、ここでは一気に紹介できないほど水上へ誘われるポイントが多くある。

徳島ひょうたん島水都祭開幕!~まずは前夜祭で夕涼み~

2015年7月10日(金)~12日(日)に行われる「徳島ひょうたん島水都祭2015」は、徳島の街中を流れる新町川を中心に行われる水辺のイベントで、地元徳島で活躍する多様な水辺の団体が関わっています。
「水辺」というキーワードだけで、多くの趣向のイベントが満載なので、参加者は各々の興味で「徳島の水辺」にアプローチできることが、このイベント最大の魅力です。

まずは、金曜日夕方から行われた前夜祭から参加してみましょう!
前夜祭のメインステージは新町川水際公園です。ちょうどひょうたん島クルーズの桟橋の後背地に当たります。
先程ご紹介したひょうたん島クルーズを終え上陸すると、ちょうど「徳島ひょうたん島水都祭」の前夜祭が始まる時間でした。

金曜日の夕方ということで会社帰りの方たちが今週の疲れを癒すため水辺でビール片手に一杯やろうという最高の時間が幕を開けるところです。
新町川水際公園のボードウォークで賑わいを見せるこの夕方のマルシェは「とくしまマルシェ」という食のイベントで、本来は毎月最終週の日曜日に開催しているとのこと。
地元徳島で採れる農産物や加工品などが販売され、通常の「とくしまマルシェ」では1日あたりの来場者が約1万人と盛況なのです。

サックスフォンの演奏を聴きながら賑わうマルシェ
日中暑い水辺を放浪し喉もカラカラの私にぴったりの「すだちビール」を、少し涼しくなった夕方の水辺で早速いただく。

ほろ酔いで河川敷に目を移すと、新町川夜釣り大会でこちらも盛り上がりを見せております。
申し込み開始後すぐに定員となったという人気の夜釣りイベントは釣った魚の体長で競う大会で、釣竿の貸出も行っているので、玄人でなくても簡単に参加できるイベントです。釣果を覗くと魚種が多様でとても面白く勉強になります。

少し時間が経ち夜がやってくると、新町川の対岸で一際目立つ灯りが目に飛び込んできます。
「キャンドルナイト~光の小路~」が円形劇場のような桟橋を彩り、多くの方がファインダーを通して灯りを切り取っています。

新町川水際公園沿いで夕方から夜釣り大会勃発。吉野川河口の三角州という水域だけあって多様な魚が釣れる(左)
対岸の新町橋東公園という変わった形状の階段桟橋では多くのキャンドルが並び水辺を彩る(右)

このように、新町川という徳島の中心地にて夜版のミズベリングが展開され、そして翌日へとヒートアップしていきます。

徳島ひょうたん島水都祭~アツいアツい徳島の水辺2日間~

前夜祭でのお酒もきちんと抜けてお祭りの朝を迎えました。
さて、これから2日間行われる「徳島ひょうたん島水都祭」のメイン会場は、明治時代にその最盛期を迎えた「阿波藍」の産業、その名残が地名にある藍場浜公園です。
藍場浜公園は、前夜祭が行われていた新町川水際公園と新町橋通りという徳島を代表する通りを挟んで対を成すように新町川の後背地として機能している水際の公園です。


「徳島ひょうたん島水都祭2015」のポスターを見ると、藍場浜公園と新町川どちらも賑わうイベントだということがよく解ります。
その実行委員長を務める「NPO法人 阿波まち活性協議会」の吉良周造さんに開催までの経緯を伺いました。

私が少年期に徳島の天神祭りがなくなって以降水辺でのお祭りの復活を願い、私が所属する阿波まち活性協議会が生まれ徳島ひょうたん島水都祭の開催となりました。今年で3年目ですが、例年までの徳島ひょうたん島水都祭に日中の水上アクティビティを加え、また前夜祭として金曜日夕方から開催することで、昼も夜も楽しいイベントにすることができました。地元だけでなく県外からのお客様も期待しています。
天神祭りのときには盆踊りや屋台と一般的なお祭りでしたが、水都祭はより多くの人が興味を持てるような魅力的なイベントにしていきますよ!

