2014.11.20 Thu

船なのか、建物なのか?!
ミズベに浮かぶラウンジの誕生物語。

船なのか、建物なのか?!<br>ミズベに浮かぶラウンジの誕生物語。

東京で唯一無二のミズベ・スポット、“水上に浮かぶラウンジ”は、なぜ実現できたのか?!

ティー・ワイ・エクスプレス株式会社
寺田 心平 代表取締役社長 インタビュー

船なのか、建物なのか?!
ミズベに浮かぶラウンジの誕生物語。

そのミズベ・スポットは、船であり、建築物でもある。

週末はもちろん、平日でも大勢の入客で賑わう大人気ミズベ・エリアが、東京湾・天王洲にあります。そこは、ミズベ飲食店の集合体。運河沿いにある倉庫をリノベーションし、ビール工場を併設したレストラン「T.Y.HARBOR」。朝から夜まで香ばしい匂いがたちこめるベーカリー「breadworks」。そして、東京でたったひとつのミズベ・スポット、“水上に浮かぶラウンジ”を実現させた「WATERLINE」。レストラン機能をもつクルーズ船や遊覧船は今までもありましたが、地上と常時つながり、桟橋を通ってアクセスする水上ラウンジは、東京でただひとつ「WATERLINE」だけ。これまでに類のないこの水上ラウンジが実現するに至るドラマと、ミズベに対する思いをお聞きしました。

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今までになかったミズベ・スポット実現へ向けて

ミズベリング
「WATERLINE」の実現までにはさまざまな障壁があったとお聞きしています。
寺田社長
そうですね、「WATERLINE」は桟橋を通って店舗に入るのですが、そういった店舗の形態というのは、これまでに前例のないものでした。「船なのか?建物なのか?」水面に浮かんでいるものは船舶として扱われます。ただし、3か月以上同じ場所に停泊しているものについては、土地に定着しているとして建築物と扱われる。よって、「WATERLINE」はどちらの扱いにもなる構造物として認定されました。つまり、船と建築物どちらの基準も満たさなければならない。それがこのプロジェクトを難しくした最大のポイントでした。

「WATERLINE」へは「T.Y.HARBOR」から続く動線が敷かれている

船と建物とでは、設計の考え方が全く異なります。たとえば有事の際の避難設計を例にとってみましょう。船の場合はまず沈むことが最も大きな問題ですので、「人を船の上に逃がすような動線設計」という考え方。これが建築の場合ですと、「建物の外に人を逃がすような導線設計」という考え方です。消火器にしても備えなければならないものが違う種類のものだったり。二重に法律がかかるゆえに難しくなることが、本当にたくさんありました。建築の基礎にあたる台船と上屋にあたる客船を分割し、船舶と建築それぞれに求められる基準を満たすなど、法解釈から緻密な工夫を凝らしました。

水際のテラスが人気の「T.Y.HARBOR」は東京の水辺を代表するレストラン。天王洲の運河沿いにある古い倉庫をリノベーションして1997年にオープン、天井の高い店内や水辺に拡がる気持ちのよいテラスは都心にいることを忘れさせてくれる別世界。東京23区で唯一の独立系マイクロブルワリー(地ビール工場)でもあり、作りたてのビールやモダンアメリカン料理を気軽に楽しめる。

粉からこだわり、職人が心をこめてパンを焼きあげる「breadworks」では、食パンやクロワッサンなどの定番商品から自社製ビール酵母を使ったビアブレッドなど豊富なラインナップが揃う。

東京都の「運河ルネサンス計画」による第1号プロジェクトとして2006年に誕生した水上ラウンジ。船で来店するための桟橋もある「WATERLINE」は水に浮かぶ特別な部屋をイメージして作られ、テラスには気持ちのよい風が吹き抜ける。深夜まで営業するラウンジとしてだけでなく、ウエディングや企業のパーティーなど幅広い使い方に対応する、東京にたった1つの空間だ。

