2014.08.23

信濃大町で行われているアートイベント
信濃大町2014 食とアートの回廊に行ってきた

水と深い関わりのある地域と現代アートの融合はどんな感じ?8月24日まで

信濃大町は、南北に高瀬川が通り、東西の山脈の間の盆地にある。鎌倉時代後期には南北を貫く水路が幾筋もつくられ、安曇野の豊かな水によって古くからうるおっていた町である。道を走るとそこかしこに「わさび」や「岩魚養殖、ニジマス」などの看板があり、いまなお水と豊かな水によって生活が支えられていることが伺い知れる。そんな山間のまちでアートイベントが行われているということで行ってみた。

信濃大町2014 食とアートの回廊のパンフレット

滝の家 谷山恭子

左:家の中を水路が貫く。その水路から水をとって滝をつくっている。/右:滝壺

使われなくなった建物のなかに、滝を作ってしまったという作品。ここ信濃大町には、建物の中を水路がつらぬいている家がいくつかある。作家はこの水路の水をつかって建物のなかに滝をつくった。畳の間のなかにあるのは、まさに“滝壺”だ。

左:この水路が建物を貫く。向こうに見える木造の建物に作品は作られている/右:大正11年まで飲用で使われていたという。水路の街

かつて、生活を便利にした水路は、生活排水によって一時汚くなってしまった。この空き家でもこの水路のすぐ上にお風呂がつくられ、水路の存在は薄くなってしまった。現在は下水道の整備率もあがり、だいぶキレイになってきたが、今度は家自体が空き家となってしまった。そんな場所にこの作品はある。
人間の生活に欠かすことの出来ない水。現在でも、水路は「水道」になり、同じように生活に必要な存在であるが、ひねれば出てくるという便利さゆえ、この住宅を貫く水路のようには意識することはない。この作品は、だれの家にもある「水道」という水の道についてあらためて考えさせられる。

他にも、水に関係する作品がいくつも展示されている。作品そのものの価値もそうだが、作品をとりまく環境や場所の意味について考えさせられる作品ばかり。今週末(8/24)まで。

商店街の中に布を張った作品。

かつて開拓された田んぼに水を供給した施設を再整備したわっぱらんど。低すぎる水温を太陽熱で上昇させるための施設だ。

その施設のなかに作品はある。なかに入れます。
作品にたどり着くための森の中の順路が素敵すぎる。

信濃大町 食とアートの廻廊

会期
2014年8月9日(土)〜8月24日(日)
会場
長野県大町市全域

北アルプスの山なみに抱かれた信濃大町の地勢を「廻廊」にみたて
土地固有の生活文化を表現する「食」と、地域の魅力を再発見する「アート」の力を活用し
あふれる源流に育まれた、自然と文化を体感するプロジェクトを開始します。

http://omachi-food-art-corridor.jp/

この記事を書いた人

ミズベリングプロジェクトディレクター/(株)水辺総研代表取締役/舟運活性化コンソーシアムTOKYO2021事務局長/水辺荘共同発起人/建築設計事務所RaasDESIGN主宰

岩本 唯史

建築家。一級建築士。ミズベリングプロジェクトのディレクターを務めるほか、全国の水辺の魅力を創出する活動を行い、和歌山市、墨田区、鉄道事業者の開発案件の水辺、エリアマネジメント組織などの水辺利活用のコンサルテーションなどを行う。横浜の水辺を使いこなすための会員組織、「水辺荘」の共同設立者。東京建築士会これからの建築士賞受賞(2017)、まちなか広場賞奨励賞(2017)グッドデザイン賞金賞(ミズベリング、2018)

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