早速吉良さんに紹介された多彩なコンテンツをこれから見て行きましょう。


まず新町川の後背地としての藍場浜公園でのイベント利用に関して見て行きます。

上図の左手のメインステージから、右手へ進むとワークショップエリア、とくしま食楽市エリア、ウォーターパークエリアと続きます。
メインステージでは、2日間に渡り多くのアーティストや歌手がそのパフォーマンスで水辺全体の熱気を高め、とくしま食楽市エリアでは地元徳島の名物料理や県外からの出店もされているので、どれを酒の肴にしようか迷いどころな参加者たち。

ワークショップエリアでは、水を使った研究や水辺の安全に対する啓蒙活動などが盛んに行われ、大人たちも久々に勉強をと張り切り、特に小学生たちにとっては夏休みの自由研究で十分に利用できるものばかり。

ウォーターパークエリアで目立つこの施設では、地元徳島のイベント運営会社によるウォータースライダーが設置され子供たちは挙って水遊び。

徳島ひょうたん島水都祭~水上部門は新町川でLet’sずぶ濡れ!~

さて、盛り上がっているのは藍場浜公園だけではありません。

なにやら水上も賑わいを見せています。
徳島市のイメージアップキャラクター「トクシィ」に案内されると、藍場浜公園目の前に流れる新町川では非常に面白い水上イベントが行われています。
その名も「水上ゴザ走り」。
藍場浜公園前の水上特設ステージでは長さ50mのゴザが水上に浮かび、その50mを駆け抜ければゴールという、まさに子供から大人までもワクワクできる空間が街中の中心地を流れる河川に用意されています。
まずは、徳島ひょうたん島水都祭を後援する徳島市の原市長が走るのを見学すると、残念ながら数mで失速。

むむっ!これは難しい競技なのか、と不安と興奮で逸る気持ちを抑え早速応募を済ませ、このイベントを影で支える「徳島ライフセービングクラブ」のスタッフの皆さんと合流しました。
徳島ライフセービングクラブが担当するのは、落水者の救助という極めて重要な役割です。有難いことにSUP用のボードをお借りできたので、私も出番まで水上スタッフと共に新町川に浮かび水上で写真撮影を試みます。

地元の少年サッカークラブを始め、子供達は長さ50mもの水上に敷かれたゴザを風のように疾走して勇姿に会場は大きな拍手に包まれます。
子供と打って変わって大人たちにこの競技はまさに試練です。体重の重さなどもありますが、特に成人男性は数mで失速し落水です。もちろんきちんとライフジャケットを着用しているので慌てず背浮きで救助を待ちます。街中の河川でライフセービングされるというのも徳島でしか見られない光景です。

着ぐるみを着て参加し落水した成人男性を救助する徳島ライフセービングクラブスタッフ。
新町川の河川敷に腰掛けた観客から盛大な拍手が送られる。
ちなみに体重70kgの筆者も30m以上走った後に失速し落水した。なかなか50mは遠いのだ。

水上を盛り上げているのは藍場浜公園前の水上特設ステージだけではありません。
新町橋東公園を拠点にしたもう1つの水上イベント「ダンボールボートレース」が開催されています。
参加者は事前に各自でダンボールを使用したボートを手作りで用意し、この競技にてその速さを競うのです。
ルールは、スタート&ゴール地点となる新町橋東公園の桟橋から新町川を横断し対岸のブイで折り返して桟橋へと戻る競技。
街中の川を往復するからといって侮っては行けません。
風と潮流の影響、そしてダンボールで作ったボートの耐久性など、街中の水上といえども人智を超えたアウトドアに挑まなくてはなりません。

家族、友人、そして会社での恒例行事となりつつあるダンボールボートレース。
海上保安庁では若手が参戦しレスキュー訓練も(左)
すでに船体のほとんどが水面下にある舟(板?)を漕ぐ男性2人(右)

今回の水上イベントをサポートするのは、先ほどのゴザ走りでも素晴らしいレスキューを見せていた「徳島ライフセービングクラブ」の方々。
桟橋での乗船下船サポートの班と、水上での他船舶往来時の対応や参加者転覆時のレスキュー班とに分かれ水辺の安全を担っているため、参加者たちも楽しく競技に打ち込める訳です。
こうしてアツい対戦を勝ち抜き決勝大会へと駒を進めた参加者たちも無事ゴール!
水上ゴザ走りもダンボールボートレースもそうですが、街中の河川での水上イベントは、一般の方々でも取り組みやすく、かつ多くの方が観戦しやすいような環境に河川敷もなりつつあるので、ぜひ全国各地で街中の水辺イベントに取り入れて、全国大会まで立ち上げるのも面白い試みかもしれません。