行政と民間の一致団結、「運河ルネサンス」の下に

ミズベリング
「WATERLINE」実現に向けて、最大のブレイク・スルーとなったポイントはなんだったのでしょうか?
寺田社長
「WATERLINE」の企画提案が、東京都が進める「運河ルネサンス構想」の第1号として採択されたことです。「運河ルネサンス」は水辺を観光資源として活性化するために東京都が2004年に立ち上げた政策。1980年代後半の再開発構想によりモノレールが新設され、昨今ではデザイン事務所やSOHO型のアトリエやオフィスが並ぶウォーターフロントとして注目されるようになった天王洲にスポットが当たり、「WATERLINE」はその指定エリアに入る観光に資する施設として認められました。
それまでは「建物は品川区、船は国交省の管轄である」など、申請ひとつにしても各所と斥候する必要がありましたが、「運河ルネサンス」の規制緩和という枠組みを用いたことの意味はかなり大きかったと思います。また、地域の協議会も設立され、プロジェクトの進行がかなりスムーズになりました。まさに、行政と民間が一致団結したからこそ実現できたプロジェクトなのではないでしょうか。

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水の都・東京が本来もつ、美しい一面をもっと発信するために

ミズベリング
前例のない「WATERLINE」の実現に向けて、困難を乗り越えられたモチベーションはなんですか?
寺田社長
「T.Y.HARBOR」をはじめとするこのエリアを見たお客さまから、よく「東京じゃないみたい、外国のようで素敵」というお声をいただきます。しかし、これこそが水の都・東京が本来もっている、美しい一面なんです。今や東京は銀座、原宿などどこも埋め立てられてしまっていますが、このエリアはそうした美しい景観を残したままの貴重なエリア。そんな数少ないこのエリアだからこそ、東京のミズベの楽しさや美しさを、できるだけ多くの方々に知っていただくきっかけを発信していきたいですよね。
「T.Y.HARBOR」ではさまざまなクルーズ企画を展開してきた実績があります。お花見の時期にはお弁当やその時期限定の「桜エール」というビールを味わいながら、桜を眺め目黒川をさかのぼるクルーズ。また、季節に関わりなくビールを楽しんでいただきながらミズベの気持ちよさを味わっていただくビアクルーズなど。
東京は、まだまだミズベの楽しみを堪能できるはずです。たとえば銀座や原宿にふたたびミズベが復活して水運で物流するようなこともおもしろいですし(笑)、もっと街はミズベに向かって開発されていってもいい。弊社としては、今後こういったクルーズビジネスにもっと力を入れて行き、ごく限られた方々だけのものと思われている水上の楽しみを、もっともっと気軽に体験していただけるような仕組みをつくりたいですね。ミズベでのライフスタイルを提案していく、そんな取り組みを深めて行きたいです。

18心地よく落ち着いた空気と水の音に囲まれる、夜景に浮かぶ「T.Y.HARBOR」の姿も美しい

●プロフィール

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ティー・ワイ・エクスプレス株式会社
代表取締役社長
寺田 心平

1972年東京生まれ。慶應義塾大学総合政策学部を卒業後、アメリカのカリフォルニア大学サンディエゴ校大学院にてアジア太平洋地域における国際ビジネスを学ぶ。途中1年間休学して北京に留学し中国語を身につけると、卒業後は台湾に渡り現地財閥企業の百貨店部門で新店の企画業務に携わる。99年に「ティー・ワイ・ハーバー」の経営を建て直すため帰国、デイビッド・キドーや数ヶ月後に経営に加わった田島正人らとともに3年で同店を黒字化させ、03年に「シカダ(12年表参道へ移転)」、06年には「ウォーターライン」「ビーコン」の2店舗をオープン、10年にはベーカリーカフェ「ブレッドワークス」を開業、ケータリング部門も開始し現在11店舗を運営する。英語・中国語に通じた国際派。

●関連リンク

ティー・ワイ・エクスプレス株式会社
T.Y.HARBOR
WATERLINE
breadworks

Writer's Profile
ミズベリング

ミズベリングとは、「水辺+リング」の造語で、
水辺好きの輪を広げていこう!という意味。

四季。界隈。下町。祭り。クリエイティブ…。
あらためて日本のコミュニティの誇りを水辺から見直すことで、
モチベーション、イノベーション、リノベーションの
機運を高めていく運動体になれば、と思います。

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