古代遺跡エフェソスの円形劇場のような形態の桟橋を持つ新町橋東公園の桟橋に着岸する参加者。
陸上から観戦しやすい桟橋では多くの参加者や観客が激しいボートレースを観戦し水辺空間を堪能している。
水上特設ステージが設置された新町川の賑わい。紹介した他にも「葦舟ワークショップ」にて吉野川河口に植生している葦で作られた葦舟が新町川に浮かび、写真右手奥にはカヤック体験の乗り場がある。

水辺の入り口、その多様性に富むミズベリング都市徳島

このように徳島ひょうたん島水都祭では、水辺というキーワードだけで多種多様なコンテンツがあります。
つまり、初めて水辺に興味を持った方の好奇心に合わせて水辺の入り口が用意されているのです。
この現象を可能にする1つは、水上から後背地までの動線が障害物がなく一体となって使用されているハード面。
そして、もう1つは水辺団体お互いの寛容さです。
30年近く徳島の水辺で活動する「新町川を守る会」が水辺を牽引してきたわけですが、その会長の中村さんにお話を聞いたところ、「いろいろ異なるメンバーが水辺に関わることが大切。同じカラーになってしまうから」と仰っていたことが印象的でした。
つまり水辺の先輩たちの寛容さが、水辺の団体の多様性に一因しているのではないでしょうか。
彼らの活動により年々綺麗になってきた水辺が、多くの一般市民に見られることにより徐々に活動の幅が多くの団体により広がってきたのです。

平成2年からひょうたん島で川ゴミ拾いを続けている新町川を守る会メンバー。
写真中央で白い帽子を被っている方が会長の中村英雄氏。
ミズベリングフレンズでもある新町川を守る会は、七夕イベント「水辺で乾杯」の際150名以上もの参加者で桟橋とその後背地に賑わいを見せた。

こういう多様性が生み出される水質となった徳島の水辺は、その団体が最も適応しやすい場所で活動ができる活動環境が多様であり、クルーズ船やSUPなどの水上利用からマルシェやライブイベントなど河川敷の利用まで水辺一帯でのコンテンツが多様、そして上から目線で同じカラーにならずお互いを許容し尊重して活動する寛容さ、という3つのレベルで徳島の水辺が成り立っているのです。
いろいろなコンテンツで水と向き合い寄り添うこと。これがミズベリング先進都市徳島の姿なのです。
そんな同じ水辺というキーワードに対しそれぞれの姿勢で取り組む人たちと一緒に見る徳島の花火は、なんとも美しいものですね。

水上から見る徳島の花火。
花火観覧する人たちが落水したときに対応するべく、ファンライド徳島の皆さんと一緒にSUPで水上から警戒業務に当たる。束の間の贅沢な時間。

この記事を書いた人

水主(櫓や櫂による舟の漕ぎ手・「かこ」と呼びます)

NPO法人 横浜シーフレンズ理事(日本レクリエーショナルカヌー協会公認校)
帆船日本丸記念財団シーカヤックインストラクター
水辺荘アドバイザー
横浜市カヌー協会理事

糸井 孔帥

東京海洋大学大学院(海洋科学)在学中に、東京や横浜で海や港のフィールドワークをシーカヤックを通して学ぶ間に街中の水辺の魅力に引き込まれ現在に至ります。 大都市の水辺は、多くの旅人が行き交い賑わう場所で、また自然と対峙するアウトドアでもあります。 水辺をよく知ることが、町や歴史や国を知り旅の深みを増す契機となり、 また水辺の経験により自己を顧みる機会となります。 日本各地において水辺の最前線で活動しているプレーヤーの紹介を通して、水辺からの観光、地元の新たな魅力、 水辺のアウトドアスポットに触れる機会を作っていきたいです。 シーカヤックインストラクター(日本レクリエーショナルカヌー協会シーシニア)、一級小型船舶操縦士、自然体験活動指導者(NEALリーダー)。趣味は、シーカヤック・SUP(スタンドアップパドルボード)スキンダイビング・シュノーケリング・水中ホッケー・カヌーポロ・ドラゴンボート、そして島巡り旅。

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